朝日中高生新聞
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24時間営業の見直し、どう思う?

2020年3月1日付

 コンビニやファミリーレストランなどで、24時間営業を見直す動きが広がっています。人手不足や「働き方改革」などが背景にあります。いつでも開いていて便利な24時間営業のお店。みなさんは、どう考えますか?(佐藤美咲)

コンビニ業界 現場から変わり始めた

 2月6日、経済産業省が専門家を集め、新たなコンビニのあり方について話し合いました。加盟店の店主や利用客へのアンケートなどをもとに、報告書をまとめました。「一律に24時間営業」ではなく、それぞれのお店の実情をふまえ、柔軟な対応を求めています。
 コンビニの24時間営業の見直しが注目されたきっかけは昨年2月、大阪府東大阪市のセブン―イレブンの店主が本部の反対を押し切り、深夜営業をやめたこと。人手不足による長時間労働などが理由です。この対立が表面化してから1年、コンビニ各社は24時間営業の見直しを進めています。
 セブン―イレブン・ジャパンは昨年3月、営業時間を短くする実験を開始。同11月から深夜の休業を正式に認め、現在約130店が深夜休業しています。ファミリーマートは今年6月から、原則として加盟店が営業時間を選べる制度を導入します。当初から時短契約を導入していたローソンでも、時短営業をする店が昨年3月から約140店増えました。
 武蔵大学経済学部のつちなお教授は、時短営業の影響はコンビニだけにとどまらないとみています。「コンビニで売る商品を作る食品工場や、商品を運ぶ物流会社などの働き方改革にもつながるといえるでしょう」
 コンビニ業界に先駆けて、ファミリーレストラン各社は24時間営業を取りやめてきました。2011年にはサイゼリヤ、17年にはロイヤルホストが全店で24時間営業を廃止。「ガスト」「ジョナサン」などを運営するファミリーレストランの最大手「すかいらーくホールディングス」は1月20日、1972年から始めた24時間営業について、4月までに全店でやめると発表しました。

 いきなり全てが24時間営業をやめると、夜勤などの方々の中には困る人も出てくると思う。(大阪・高3)

 いざというときに開いていなかったら困るため、賛成はしがたい。ただ、従業員も夜中にずっと立って接客するのは大変だ。(東京・中2)

 人件費の削減にもなるし、深夜の労働の負担も減るのはわかるが、利用する立場としては便利だからとりやめないでほしいという思いが強い。(神奈川・高1)

 早朝や深夜の労働は大変だから、見直しの動きはいいと思う。(神奈川・高1)

 その地域やニーズに合わせて営業時間を調整すればよいと思う。(兵庫・高1)

 24時間営業は一つの町に1店舗にするなど、需要に見合った営業をするべきだ。(兵庫・中2)

 労働者の健康面から考えるとよいと思うが、一部の利用者の買い物に支障が出てしまうことがねんされる。(神奈川・高2)

秋葉原の街の写真
街を歩くと、24時間営業の看板が目に入ります=2月25日、東京・秋葉原

ロイヤルホストの外観の写真
ファミリーレストランのロイヤルホストは、お正月など一斉に休業する日を2018年から導入しています
(C)朝日新聞社

消費も働き方も変化

大量よりいいもの/長時間より効率よく

 24時間営業の見直しが広がっていることについて、早稲田大学ビジネススクールのおさないあつし教授は「消費や働き方が、量から質に変化した」と分析します。
 1970年代ごろの経済成長期から90年代前半のバブル崩壊までは「たくさん物を買う」「会社のために長く働く」ことがよいという風潮がありました。しかし、ここ20年ほどで、「いいと思ったものを買う」など、自分の好きなものとしっかり向き合う人が増えているといいます。
 「仕事でも、長時間働くのではなく、効率よく働くことに重きが置かれるように。長く営業することが価値がある、というわけではなくなってきていると思う」

サービス拡大の一方で負担増

 日本にコンビニが登場したのは1970年前後。74年にセブン―イレブンが東京・とよで国内第1号店をオープンしました。当初は店名通り、午前7時から午後11時までの営業でした。翌75年に福島県こおりやま市の店舗で24時間営業を開始。「いつでも開いている」という便利さが評判となり、他社も含めた全国のお店で24時間営業が広まりました。
 今では宅配便も取り扱い、複合機やATM(現金自動出入機)を設置。住民票の写しを出すなど行政サービスを担う場合もあります。警察と連携した防犯拠点にもなるなど、社会的な機能も果たしています。
 提供するサービスが増える一方、店主は労働人口の減少による深刻な人手不足に悩まされてきました。経済産業省の2018年度の調査では、コンビニ加盟店の61%が「従業員が足りない」と答えています。
 加盟店は、売れ行きに応じて本部にお金を支払い、その残りで経費をまかないます。アルバイトの人件費や期限が切れた食品の廃棄費用などは、加盟店が大半を負担します。
 「セブン―イレブンの場合、1店舗あたり年間500万~600万円の廃棄コストがかかっているのでは」と武蔵大学経済学部のつちなお教授。「コンビニを利用するとき、その便利さを誰が作り出しているのか、中高生のみなさんにも考えてほしい」と話します。

企業は人手に頼らない努力を

 24時間営業をやめるお店は、今後も増えていくのでしょうか。
 土屋教授は「経費が減り、利益が上がる加盟店は少なくない」としつつも、実際に移行するコンビニはそれほど増えないのではと推測します。
 時短営業にする場合、これまで深夜にしていた商品の陳列や清掃作業などを他の時間帯に回すなど、仕事の仕方を大きく見直すことが店主に求められます。「24時間営業をする他店との競争で、売り上げが落ちる恐れもあるでしょう」と土屋教授。
 長内教授は「労働人口は確実に減っていくため、企業も今までと同じ人手はかけられない」と指摘します。
 「無人レジの導入など、今までのやり方を変え、人手不足を解消する努力が企業には求められると思います」

セブン―イレブン本木店のスタッフたちの写真
時短営業の実験が行われたセブン―イレブン本木店。午前1時に閉店した後、商品をそろえたり掃除をしたりするスタッフたち=2019年、東京都足立区
(C)朝日新聞社

スマートフォンの画面の写真
ローソンはレジを使わずに買える実験を開始。お店を出るだけで決済され、スマートフォンにレシートが送られるしくみです=2月、神奈川県川崎市
(C)朝日新聞社

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