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2018年6月24日付
大阪府北部を震源とする最大震度6弱の地震が18日朝、起きました。小学生を含む5人が亡くなり、負傷者も多く出ました。通勤・通学の時間帯に都市部を直撃。交通機関の乱れは夕方になっても解消されず、帰宅が困難になった人たちが街にあふれました。都市部で地震が起きたときの注意点を専門家に聞きました。朝中高特派員から届いた声も紹介します。
気象庁によると、震源の深さは13キロ、地震の規模を示すマグニチュードは推定6.1。大阪市北区、大阪府の高槻市、枚方市、茨木市、箕面市で震度6弱を観測しました。大阪府内で震度6弱が観測されたのは初めて。近畿を中心に、関東から九州の一部にかけて広い範囲で震度5弱から震度1を観測しました。
総務省消防庁によると、大阪府で5人が亡くなり、大阪、兵庫、京都など7府県で約400人が負傷(22日午前9時時点)。高槻市の小学校ではブロック塀が倒れ、4年生の女の子が犠牲になりました。
電気や水道、ガスなどライフラインにも大きな影響を及ぼしました。関西の主要な鉄道は一時全線で運転を見合わせました。夜になっても運転が再開されない路線もあり、淀川にかかる新淀川大橋は、歩いて帰ろうとする人などで大混雑しました。この日、JR在来線では約3800本が運休や遅延し、計約240万人に影響しました。
東北大学災害科学国際研究所の寅屋敷哲也助教(防災社会システム)は、都市で災害が起きたとき問題になるのが「帰宅困難者」だといいます。今回の地震でも鉄道が止まるなどして、多くの帰宅困難者が出ました。
「帰宅困難者は家に帰れないことだけでなく、大勢の人が徒歩で帰宅しようとして道路にあふれ出て緊急車両の妨げとなり、救助や復旧の遅れにつながることも問題」と指摘します。
災害で交通がまひしたら、会社や学校などにいる人はなるべく建物内にとどまり、観光客や買い物客などは観光施設やお店が受け入れることで「混雑時の移動を避けることが大切」。駅周辺で、企業やホテルなどが一時滞在を受け入れる取り組みも進められています。
中高生が自宅から離れた所で災害にあったら、「無理に長距離を歩いて帰ろうとせず、まずは落ち着いて情報集めを」とアドバイス。近くの施設が場所の提供や物資の支援をしてくれるかもしれません。「SNSにはデマが流れる可能性もあります。なるべく公的な機関の情報を探しましょう」
朝中高特派員の喜田翔太さん(大阪府立富田林中1年)は学校の代休で家にいました。「ドンという大きな音がした。ダンプカーが倒れたのかと思いました」
JR大阪環状線の車内にいた小垣壮介さん(大阪府立夕陽丘高2年)は「しばらく車内に閉じ込められた後、降ろされて、最寄り駅まで線路を歩きました」。
兼崎愛里さん(京都府立鳥羽高3年)は電車を降りて学校に向かい、商店街を一人で歩いていました。「突然、店のシャッターが激しくガタガタと鳴り出しました。街灯が大きく揺れるのが見え、近くの男性が広い道路の方へ走り出したので、私も急いで避難しました」
友達の中には、電車に3時間閉じ込められた人や、定期券だけでお金を持っていなくて困った人がいたそうです。「IC定期券にいつもお金をチャージしておく、エレベーターにはなるべく乗らない、地震が来たら窓や倒れてくるもののそばから離れる、などが大切だと思いました」
(C)朝日新聞社
歩行者が車道にまであふれる幹線道路=18日午後6時過ぎ、大阪市北区
(C)朝日新聞社
防災について家族と話し合った朝中高特派員もいます。
相馬萌乃さん(大阪府立東住吉高2年)は「電車通学なので、電車が止まったとき、どう帰るか調べておくこと、食料を少しかばんに入れておくことなどを話しました」。吉川陽菜さん(兵庫県立西宮高1年)は、災害用伝言ダイヤル(171)について確認したそうです。
三枝大駕さん(兵庫県三木市立緑が丘中1年)は「自宅にはガラス張りの棚があるので、補強しなければいけない。ほかの家具も確認したいと思います」。
地震はいつ、どこで起きるかわかりません。防災教育に詳しい「人と防災未来センター」(兵庫県神戸市中央区)の研究員の河田慈人さんに、地震に備えるべきことなどを聞きました。
みなさんには、通学路や習い事で通る道を改めて点検してほしい。地震が起きると看板が落ちてきたり、塀が崩れたりする恐れがあります。自動販売機が倒れることもあるかもしれません。普段から少し離れて歩くようにしましょう。
出かける時は、どこの誰かわかる物を持ってください。緊急連絡先が書いてあれば、けがをした場合などに周りの人から家族に連絡をとってもらえます。笛も、閉じ込められた時などに居場所を知らせるのに役立ちます。
スマートフォンを利用している人は充電用のモバイルバッテリー、予備のメガネやコンタクトなど、自分に必要なものを持ち歩きましょう。
建物の中にいる時は非常口を確認しておくこと。前もって方向がわかっていれば地震が起きた時すばやく避難できます。
災害が起きたら、家族と離ればなれになるかもしれません。集合場所を決め、実際に一緒に行ってみましょう。決めた場所が被害を受ける場合があるので、優先順位をつけて2カ所ぐらいあったほうがいいと思います。
家では家具が転倒しないように固定し、位置も確認。例えば、ベッドの近くにタンスがあれば、倒れてもぶつからないような向きや配置にします。
イラスト・佐竹政紀
記事の一部は朝日新聞社の提供です。