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2019年12月8日付
国の税金を使って首相が毎年春に開く「桜を見る会」が来年度は中止されることになった。安倍晋三首相の地元の人たちが多く呼ばれていたことがわかったからだ。政府は今後、どんな人を何人招くかや、開催にかかる費用などを見直すことにしている。
桜を見る会は、1952年に当時の吉田茂首相が始めた。その後は、東日本大震災のあった2011年と翌12年を除いて、首相が毎年、東京の新宿御苑で開いている。
どんな人たちが招待されるのか。政府によると、日本にいる各国の大使や衆議院と参議院の議長、最高裁判所の長官、大臣、国会議員、都道府県知事の一部のほか、「その他各界の代表者等」が参加することになっている。芸能人も参加していて、今年はアイドルグループ「ももいろクローバーZ」や歌舞伎俳優の市川猿之助さんらが招かれた。
中止されることになったのは、政府はこれまで「功績・功労のあった方々」を招くと説明していたのに、安倍首相の地元から大勢呼ばれていたことがわかったからだ。山口県下関市にある首相の事務所が桜を見る会を含んだ1泊2日の東京都内の観光ツアーを企画。桜を見る会の前日には後援会が「前夜祭」を開いて、首相夫妻を囲んで記念撮影もしていた。
首相はもともと国会で「招待者のとりまとめには関与していない」と話していたが、問題が明らかになった後は「相談を受ければ、意見を言うこともあった」と修正した。
第2次安倍政権では、参加者数も費用もふくらみ続けている。今年の桜を見る会に招待したのは約1万5千人で、首相が推薦した人は約1千人もいたそうだ。妻の昭恵さんが推薦した人もいたという。
そもそも桜を見る会は、私たち国民が国に払っている税金を使って、立派な働きをした人をねぎらうのが目的だ。ところが、首相は自分を応援してくれている人や地元選挙区の人を大勢招いていた。それで、みんなのための行事を首相は自分のために使っているとみられた。
野党の議員が問題を調べるために、5月9日に桜を見る会の資料を出すように求めた。しかし、政府は同じ日に招いた人をまとめた名簿をシュレッダーで捨ててしまった。都合が悪いから捨てたのではないかと疑われている。
国会では、野党が質問を続けているが、政府は名簿が捨てられたことを理由に、きちんとした説明をしていない。
「前夜祭」についても高級ホテルで開かれたのに会費が安すぎるのではないかという指摘がある。費用も誰が、どのくらい負担したのか。納得できる説明はまだない。
首相は「国会から求められれば、出て行って説明するのは当然のことだ」と言うが、首相が総裁をつとめる自民党などの与党が後ろ向きで実現していない。
解説者
野平悠一
朝日新聞政治部首相官邸クラブ
安倍晋三首相(中央左)、昭恵夫人(同右)と記念撮影をする「桜を見る会」の参加者たち=4月13日、東京・新宿御苑
どちらも(C)朝日新聞社
記事の一部は朝日新聞社の提供です。