学校では教えてくれない「選挙のしくみ」

 

 

 

自民大勝 与党で過半数

 

衆参の「ねじれ国会」解消

 

  安倍晋三政権に国民がつけた通知表は二重丸――。21日に投票と開票が行われた参議院議員選挙で、自民党が大勝しました。連立政権を組んでいる公明党と合わせると全議席の過半数を占め、衆議院と参議院で多数派が異なる「ねじれ国会」の状態が3年ぶりに解消されました。野党では、去年の衆院選に続いて民主党が大きく負けた一方、共産党などが議席を伸ばしました。

 

 

自民党本部の開票センターで当選者の名前に笑顔で花をつける安倍晋三首相=21日、東京・永田町で©朝日新聞社

 

 

きびしい表情で会見する民主党の海江田万里代表=21日、東京・永田町で©朝日新聞社

 

「アベノミクス」の成果アピール

民主は大敗

 

 今回の選挙戦で自民党がアピールしたのは、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の成果です。選挙結果を受けて安倍首相は「決める政治、安定した政治で経済政策を前に進めていけという大きな声をいただいた。責任を持って政治を前に進めたい」と話しました。


 参議院の半数が改選された今回の選挙は、選挙区73と比例区48の計121議席をめぐり争われました。自民党は65議席を獲得。今回改選されなかった分とあわせると115議席で、単独での過半数には届きませんでしたが「ねじれ国会」は解消されました。これで国会運営がやりやすくなり、憲法改正など安倍首相の主張をおし進める環境が整いました。


 一方、選挙前に最大勢力だった民主党は大きく負けました。44議席から17議席に減らし、過去最低の26議席を下回りました。海江田万里代表は今後も代表を続けるとみられますが、選挙戦を指揮した細野豪志幹事長は辞任する考えです。


 野党で躍進したのは共産党です。選挙前の目標を上回る8議席を獲得。アベノミクスや原子力発電(原発)などの政策で自民党と対決する姿勢を打ち出し、主に都市部で支持を集めました。「第三極」と呼ばれるみんなの党や日本維新の会は去年の衆院選と比べて伸び悩んだものの、それぞれ議席を伸ばしました。

 

投票率52.61% 戦後3番目の低さ

 

 今回の参院選選挙区の投票率は、52・61%。前回の2010年参院選を5・31%下回り、戦後3番目の低さでした。沖縄県以外の46選挙区すべてで、前回より投票率が下がりました。


 高かったのは島根県の60・89%、山形県の60・76%、鳥取県の58・88%。低かったのは青森県の46・25%、岡山県の48・88%、千葉県の49・22%でした。


 期日前投票をした人は1294万9982人で、有権者全体の12・36%でした。

 


 

安倍首相に評価も課題山積み

 

 

朝日新聞論説委員・小村田義之さんの話

 

 国会の「ねじれ状態」が解消されたことで、安倍政権は安定した政治の土台を築くことができました。最近はほぼ1年ごとに首相が交代する不安定な状態が続いてきましたが、当面は安倍首相が日本の政治を引っ張ることになりそうです。


 最大の課題は経済の再生です。今回の選挙で「アベノミクス」が有権者から認められる形になりました。長い間、景気が上向かず将来の見通しが暗かった有権者に、希望を与えた面はあったのでしょう。アベノミクスの三本の矢は@世の中に出回るお金を増やす「金融緩和」A公共事業を増やす「財政出動」B規制をゆるめるなどして経済を発展させる「成長戦略」。このうち、特に成長戦略が実行できるかが問われます。


 同時に国の借金を減らしていく財政再建の道すじをえがくことができるかも重要なテーマとなります。首相はこの秋、来年4月に消費税を8%に引き上げるかどうかの最終判断をしなければなりません。景気を冷えこませるおそれもあるため、先送りを求める声も出ており、首相の決断が注目されています。

 

原発・改憲・TPP

 

 国会は自民党の「1強体制」に入りました。安倍政権は原発の再稼働や輸出など原発推進を加速させる姿勢です。


 また憲法改正をめざす安倍首相はまず、この秋に改憲の手続きを定める国民投票法の見直しに着手する考えです。しかし一気に改正するのではなく、連立のパートナーである公明党や野党とも話をしながら前に進めることになるでしょう。


 ほかにも日本が交渉に加わる環太平洋経済連携協定(TPP)の行方、社会保障の充実、中国や韓国などとの関係改善、日本の防衛のあり方など重要な課題は山積みです。


 野党はどう対抗するのか。巨大与党の動きを厳しくチェックすることが求められます。このままの政党の枠組みではなく、野党を再編する動きもあるかもしれません。


 投票率が低かったのは、与党の圧勝が確実視されて、盛り上がりに欠けたためでしょう。安倍首相が国民の意見に耳をかたむけながら政策を進めていくのか、見守る必要があります。

 

イラスト・すぎうらあきら

 

 

2013年7月23日付

実際の紙面ではすべての漢字に読みがながついています。

その他の記事↓

◆小学生向け 「4日公示 21日投開票 安倍政権に国民の審判」(2013年7月4日)

◆小学生向け 「選挙なるほど!ランド(PDF)」(2013年7月4日)

◆小学生向け 「選挙のことば」(2013年7月5日〜7月10日)

◆中学生向け 「ネット選挙解禁」(2013年6月30日)

◆中学生向け 「政治の仕組みきっとわかるスペシャル(PDF)」(2013年6月30日)

 

 

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