朝日中高生新聞
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作文・小論文上達のコツ

2020年11月29日付

人生を豊かにする、書く力

  作文・小論文が苦手という人はいませんか? 朝日中高生新聞の連載コーナー「天声人語で200字作文」で出題と解説をするとう先生(東京・共立女子第二中学校高等学校国語科教諭)に、アドバイスをもらいました。意見を文章にする力は、人生を豊かにし、何かがあった際には自分を守る力にもなるといいます。
イラスト・ふじわらのりこ

最短字数でまとめる練習をしよう

 連載をまとめた『200字から始める 作文・小論文 上達ワーク』(朝日新聞出版)が、このほど出版されました。これまでの連載の中から選んだ37の課題が載っています。「被選挙権も18歳に引き下げるべき?」など社会的な課題から、「いつか実現したい憧れの旅は?」といった楽しいものまで、さまざまです。
 作文を200字としたのは、これが意見を伝える文章として最短の長さだからと伊藤先生はいいます。「小論文が感想文と違う点は、そう思った理由、つまり『ろんきょ』があることです。意見に論拠が組み合わさることで、説得力がある文章になります」
 200字でまとめることができれば、大学入試などで出題される400~1200字の課題にも対応できるようになっていきます。「書いてみたいと思った課題からで構いません。まずは気楽に取り組んでください。200字書くことができた、200字では伝えきれなかった!という体験をしてほしいのです」

同年代の文章に発見がいっぱい
 課題にとりかかるときは、まずメモを作ること。すばやく、わかりやすく書くためです。最初に「結論」となる自分の意見を決めます。次に論拠を挙げ、最後に論拠を書く「順番や長さ」を決めて、書き出します。「ゴールを決めれば、道筋を決めることができ、早く書き上げることができます」
 意見を決める部分で迷う人も多いようです。「大切なのは、論拠の内容と質です。意見が同じでも、そこで個性が出ます」と伊藤先生はいいます。では、論拠の質を上げるには? 「一般の人が書いた文章で、理由や論拠が入ったものをたくさん読むこと」をすすめます。
 ワークには、例として実際に中高生が書いた作文が各課題2人分、載っています。伊藤先生は学校での指導の経験から、先生の添削を読むより、同じ年代の「仲間」が書いた文章を読むことが、刺激となり、生徒を成長させると感じてきました。「『こんなふうに書いてもいいんだ!』といった学びがあると思います。ほかにも一般の新聞の意見投書欄などもおすすめです」

自分を知り守る力に
 文章を書く力をつけることは、受験の小論文や記述式問題の対策だけではなく、人生を豊かにし、自分を守る力になると伊藤先生は考えます。
 作文で考えを表現していくうちに、自分の興味・関心が明らかになったり、知らなかった自分自身と出会ったりできます。これから先、困ったことや理不尽なことに遭遇する場合もあるでしょう。そのとき、自分の意見をもち、人に意見を伝えることで、より良い世の中に変えていけるかもしれません。
 「どんな人にも、自分の意見を伝える権利があります。つまらない意見だなんて思わず、思いを文章にしてみてください。それが、世界でたった一人の自分を大事にすることにつながります。せっかく書くならば、伝わるように書けるようになってほしい、という思いで指導しています」と伊藤先生は話します。


『200字から始める 作文・小論文 上達ワーク』(伊藤久仁子、朝日中高生新聞著、税込み1760円、発行=朝日学生新聞社、発売=朝日新聞出版)

イラスト・ふじわらのりこ

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