朝日中高生新聞
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多様化する音楽 「ヒット曲」の基準は?

2015年5月17日付


デジタル配信、動画サイト、定額制の聴き放題サービス……。「音楽と言えばCD」という時代は過ぎ去り、その聴き方もすっかり多様化した。こんな時代の「ヒット曲」とは何なのか。音楽ランキングを作成する企業は、手探りを続けている。

ランキングが違う理由

CDだけの特典、配信ではバラ売りも

 オリコンの昨年のCDシングル売り上げランキングで、AKB48が1~5位をが独占した。ところが、音楽配信サービス「アイTunesチューンズ」のランキングだと、トップは映画「アナと雪の女王」の主題歌「レット・イット・ゴー」。10位以内にAKBの名はない。
 オリコンは、CDの売り上げを調査する日本を代表する音楽ランキング。これに対してiTunesでは、ネットで曲がどれだけダウンロードされたかを集計している。
 AKBの握手券など楽曲の複数購入を促すような特典が、配信ではつかない▽「アナ雪」関連曲はCDだと楽曲集としてまとめて発売されているが、配信では曲ごとにバラ売りされている――ことなどが、二つのランキングの違いにつながったとみられる。
 音楽ランキングは1940年代に米国で誕生した。ヒット曲の入れ替わりが目に見えてわかるようになり、レコード会社や販売店は無駄な在庫を抱えずに作品を生産できるようになった。人々はランキングを参考にレコードやCDを買い、自然と「上位の曲=いい音楽」という価値観が根づいていった。

デジタル化の進展 売上高はCDを逆転

DLダウンロード、無料動画…変わる市場どう反映

 だが、2000年代以降のデジタル化の進展によりCDの売り上げを追うだけでは、音楽の流行の全体像をつかみきれなくなってきた。
 日本レコード協会の調べでは、国内のCD生産枚数は05年の約3億枚から14年は約1億7千万枚に激減。国際レコード産業連盟によると、昨年初めて全世界のデジタル販売の売上高がCD・レコードなどを逆転した。お金を払わず、ユーチューブで聴くだけで満足する若者も増えている。
 時代の変化を受け、米国の音楽業界誌ビルボードの日本版ランキングは、CD売り上げだけでなく、ダウンロードやツイッターでの反響などを集計。近く、ユーチューブの再生回数も反映する予定だ。
 本社チャートディレクターのシルビオ・ピエトロルオンゴさんは「音楽界は、CDという『モノを所有する』あり方から、配信など『音楽にアクセスする』モデルへ転換しつつある。現在の音楽市場を正確に反映したい」と述べる。
 一方、オリコンのいけこう社長は「動画サイトは無料なうえ、再生回数を操作される恐れもある。配信についても検討しているが、『パッケージ(CD)しか出さない』というポリシーの人もおり、関係者全員の協力を取り付けるのは大変困難」と話している。

タワーレコード渋谷店の写真
ネットに対抗し、インストアライブなど「リアル」で集客するケースも増えてきた=2014年12月13日、東京都渋谷区のタワーレコード渋谷店
(C)朝日新聞社

2014年の音楽ランキング

神庭亮介さんの写真
解説者
かんりょうすけ
朝日新聞デジタル編集部前文化くらし報道部

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