朝日中高生新聞
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災害時用の備蓄急増で食料廃棄の問題も

2018年2月18日付

 災害に備えて都道府県や政令指定都市が保管している「備蓄食料」が急増している。東日本大震災などの影響で、被害の想定を幅広く見直したためだ。都道府県の備蓄量は今年度までの6年間でほぼ2倍になった。賞味期限が近づいた食料が捨てられる問題も起きている。

都道府県や政令指定市、2011~17年度で2倍近くに

東日本大震災や熊本地震の反省から

 備蓄食料は「長持ちですぐに食べられる」のが特徴で、水を入れるだけで食べられる「アルファ化米」や缶詰のパン、乾パンなどがある。47都道府県と、市の中でも人口が多い20政令指定都市に何食分を保管しているか、昨年12月から今年1月にかけて取材し、東日本大震災後の2011年度から17年度までの変化を調べた。
 都道府県の合計は、11年度は678万6千食で、17年度には1.8倍の1249万7千食に増えていた。指定市では、766万4千食から1221万食と1.6倍に増えた。
 増えた理由は、大災害の反省から食料の量を見直したところが多いからだ。
 11年度に186万食を持っていた東京都は東日本大震災をふまえて、2日分だった食料の量を3日分に増やすなどして、18年度には3.6倍の666万食まで増やす予定だ。
 福岡市は16年の熊本地震で方針を見直し、15年度の4万5千食から17年度は7.4倍の33万5千食に増やした。1人分を3食から9食に増やし、避難所に行く人だけでなく自宅で避難する人の分も加えた。

賞味期限近い食料、「フードバンク」に寄付の自治体も多いが…

「生活苦しい人に配る仕組みを」の声

 備蓄が増えて問題になるのが、賞味期限が近づいた食料をどうするかだ。
 備蓄に多いアルファ化米の賞味期限は約5年間。防災訓練で配ったり寄付したりする場合が多いが、16年度には計44万9千食が捨てられた。捨てた量は、東京都(20万食)、大阪市(7万7千食)、滋賀県(7万1千食)の順に多い。東京都の担当者は「寄付を増やしても配りきれなかった」と説明する。
 一方、捨てずに活用する方法で増えているのが、生活が苦しい人に食料を渡す「フードバンク」への寄付だ。15都府県と11指定市がフードバンクと提携。協議中や検討中という自治体も8県4市あった。
 大阪府は昨年12月、訓練で使い切れない約1万食を初めてフードバンクに寄付した。「子ども食堂」などの施設に贈るほか、電気や水道が止まった人に渡せるように生活相談の窓口にも配るという。
 ただ、数十人分入りの米や2リットルの水は大きすぎて配りにくいなどの課題もある。静岡市の「フードバンクふじのくに」の担当者は「処分に困ったものを押しつけられるのでは困る」と語る。フードバンクで国内最大の「セカンドハーベスト・ジャパン」(東京都)のなかいるマネジャーは「役所や企業が備蓄の処分に悩んでいるのに、生活に困る人が食料をもらえる場所は少ない。食料を配る仕組みを国ぐるみで考えてほしい」と話している。

4大都市の災害用の備蓄食料の変化の画像

大阪府の備蓄食料の画像
大阪府の備蓄食料。1食ごとにパックされたアルファ化米はチャーハンやピラフなどの種類があり、お湯や水を入れるだけで食べられる。缶詰入りのパン(右端)も1食分。アレルギーに対応したレトルトのおかゆなども備蓄している=大阪府庁
どちらも(C)朝日新聞社

矢吹孝文記者の画像
解説者
ふきたかふみ
朝日新聞社会部記者

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