朝日中高生新聞
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世界中で自動車販売に急ブレーキ

2020年5月17日付

 世界中で自動車が売れなくなっている。新型コロナウイルスの感染拡大で自由な外出や店の営業ができなくなり、需要が急速に落ち込んだ。工場も次々停止し、雇用の不安も募る。中国や欧州で生産再開の動きはあるが感染流行の収束は見えず、先行きは不透明だ。

新型コロナの影響で外出制限、買い控え

部品工場が停止し、生産ストップも

 世界で最も自動車販売が多い中国では、今年3月の新車販売台数が143万台だった。昨年3月と比べて43%も減った。
 3月はどこの国や地域も同じような販売状況だった。業界団体や調査会社によると、米国では推計99万台で38%減ったほか、欧州連合(EU)域内は57万台で55%減、日本は58万台で9%減となった。
 日本の大手8社の3月の世界での販売は計180万9263台で、35%減った。日産自動車は、3月までに売り上げが900億円減ったなどとして、19年4月から1年間の、会社の業績の予想を引き下げた。11年ぶりに赤字になる見通しだ。
 新型コロナウイルスが3月にかけて世界中に広がり、各国が感染防止のため、外出や店舗の営業を制限した。車の販売店も休みになり、買い物にも行けなくなった。
 いままで通り働くことができず、収入が減っている人も多い。大きな買い物になる自動車の購入を控える人も増えている。
 日本の減り幅は世界と比べると少なかったが、4月は27万台で昨年4月と比べて29%減になった。国内でも感染が拡大し、政府が外出自粛などを呼びかける「緊急事態宣言」を出した。そのため、販売店に来る人は大幅に減った。
 感染の拡大を抑えるために外出を禁止した中国などでは、工場もストップした。影響は世界に広がった。
 日本でも海外からの部品が足りなくなり、自動車が作れなくなった工場が出てきた。加えて、いまは自動車を作っても売れないため、メーカーは自主的に工場を止めたり、生産台数を減らしたりしている。
 会社は従業員を一時的に休ませるなどしている。国も、休業になった際にメーカーが従業員に支払う手当の一部を助成する制度などを充実させて、支援している。

中国や欧州で一部生産再開

第2波リスクで先行き不透明

 中国では感染の拡大を抑え込んだとして、3月までに多くの工場が再開した。欧州でも各国が外出の制限などを解除し始めていて、ドイツのフォルクスワーゲンなどが生産を再開した。
 トヨタ自動車も4月にフランスで再開し、5月には米国やカナダの工場で操業を再開した。
 ただ、収束はまだ見通せない状況で、各地で工場の停止が続いている。経済活動を再開した中国でも、感染の第2波のリスクが指摘されており、先行きは不透明だ。
 自動車産業は大手メーカーを頂点にピラミッド型に部品会社が連なる。就労者は国内で働く人の1割弱、546万人に上る。
 出荷額も日本の製造業の2割ほどを占め、販売不振や減産、それに伴う人員削減は日本経済の悪化につながる。
 車は2万~3万の部品からなり、1点でも欠ければ完成しない。経営が厳しい会社が増えれば影響は全体に広がり、新型コロナウイルス感染の流行が収束して需要が戻っても、すぐに生産を再開できない恐れがある。

解説者
いながき駿はや
朝日新聞経済部記者

英北部サンダーランドにある日産自動車の英国工場の写真
英北部サンダーランドにある日産自動車の英国工場=2019年10月
写真は(C)朝日新聞社

自動車部品などの溶接機械の一部を止めた製作所の写真
自動車部品などの溶接機械の一部を止めた製作所=4月20日、愛知県名古屋市

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