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2016年3月27日付
本来食べられるものが捨てられる「食品ロス」が注目されている。日本では食品業界の出荷段階での「規格外」や、業界の習慣を理由に大量の食べ物が廃棄されているほか、家庭から出る食品ごみも多い。ロスを減らすための取り組みも始まっている。
西日本にある製麺工場。ベルトコンベヤーで流れる袋詰めのうどんが時折、棒ではじかれ横のかごに落ちる。袋に入れた麺が定量より少ないか、20グラム以上多いと捨てられ、1日約200キロの麺がゴミとなる。
こうした「規格外」のほか、食べ物の廃棄を決める時に判断基準にされるのが、「賞味期限」と「消費期限」だ。賞味期限はハムなど保存がきく食品に表示され、「おいしく食べられる期限」を示す。期限を過ぎても、すぐに食べられなくなるわけではない。消費期限は弁当など保存がききにくいものが対象。安全に食べられる期限を示す。
食品業界には「3分の1ルール」と呼ばれる習慣がある。例えば賞味期限が3カ月なら1カ月までに店へ納品。2カ月を目安に「販売期限切れ」で返品や廃棄に回る。客の手元で期限が長く残る商品を売るためだ。
この習慣のため、ある食品メーカーには全国のスーパーなどから週に何度も賞味期限切れ前の商品が返品され、大半が廃棄される。この会社の出す食品ごみは年間数百トンだ。
小売店側にも事情がある。品切れになれば、客が他店に行ってしまう可能性があることから、「在庫を多めに抱えざるを得ない」というスーパーもある。
農林水産省によると、こうした食品関連事業者が出す食品ロスは年間300万~400万トンにのぼる。
一方で、家庭から出ている食品ロスも年間200万~400万トンにのぼる。京都市の2012年度の調査では、家庭の生ゴミの2割近くが手つかずの食品で、その3割が賞味期限切れ前だった。
食品ロスを減らすための取り組みも、少しずつ広まっている。
東京・麻布のスーパーでは賞味期限の迫った商品を値下げして売る「エコサーキット」のコーナーがあるほか、期限が近い商品に「つれてって!」と書かれたシールを貼って購入を呼びかけるスーパーもある。
また包装ミスなどを理由に出荷できなかったり、期限が迫っていたりする食品を、福祉施設などへ配る「フードバンク」という活動もある。
私たち一人ひとりは何ができるだろう。製造・流通過程で大量の食べ物が捨てられる現状は、消費者が食品に「新しさ」と「完全さ」、店に品ぞろえを求めてきた結果だろう。今日食べるなら期限の近い商品を買い、家にある食べ物を食べ切るようにすることが、ロスを減らす一歩になる。
賞味期限が迫った食品を先に買ってもらえるよう「フードレスキュー」のシールを貼っている=東京都江戸川区のスーパーどちらも(C)朝日新聞社
解説者
藤田さつき
朝日新聞文化くらし報道部
記事の一部は朝日新聞社の提供です。