朝日小学生新聞
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■第1回「中学受験のメリットとデメリット」■

中学受験のメリットについて語り始めると長くなるので、どこか憧れの中高一貫校をイメージしてみてください。安定した環境のなかで6年間充実した教育を受け、青春を謳歌し、しかも大学進学にも有利。もう「いいことづくめ」ですよね。それが「中学受験のメリット」といわれているものです。

他方「デメリット」として考えられるのは、①遊びたい盛りの小学生に夜遅くまで塾通いをさせ、②親は教育費負担と塾の送迎や弁当作りに忙殺され、③やがて親子ともにストレスがたまって家庭の団欒が修羅場と化す可能性もあり、④それでも希望する学校に進学できる保証は何もない、等々。デメリットというより「リスク」といったほうが適切かも知れません。

これらのリスクを解消する方法はありません。というより「リスク」を伴わない教育なんて存在しないのです(もし中学受験をしなければ、高校受験というリスクが発生します)。では「リスク」を軽減することは可能なのでしょうか?

リスクが増大するのは、「志望校合格」こそが「メリット」(リターン)だと考えるからです。

いっそのこと「中学受験が目的で、塾通いが手段」ではなく、「塾通いが目的で、志望校合格はひとつの縁」と、発想を転換してみませんか。いいかえれば、「志望校合格という結果」と「志望校合格までの道のり」、つまり成功や失敗、友だちや教師との出会い、親子の協力や修羅場(笑)などのさまざまな経験のどちらが本当に大切な「リターン」なのかということです。後者こそが本当の「中学受験のメリット」だと考えれば、①~④のリスクは減少するだけでなく、やがて時とともに「人生の貴重な経験」や「親子の大切な思い出」へと変わっていく可能性もあります(教育費支出だけは戻ってきませんが)。

もし我が子が「野球チームに入りたい」と言いだしたとき、「甲子園からプロ野球へ」を「リターン」と考えますか?  数年後の受験や十年後のドラフト会議の結果ではなく、塾通いや練習から疲れて帰って来た我が子の笑顔のなかに、充実した時間と成長の足跡(=リターン)を見いだす気持ちをもつことが、「ローリスク・ハイリターン」を可能にする最良の手段なのではないでしょうか。

■ 次回は「中学受験に向くタイプ、向かないタイプ」についてお話しします。


【プロフィール】
後藤卓也先生
後藤卓也(ごとう・たくや)
オリジナルテキストを使い、専任講師だけが教壇に立つことで知られる首都圏の難関中学受験名門「啓明舎」(さなるグループ)塾長。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。著書『秘伝の算数』、『新しい教養のための理科』などは中学受験生のバイブルとなっている。
啓明舎の公式サイト www.keimeisha.jp/index.html


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