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2017年4月30日付
米国のトランプ大統領(70)が就任して100日を迎えた。「米国第一」を掲げて、移民や難民に厳しい政策を打ち出したが、うまくいっていない。「力による平和」という軍事力を見せつけて「取引(ディール)」する外交では、世界各地に緊張感を高めている。
「アメリカを再び偉大な国にする」。ドナルド・トランプ氏は1月20日に第45代大統領に就任した。
ホテル経営などを手がける「不動産王」と呼ばれ、政治経験がないトランプ氏。大統領選で、米国人の職を奪う移民や、外国の工場で作られた安い輸入品が大量に入る貿易を問題視し、白人労働者らから絶大な支持を得て当選した。
就任から約1時間後に、環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱する考えを表明した。貿易のルールを日米でつくって、中国に対抗することを狙っていた日本には衝撃が走った。
しかし、力を入れた国内問題でつまずいている。「テロリストの入国を防ぐ」として、中東・アフリカ7カ国からの移民の入国を一時停止する大統領令を出した。しかし、「イスラム教徒への差別だ」などと、裁判で効力停止に追い込まれてしまった。
オバマ前大統領時代にできた医療保険制度改革(オバマケア)の廃止・見直しも、議会で多数を持つ党と調整できずに断念した。
政権の重要ポストも空席のままだ。大統領が指名する政府高官ポスト約550のうち、9割が決まっていないという異常な状況だ。
国内問題がうまくいかないトランプ氏は、4月から外交で積極的に独自色を打ち出し始めた。
4月4日にシリアで大規模な空爆があった。トランプ氏はこれを、シリアのアサド政権による化学兵器攻撃だと批判。中国の習近平国家主席と首脳会談をしていた6日、シリア軍の基地をミサイル攻撃した。アフガニスタンでも「核兵器以外で最強」とされる大規模爆風爆弾(モアブ)を使用。対立する勢力には「断固たる行動」をとるという姿勢を、国際社会に印象づけた。
ミサイル発射実験を繰り返し、核実験を準備する北朝鮮に対しても、これまでの話し合い路線を「失敗」として転換。原子力空母を朝鮮半島周辺に向かわせた。力を前面に押し出すトランプ政権の外交で、世界の緊張は高まっている。
こうした状況の中、トランプ氏の支持率は4割にとどまる。就任間もない大統領としては、かなり低い。自ら頻繁にツイッターで情報発信しているが正確でないことが多く、都合の悪い報道には「フェイク(でたらめ)だ」と攻撃。自身に批判的な新聞やテレビなどのメディアを会見から閉め出すなど対立している。
就任1カ月の実績を強調するトランプ米大統領=2月18日、米フロリダ州
どちらも(C)朝日新聞社
トランプ米大統領のツイッター。オバマ前大統領を批判している
報道の自由を訴え、トランプ米政権に抗議する人たち=2月26日、米ニューヨーク
解説者
香取啓介
朝日新聞国際報道部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。