マレーシアへ虫と出あう旅
朝日学生新聞社児童文学賞『アブライモモムシ』作者の新井麻由子さん
 

 虫と女の子の交流をえがいた小説『アブライモモムシ』で昨年度の朝日学生新聞社児童文学賞「朝日小学生新聞賞」を受賞した新井麻由子さん(東京都・5年)。お父さんからのごほうびで4月26日〜5月4日、お母さんといっしょにマレーシアへ虫と出あう旅をしました。どんな出あいがあったのでしょう。新井さんの「マレーシア虫紀行」です。

 

 

 

 

マレーシアの西側にある町・タパーで見つけた国蝶アカエリトリバネアゲハの集団と=写真はすべて新井さん提供

 

 

ごほうび旅行は感動の連続

図鑑で見た「楽園」が目の前に

 

毒グモはふかふか

 

 初日は、マレーシアの西側にあるペナン島という島に行きました。
色とりどりのチョウが何千頭も飼育されているバタフライファーム。学芸員さんがつきっきりで、園内を案内してくれました。チョウ以外も、カメムシやコノハムシなど、図鑑でおなじみの虫はほとんどいて、心ゆくまでながめることができました。クモのタランチュラやナナフシは「試触」もオッケー! タランチュラは、ビロードのようにフカフカでした。

 

虫とり達人と再会

 

 島で3日過ごした後、クアラルンプールの北約150キロのパハン州にあるキャメロンハイランドに行きました。ここは去年の夏に、児童文学賞の最終選考に残ったお祝いに、初めて母とマレーシアに来たときも訪れました。日本にはいない虫がたくさんいるマレーシアは、幼稚園のときからあこがれの国でした。

 

 さっそく1年前にお世話になった現地のおじさんの家へ。このおじさんは、虫とりの達人です。

 

 ただの棒に、ビニール袋をホチキスでとめただけのボロボロの虫とり網を使って、見事な網さばきで虫をとります。「弘法筆を選ばず」とはこのことです。

 

 おじさんは、コノハムシやカレハカマキリをくれました。わたしが好きな虫を覚えていてくれて、感動しました!

 

 おじさんにジャングルに連れて行ってもらい、マレーシアの国蝶・アカエリトリバネアゲハを初めてつかまえました。トンボや、黄色と緑のきれいなバッタもゲット。村にもどると、サカダチコノハナナフシや、50センチくらいの巨大ナナフシを持たせてくれました。重たい! マレーシアは、昆虫も植物も本当に大きいのです。

 

 

ペナン島のバタフライファームで「試触」したタランチュラ

 

キャメロンハイランドのジャングルを案内してくれた虫とりの達人と。手に持っているのは巨大ナナフシ

 

先住民とふれあう

 

 キャメロンハイランドから車で2時間ほどの、先住民族が住む村にも行きました。

 

 小さい子どもがいたので、日本のお菓子をあげたら喜んでくれました。

 

 ここでは、吹き矢を体験しました。昔は吹き矢でサルをしとめて食べていたそうです。わたしは、短い距離をとばすのがやっと。木の上のサルをしとめるのは、達人技です。人間も昔はこうして、生きるために必要な命をいただいていたんだ……。

 

国蝶の集団を発見

 

 マレーシアの西側にある町・タパーのジャングルでは、青色のきれいなトビナナフシを見つけました。水辺では、100頭以上のアカエリトリバネアゲハを発見! チョウたちは夢中で吸水しているので、網がなくても、手でかんたんにつかまえることができます。図鑑で見ていた場面が目の前に広がっている、まさに楽園です。達人といっしょにとったチョウをここに逃がすと、喜んでクルクルと舞っていました。

 

 

キャメロンハイランドから車で2時間。先住民族のいる村の子どもたちと

 

先住民族のいる村では吹き矢を体験しました

 

 

虫や現地の人、みんな幸せそう

 

花の女王を探しに

 

 次の日、世界最大の花の女王・ラフレシアを見に行くツアーに参加しました。

 

 むかえの車は、いかにも冒険の気分が高まりそうな空色の小型自動車・ジープ。席に座ると、何か妙なのです。

 

 そこは荷物をのせる荷台で、かんたんなベンチが窓側に取り付けられているのでした。幅のせまいベンチで、おしりが半分しか乗っからない! 止まるときには「キィ〜〜」という、ものすごい音がひびきわたる……(ガイドさんによると、これはブレーキの汽笛)。 そのジープでガイドさんがビュンビュンとばすので、はげしい揺れで、わたしは頭を天井にぶつけそうになるわ、床では水のボトルがゴロンゴロン転がるわ、荷物はすっちゃかめっちゃか! とくにオフロードは、すさまじい迫力でした。

 

 2人のガイドさんをふくめ8人の参加者が、助け合いながら、がけを下り、飛び石の川をわたり、岩をのぼり、木の茂みをくぐり……。くつなんてあっという間に泥まみれになりました。

 

 

ラフレシアはわたしと同じくらいの大きさです

 

 

 大好きな虫がいそうなのに、足をふみ外すと谷をどこまでも転がっていくのだと思うと、虫すら探せない! それでも、ハンサムな青と緑のカミキリムシを見つけ、モロッコ人のお兄さんに教えてあげたら、喜んで写真を撮っていました。

 

 すると、前の方から拍手と歓声が聞こえました。思わずかけ出すと、
「あったぁ〜〜〜!」。立派なラフレシアが女王の風格をただよわせて咲いていました。ラフレシアが「よく来たじゃないの」と言ってくれているようでした。

 

 においはせず、色あざやかで、迫力の存在感をかもしだしていました。
すばらしい感動の後、帰り道に母は腕と足をヒルにかまれ、血まみれになります。ガイドさんがナイフで取ってくれました。そこでの発見は、ヒルは痛みも与えずしのび寄るということ。あー怖い!

 

 

ラフレシアを見に行く道中で見つけたカミキリムシの仲間

 

 

みんなありがとう

 

 キャメロンハイランドには、おもしろい虫がたくさんいます。その虫たちを育む美しいジャングルがあります。現地の人たちは、みんなとても幸せそうでした。

 

 わたしたち日本人は、どうだろう……。せっかく地球に生まれてこられたのだから、人間もいばらずに、虫や動物、植物、魚……みんなの知恵を借りて、仲よく暮らしていけたら幸せだなと思います。
言葉がわからなくても、虫が好きな人とは心が通じ合えました。母が痛い目にあうなどハプニングもありましたが、最高に楽しい旅でした。

 

 マレーシアの生き物たち、ありがとう。

 

■ 『アブライモモムシ』 前編へ

■ 『アブライモモムシ』 後編へ

 

ページの先頭へ