朝日中高生新聞
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2030 SDGsで考える

2020年8月23日付

ホッキョクグマ 80年後には絶滅か

 地球温暖化で野生動物が大きな影響を受けています。ホッキョクグマは、2100年までにほぼ絶滅するという予測が発表されました。国連の掲げるSDGsエスディージーズ(持続可能な開発目標)では「13.気候変動に具体的な対策を」にかかわるテーマです。温暖化を引き起こした私たち自身の手で、気温の上昇は止められるのでしょうか。(猪野元健)

「13.気候変動に具体的な対策を」のロゴ

地球温暖化で生息地の海氷減る

 海氷が浮かぶ極寒の地・北極圏で、ホッキョクグマは海氷を使ってアザラシ狩りや繁殖をして暮らしています。北極圏の生態系の頂点に立つホッキョクグマにとって、動物で最大の「敵」は人間です。
 国際自然保護連合(IUCN)は絶滅種に指定しています。生息数は推定2万2000~3万1000頭。2050年までに約30%減少する予測を出しています。ほとんどの地域のホッキョクグマは2100年まで生き残るのが難しいとする論文も今年7月、英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジに掲載されました。
 ホッキョクグマは海氷の上で狩りをして脂肪を蓄え、氷が安定しない夏の数カ月は食料が少ない陸上で過ごします。ところが温暖化で海氷が薄くなり、面積が小さくなると、生息地が失われ、狩りができない陸上での「断食」期間が長くなります。健康状態が悪化し、生存率が低下するといいます。
 今世紀末の地球の平均気温は、厳しいケースで4度ほど高くなると予測されています。北極圏の気温は平均の2倍のスピードで上昇しており、今世紀半ばには北極海の海氷がなくなる時期が出てくるとも指摘されています。
 北極圏が温暖化の影響を受けやすい理由について、国立環境研究所のもりせいさんは「気温の上昇で日射をはね返す氷が減り、その分だけ海面が現れます。海水が暖まり、また氷がとけやすくなる悪循環が起きてしまう」と説明します。

人間の行動次第

 ホッキョクグマは温暖化で行き場を失いつつありますが、過去には絶滅の危機を乗り越えたことがありました。WWF(世界自然保護基金)ジャパンによると、1960年代に絶滅の可能性が指摘され、82年に絶滅の恐れがある野生動物をまとめたIUCNのレッドデータブックに掲載されましたが、96年を最後にしばらくの間、リストから消えました。この時の減少原因は狩猟や開発でしたが、国を越えて協力し、保護に乗り出したことが功を奏したのです。
 WWFジャパン広報担当のあらひでさんは「ホッキョクグマを守れるかは、人間がどう行動するかにかかっています。温暖化の影響を小さくすることはできます。温暖化が進んでホッキョクグマが生きづらい地球は、私たちにも厳しい環境ですが、希望をもって中高生のみなさんにも、できることを実行してほしい」と話します。
 江守さんは「温暖化の対策は、仕組みそのものを変えていく必要がある」と言います。「家庭のエネルギーがどのようにつくられているのか、企業や政治家がどんな対策をしていくのかを調べ、応援していく方法もあります」

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