朝日中高生新聞
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東日本大震災から8年 伝えたい 被災地の「今」

2019年3月10日付

 東日本大震災から11日で8年。宮城県の復興アイドル「みちのく仙台ORIオリひめたい」は震災直後、被災地の小中高生が復興支援のために結成したグループです。「被災地を笑顔にしたい、被災地のことを発信したい」とステージに立ち、仮設住宅の訪問や復興イベントへの出演など、ボランティア活動を続けています。(小貫友里)

復興支援ご当地アイドル 「みちのく仙台ORI☆姫隊」の12人

募金や遺留品集めにも協力

 「みなさ~ん、ORI☆にちは~!」。2月16日、宮城県町で開かれた「利府町浜まつり」に、とびきりの笑顔で登場し、4曲を披露しました。
 2011年7月、仙台市などの子どもたちでグループを結成。現在のメンバーは小学生から大学生まで12人です。ステージ出演や仮設住宅の訪問のほか、津波で流されたりゅうひん集めにも協力。東北の実情を知ってもらおうと、国内外のイベントにも出演します。
 ライブ後は募金活動をし、グッズやCDの収益は被災地支援などに役立ててもらいます。18年には復興庁から「復興大臣感謝状」を受けました。
 結成当初は、がれきを片付けて練習場所を作っていました。震災当時小学2年生で、津波の被害にあう寸前で車に乗せてもらい、助かったメンバーもいます。
 リーダーのNODOCAさん(19)は宮城県とり市出身。震災当時は小学5年生でした。「私の家は大丈夫でしたが、親戚や友達が被災しました。元々ダンスが好きで、何かできることがあるならと活動を始めました」
 仮設住宅で歌と踊りを披露した後、おばあさんが涙を流しながら握手をしに来てくれたことが強く印象に残っています。「子どもでも力になれる、と思いました」

復興住宅のお年寄りを心配

 津波で大きな被害を受けた仙台市わかばやしあらはま地区をメンバーが案内してくれました。
 「普通の住宅地だったんです。松林の向こうは海で、海水浴場として有名で、私も夏には行っていたんですよ」と仙台市出身で副リーダーのRIさん(19)。高さ13メートルを超える津波に、家も松林も流されました。
 地区に新しい水産加工工場が建っていました。メンバーも「こんなに立派な建物ができた」と驚きます。「建物や道路などはかなり整ってきましたが、復興住宅で独り暮らしをする高齢者らの心の問題が心配です」とNODOCAさん。ERINさんも「これからも被災地の子どもとして、今起きていることを自分で見て伝えていきたい」と話します。

「利府町浜まつり」で歌と踊りを披露するみちのく仙台ORI☆姫隊の写真
「利府町浜まつり」で歌と踊りを披露するみちのく仙台ORI☆姫隊=2月16日、宮城県利府町の浜田漁港公園広場

13メートルを超える津波に襲われた地区の写真
13メートルを超える津波に襲われた地区。以前は海岸沿いに松林が続いていました=2月17日、宮城県仙台市若林区荒浜

海辺に、震災前の様子を伝える写真が掲示されていて、ERINさんとSORAさんが解説している写真
海辺に、震災前の様子を伝える写真が掲示されています。ERINさん(左)とSORAさんが解説してくれました=2月17日、宮城県仙台市若林区荒浜

被災地支援の募金活動をしている写真
被災地支援の募金活動をしました=2月16日、宮城県利府町の浜田漁港公園広場

宮城県を中心とした、東日本大震災の被害を受けた地域の地図

明日からも頑張れる

復興支援アイドル 被災した子らに活力

 復興アイドル「みちのく仙台ORIオリひめたい」は2月17日、福島県そう市のはまなす館で開かれた「わくわくワールドフェスタ」のステージに立ちました。
 このお祭りには3年連続で出演しています。メンバーが「特別なファン」と口をそろえる人たちが今年も見に来ます。市内にある福祉施設「はらまち学園」の子どもたちです。
 主に知的障がいのある子どもたちが義務教育を終えた後、この施設で集団生活を送りながら職業技術訓練を受け、自立と社会参加を目指します。ORI☆姫の招待で、この日は20人以上がやってきました。
 施設は以前、南相馬市にありました。震災による東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、当時の全入所者と職員が避難。2011年11月まで千葉県かもがわ市などで避難生活を送り、相馬市で施設を再開しました。
 メンバーは原町学園を何度も訪れてライブをしたり、イベントに招いたりして交流を続けます。「初めは心を開いてくれなかった人も、何回も通ううち、笑顔を見せてくれるようになりました」とNODOCAさん。
 入所者の一人、おおもりかずさん(19)は「自分ではライブに行くことができないから、夢がかなってうれしい。明日からの作業もがんばれる」と、ORI☆姫のステージに目を輝かせていました。

原町学園の入所者と触れ合うSEIKAさんの写真
原町学園の入所者と触れ合うSEIKAさん(中央)=2月17日、福島県相馬市のはまなす館

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