朝日中高生新聞
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アフリカのちから 世界が注目

2019年8月25日付

第7回
アフリカ開発会議
8月28日~30日、横浜で開催

日本と意外に近い?

 日本から1万キロ以上と遠いアフリカ。でも、ゴリラやキリンなど人気の動物や、カカオ豆を原料とするチョコレート、たこ焼きに欠かせないタコといった食べ物など、アフリカゆかりのものは身近にたくさんあります。
 最近では、アフリカにルーツをもつ日本のスポーツ選手が世界で大活躍しています。例えば、陸上男子100メートルの日本記録保持者のサニブラウン・ハキーム選手は、父親がアフリカ西部のガーナ出身。北米のプロバスケットボールリーグNBAから日本選手として初めて1巡目指名を受けたはちむらるい選手も、父親は同じくアフリカ西部ベナン出身です。
 天然資源に恵まれたアフリカは近年、目覚ましい経済成長をとげています。これまでは「援助」の対象として見られていましたが、今では「投資」の対象として海外の企業から注目を集めています。
 一方で、ニュースでよく耳にする内戦や難民、貧困、環境破壊といった深刻な問題を抱えているのも事実です。
 28日から30日までの3日間、神奈川県横浜市で第7回アフリカ開発会議(TICADティカッド)が開かれます。これを機に、アフリカについて少し詳しく見ていきましょう。(編集委員・根本理香、猪野元健)

国の数 54カ国

 国連に加盟する193カ国の4分の1以上を占める。サハラ砂漠より南の地域は「サブサハラ」と呼ばれる

人口 12億人以上

 世界の約6人に1人はアフリカの人となる計算。2050年にアフリカの人口は20億人を超える見通し

面積 約3千万平方キロメートル

 全世界の陸地の約2割を占める。最大の国はアルジェリアで日本の約6.4倍

国造りの歴史浅いアフリカ

 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センター長のたけうちしんいち教授に、アフリカについての基本的な質問に答えてもらいました。

なぜ貧しい国が多い?
植民地下で経済発展遅く

 国造りの歴史が浅いことと関係しています。アフリカの多くの地域ではかつて、法律を作ったり人々から税金をとったりする国としてのまとまりがありませんでした。経済的には金持ちもおらず、平等でした。
 19世紀末にはヨーロッパの植民地にされ近代的な産業が入ってきますが、主な担い手は外からの入植者。産業を担えるような豊かな身分の人がいなかったことが大きな理由です。
 経済発展が遅れた状況が続きましたが、2000年ごろからは石油や鉱物など天然資源の豊富な国で、国の経済規模を示す国内総生産(GDP)が大きく伸びています。背景には中国の海外進出があります。アフリカの国々が中国に資源を売り、中国から製品を買う動きが目立ちます。
 ただ、GDPを伸ばしている国には貧富の格差が激しいところもあります。GDPは国民全体の豊かさを表しているわけではありません。

紛争が多い背景は?
独立後の権力争いで内戦

 1960年代に植民地から多くの国が独立します。独立の際、植民地だった時に引かれた線をそのまま国家の単位としました。地図を見ると、国境線が直線になっているところが目立ちますね。人工的に引かれた線の中で、元々関係のなかった部族が同じ国民となったのです。国家として統一したルールを作る苦労は、想像できないくらい大変なことだと思います。国の主導権を誰が握るかでもめると、先進国では選挙という制度がありますが、制度が整っていない国々では対立が内戦となってしまいがちだったのです。
 日本も、いくつもの内戦をくり返して統一されました。独立してまだ数十年と日が浅いアフリカの国々で内戦が多いのは当然とも言えます。
 今は権力闘争としての紛争は減ってきました。一方で、中東地域から過激派がサハラ砂漠周辺に流れてきて、地域を不安定にしています。また、人口増加や気候変動などの影響で農村部の資源が少なくなり、部族同士の争いなどが起こっています。

なぜ自然が豊かなの?
密猟や伐採…今後の課題

 善かれあしかれ開発が進まず、自然が残っているということでしょう。ただ、いい方向に進んでいるとは言えません。例えば、ゾウやサイの密猟の問題があります。また、内戦の時に簡単に資金を稼ぐ方法として熱帯雨林を伐採する権利が売られ、生態系に影響を与えています。内陸部の開発もここ20年くらいで進んできています。生物多様性をどう守っていくか、今後の課題です。

銃を持った人と瓦礫の残る町の写真
2011年に独立した南スーダンでは、クーデター未遂事件をきっかけに民族対立が激化。戦闘や略奪が相次ぎ、多くの市民が犠牲になりました=14年1月、南スーダン・ボル
(C)朝日新聞社

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