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2018年10月21日付
海の汚染につながっているプラスチック(プラ)ごみを減らすため、プラ製ストローをやめようという動きが世界中で広がっています。日本でも大手企業が提供をやめ始めたほか、すでに紙製ストローに切り替えている例もあります。二酸化炭素を増やさなかったり、ごみを残さなかったりする「バイオプラスチック」という素材も注目されています。(畑山敦子、小勝千尋)
プラ製ストローをやめようという動きは、まず海外から起こりました。米国のマクドナルドは6月、英国とアイルランドにある計1361店で、9月からプラ製ストローを紙製ストローに切り替えると発表。コーヒーチェーン世界最大手の米スターバックスは7月、2020年までにプラ製ストローをやめると公表しました。
日本では、ガストやバーミヤンなどのレストランを運営する「すかいらーくホールディングス」が8月、プラ製ストローの提供を20年までに全ての店でやめると発表しました。店にストローを置かず、子どもや高齢者など必要な人には提供する予定です。同ホールディングスの店では年間約1億本のストローが消費されているといい、「ごみ削減につなげたい」(広報担当者)と話します。
家具販売大手の「イケア・ジャパン」も、20年までにストローやビニール袋など使い捨てのビニール製品を完全にやめるとしています。損害保険大手の三井住友海上火災保険は社員食堂で、使い捨てのプラ製ストローとカップの廃止を進めています。
外資系ホテルチェーンのヒルトン・ホテルズ&リゾートでは7月1日から、全国14施設のレストランで使っていたプラ製ストローを紙製ストローに切り替えました。紙製ストローも、利用客から要望があった時のみ提供しているといいます。
実際に紙製ストローを使うと、固くて丈夫で、水に入れても溶けることはありません。使ったお客さんも「味も変わらないので違和感はない」「普段から無意識に使用するもので、環境に配慮できるのはうれしい」などと話していたそうです。
ヒルトン東京お台場の大塚妙香さんは「ストロー以外のプラスチックなども使う量を減らし、30年までに廃棄物の50%削減を目指しています」と話します。
生活雑貨専門店「ロフト」渋谷店では、15年から紙製ストローの販売を始めました。最近は、近隣で飲食店を経営する人などが買い求めることが多いと広報渉外部の高橋祐衣さんは話します。
昨年5月からアルミ製、今月からチタン製ストローも販売しています。どちらも洗って再利用できるもので、売り場には専用の洗浄用ブラシも並びます。「個人の需要が高く、アルミ製ストローの9月の売り上げは昨年同時期の倍以上でした」と高橋さん。11月からはシリコーン製のストローも販売する予定です。
ストローなどのプラごみは、海の汚染につながっています。
プラスチックごみに覆われた米・ハワイ島のカミロビーチ=2017年9月
(C)朝日新聞社
都内13店でストローの提供中止を実験的に始めたファミリーレストラン「ガスト」。この店では、ストローを希望する人は利用客の1割未満だそうです=東京都武蔵野市のガスト関前店
プラ製以外のストローが並ぶ売り場=15日、東京・渋谷ロフト
ヒルトン東京お台場で使われている紙ストロー=9月5日、東京都港区
店や家庭で捨てられたプラスチック(プラ)製品は、川から海へ流れ出たり、海で捨てられたりします。その後、太陽の光によって溶けたり、くだけたりして「マイクロプラスチック」と呼ばれる直径5ミリ以下の小さなごみとなって残ります。
海鳥や魚などのおなかからマイクロプラスチックが大量に見つかり、生態系や魚を食べる人間への影響も心配されます。
6月にカナダであった主要7カ国(G7)の首脳によるサミットでは、使い捨てプラ製品の使用量を減らすことなどを盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」を採択しました。ただ、日本は産業や生活への影響を考える必要があるとして、米国とともに署名していません。
プラ素材に代わって広がりそうなのが「バイオプラスチック」です。
バイオプラは、植物の油や糖からとれる成分でつくる「バイオマスプラスチック」と、微生物の力によって水と二酸化炭素に分解される「生分解性プラスチック」の2種類があります。
日本バイオプラスチック協会によると、燃やしても二酸化炭素を増やさないバイオマスプラは、ポリ袋などに使われています。生分解性プラは自然に返る特性を生かし、作物を守る農業用フィルムなどに使われているそうです。事務局長の横尾真介さんは「プラごみ削減に役立つ素材の一つです」と言います。
ただ、石油が原料の一般的なプラ素材に比べ、バイオプラは生産に数倍のコストがかかります。国内では年間約1100万トンのプラスチックが使われますが、そのうちバイオプラは約0.4%です。横尾さんは「値段が少し高くても、環境にやさしい製品が選ばれることで広がってほしい」と話します。
「アピタ」「ピアゴ」などのスーパーを展開するユニー株式会社(愛知県)が2015年から192店舗で取り入れている有料のレジ袋。原料の25%にバイオマスプラスチックを使っています=横浜市
記事の一部は朝日新聞社の提供です。