ネット選挙解禁 |
候補者の訴え 広く発信
インターネットを使って選挙運動をする「ネット選挙」が7月4日公示、21日投開票の参議院議員選挙から始まります。候補者や有権者がやっていいこと、いけないことをまとめました。初めてのネット選挙に備える現場の動きも紹介します。
イラスト・ふじわらのりこ |
未成年は運動禁止/「うそ」流すと処罰
公選法改正で参院選から開始
選挙運動は、公示日から投票の前日までの選挙期間中に、候補者の当選を目指してポスターを貼ったり政策の演説をしたりすることです。
これまで公職選挙法(公選法)では、候補者が選挙期間中にホームページやブログを更新したり、フェイスブックやツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に情報を書き込んだりすることを禁止していました。4月に公選法が改正され、これらのネット活用が可能になりました=表参照。演説の動画を配信することもできます。ネットで投票ができるわけではありません。
ネットでの選挙運動が禁止されていたのは、選挙運動中に使用できるビラやポスターなどの種類と枚数が公選法で決められているためです。1950年に制定されたこの法律には、お金のある人が大量に印刷物などを配布して名を広め、お金のない人と格差が生まれることを防ぐ目的がありました。インターネットが広がり始めた96年、自治省(現在の総務省)が「ホームページやメールは禁止されている文書に当たる」という考えを示し、選挙運動にネットが使用できなくなりました。
しかし、インターネットが普及し、政治家もネットを通じて政策を発信する人が増えました。2010年に与野党がネット選挙解禁のための公選法改正に合意しましたが、政局の混乱で事実上の廃案に。昨年12月に安倍晋三首相が「7月の参議院選までに解禁を目指す」と発言して、法改正の動きが活発化しました。
米国や韓国などではすでに実施されています。
解禁されたとはいえ、何をしてもいいわけではありません。候補者になりすましてうその情報を発信したり、誹謗・中傷したりすることなどは、処罰の対象になります。
未成年者は公選法で選挙運動をすることが禁止されているため、ネット選挙もできません。総務省は「候補者のメッセージはリツイートしない」など、未成年者向けに注意を呼び掛けています。
ネット選挙の現場
利用者とコミュニケーション
自民党本部に設置されたネット選挙対策の拠点。ネット上の意見を分析して選挙戦略に役立てるほか、中傷などを監視します=東京・永田町で©朝日新聞社 |
来る参院選に向け、ネット選挙はすでに水面下で動き出しています。
「選挙に重きを置く議員は、ネットへの関心が少し前までとても低かった。今では『苦手だからやりません』と言えない状況になっています」
こう話すのはネット事業を営むジェイコス(東京都千代田区)社長の高畑卓さんです。2009年からウェブサイト制作などで議員のネット利用に携わり、政党に偏りなく、約40人の国会議員を手伝っています。
依頼があると「ネットを使って何を、どんなペースで行いたいか」という候補者の考えを確認。それに沿って、それぞれに合う利用法を提案します。
ツイッターにフェイスブック、ユーチューブなど、候補者が使うサービスは似たり寄ったり。そこで差をつけるためにこだわるのが使い方です。
例えばSNSの場合、政治に関する堅い投稿は2割ほどに制限。「残り6割は写真ネタなど気軽に拡散できる話題、ほか2割は家族のことなど人となりが伝わる内容に」とアドバイスします。有権者に嫌がられずメッセージを届けるねらいです。
「一方的な情報発信ではなく、利用者とコミュニケーションをとるのが大切」と高畑さん。ネット利用に慣れない候補者も、1カ月もすると自らコツコツと、つぶやく話題を探し始めるそうです。
公示後は、演説などで候補者がSNSを活用する暇がなくなると予想されます。それに備え、関東のある選挙区の立候補予定者の陣営では、「街で候補者を見かけたら、どんどんSNSに書き込んで」とネット上で呼びかけようと考えています。
また、ネットの利用者が増える夜に動画サイトで生番組を流したり、サイトで選挙運動中の食事風景など軽い話題を紹介したりする予定です。
2013年6月30日付
その他の記事↓
◆小学生向け 「4日公示 21日投開票 安倍政権に国民の審判」(2013年7月4日)
◆小学生向け 「選挙なるほど!ランド(PDF)」(2013年7月4日)
◆小学生向け 「選挙のことば」(2013年7月5日〜7月10日)
◆中学生向け 「政治の仕組みきっとわかるスペシャル(PDF)」(2013年6月30日)
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