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2019年1月13日付
外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法(入管法)が昨年12月8日の参院本会議で可決、成立した。人手不足解消のため、一定の技能を持つ外国人に新在留資格「特定技能」を与える内容。4月1日に施行され、5年間で最大約34万5千人の受け入れを見込む。
厚生労働省によると、2017年10月末時点で約128万人の外国人が国内で働いている。しかし、就労のための在留資格が認められているのは大学教授や医師といった高度な専門的分野に限られていた。
専門的な知識などを必要としない単純労働分野は、日本で学んだ技能を母国に伝えてもらうための技能実習制度で来日する実習生のほか、アルバイトの留学生が担ってきた。改正法は単純労働分野にも「労働者」として受け入れることを認める内容で、大きな政策転換となる。
受け入れ対象は介護業、ビルクリーニング業、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連業、建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の14業種。機械化などによる生産性向上や、高齢者の雇用など国内の人材確保に努めてもなお、人手が足りない業種だ。
ただ、各業種を所管する省庁などが人手不足が解消されたと判断した場合、外国人の受け入れは停止する。
新たな在留資格「特定技能」は、技能水準によって2段階ある。必要性に見合った相当程度の技能と日常会話レベルの日本語能力が必要な「1号」を取得するには、各業種の所管省庁が作った試験に合格しなければならない。ただ、技能実習生として3年間の経験があれば、試験を受けずに資格を変更できる。家族帯同は認められず、在留期限は通算5年となっている。
熟練した技能が必要な「2号」は、より高い水準の試験に合格する必要がある。家族帯同が可能になり、在留も更新制となり長期の滞在も可能だ。ただ、活用が始まるのは数年後の見通しで、当面は建設業と造船・舶用工業(船舶用機器の製造)の2業種のみが対象となっている。
改正法成立後には新制度の全体的な方向性を示す基本方針のほか、外国人を単なる労働者ではなく、生活者として受け入れるための支援策も決まった。
基本方針では新在留資格を得た外国人が地方からより賃金の高い大都市圏に流出することを防ぐために必要な措置を講じることや、外国人に支払う賃金を日本人と同等以上とすることが示された。支援策には、外国人の生活全般に関する相談に応じる「多文化共生総合相談ワンストップセンター」(仮称)を全国約100カ所に設置することや、医療・行政サービスなど幅広い分野で多言語に対応できるようにすることが盛り込まれた。
福祉の専門学校で衣類を着脱する演習に取り組む留学生たち。人手不足が深刻化する介護現場で働くため、留学生の入学が増えているといいます=2018年8月、群馬県渋川市
どちらも(C)朝日新聞社
解説者
浦野直樹
朝日新聞社会部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。