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2017年10月8日付
高校野球の甲子園大会で、延長戦の際に決着がつきやすくなる「タイブレーク制」が導入されることになった。走者を置いて攻撃を始めるシステムで、引き分け再試合による連戦を回避できるようになる。作為的に試合を動かすことに反発もあったが、選手の故障予防などを目的に議論が進められてきた。
来年春の選抜大会から採用されることになった「タイブレーク制」。「タイ(同点)」を「ブレーク(壊す)」するという意味で、テニスにも同じ呼び名のルールがある。ソフトボールでは「好投手同士だと試合が終わらないこともある。どうにかして終わらせなければ」という議論から1987年にスタートした。
野球では以前から、けが予防として、投手の連投を避けようとする議論はあった。甲子園大会では2000年、延長十八回で引き分け、再試合とされていた規定が十五回に短縮された。ただ、再試合になると大会日程が過密になり、投手が連投するなど負担が増してしまう。今春の選抜大会で2試合続けて再試合となり、勝ち進めば4連投の可能性があったことから、タイブレーク導入に向けた議論に拍車がかかった。
タイブレークの方式については、甲子園大会は延長十三回から無死一、二塁で始めるという案が検討されている。
日本高校野球連盟が地方で実施している大会を調べたところ、2015年春から今年春までで92試合がタイブレークに入り、77%に当たる71試合が開始1イニングで決着した。2イニング目で勝敗が決まったのは17試合(18%)で、残りの4試合も3イニング目には決着した。タイブレーク開始から勝敗が決まるまでに要する平均回数は1.27イニング。データ上では決着がつきやすいと言える。
作為的に試合を動かすという側面から、導入に向けて反対意見もあった。現場の指導者からは「最後まで普通にやらせてあげたい」という声もあがった。しかし、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)やU18(18歳以下)ワールドカップでも実施されており、国際的な流れも導入を後押しした。
ただ、選手の健康問題への対策としては万全ではない。タイブレークの本来の目的は大会日程の消化だ。再試合にはならずに決着がつくが、その試合で投手の負担が減るわけではない。故障予防としては日本高野連も「次善の策」としている。タイブレークに入っても十五回で決着がつかない場合、試合を続けつつ1投手の登板回数は最長で15イニングまでとする案も議論されているが、抜本的な解決策とは言えない。
投球回数の制限や現在準々決勝の翌日にある休養日をさらに増やすなど、これからも「選手ファースト」を求めた対策の議論は続ける必要がある。
9月の野球U18W杯の日本対オーストラリア戦では、タイブレークの末に日本が勝利した
(C)朝日新聞社
解説者
小俣勇貴
朝日新聞大阪本社
スポーツ部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。