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2015年7月5日付
2020年東京オリンピック(五輪)・パラリンピックでメイン会場になる新国立競技場(東京都新宿区)の建設計画が揺れている。どんな競技場にするのか。建設費はいくらになるのか。そもそも完成は間に合うのだろうか。
この春までに完全に取り壊された以前の国立競技場は、1958年に完成。64年の東京五輪に向けて更に増築された。ただ、2020年に再び五輪を開催するには、観客席の数や陸上競技のトラックのレーン数などが、国際オリンピック委員会(IOC)が求める基準を満たしていなかった。老朽化や耐震性も指摘されていた。
国は専門家に話し合ってもらい、景観や周辺環境に配慮して、どんな新国立競技場を建てるかを決めた。
収容人員は8万人で、サッカー観戦などで臨場感が出るように観客席の一部は陸上のトラック部分までせり出す可動式。雨でもコンサートが開催できて周辺住民への騒音対策にもなる開閉式の屋根の設置も決めた。
コンサートは、年間35億円とも試算される競技場の維持費をまかなうのに必要だとした。
デザインは、世界中から案を公募。46点の中から、イラク出身の女性建築家ザハ・ハディドさんの案が選ばれた。2本の巨大なアーチで流線形の屋根を支える斬新なデザインで、建設費は国が当初想定した1300億円を大きく超えてしまった。
このため国は、床面積を約2割小さくし、高さも5メートル減らすなど、当初のデザインを縮小し、1625億円まで節約できると一時は見通しを立てた。だが、資材や人件費の高騰もあって、その金額では収まらないことが判明。そこで、当面の総工費を減らすため、開閉式の屋根の設置は五輪後に先送りすること、可動式の観客席は仮設にすることを決めた。
それでも、2本の巨大なアーチを建設するには、やはり想定以上の工事費がかかることがわかった。総工費は結局、2520億円まで膨らんだ。
この間、総工費は低く抑えて、より質素な競技場にするべきか、予定を超える総工費をかけてでも斬新なデザインを維持するべきかで、様々な意見が出た。
国内の建築家のグループからは、アーチ構造を取りやめれば工期を短縮できて総工費も予定通りにできるという提案があった。
スポーツ界からは、五輪後も8万人規模を維持し、可動式の観客席も残すなど、当初の予定通りの競技場を求める意見が上がった。
費用の負担を巡って、国と東京都の対立にも耳目が集まった。5月末、東京都の舛添要一知事は会見で、国から都に求められている負担について「いい加減な数字」と、金額や負担する根拠などを文部科学省に求め、同省の下村博文大臣は総工費について「6月下旬までには公表できるように準備している」と発言。文科省は都に500億円の負担を求める姿勢を崩していない。
都の費用負担額はまだ流動的だが、国は近く、実際に建物を造る大手建設会社と予定通りに契約を結び、今年10月には工事を始めたいとしている。
調整会議に臨む(左から)東京都の舛添要一知事、大会組織委員会の森喜朗会長、遠藤利明五輪担当相、下村博文文部科学相=6月29日
解説者
増田創至
朝日新聞スポーツ部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。