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2017年2月20日付
今春の中学入試では受験生の思考力や表現力をみることに主眼をおいた出題がぐんと増えました。首都圏を中心に、こうした入試を新たにとり入れる学校も急増しています。2020年度からの「大学入試改革」=メモを見てね=を視野に入れ、いろいろなタイプの受験生を受け入れたいという考えがあるようです。(編集委員・大島淳一、沢辺雅俊)
「くらし」というテーマにそって、受験校の図書館を利用してリポートを完成させる――。東京・工学院大学附属中が実施した「思考力テスト」です。時間は90分。出題にあたる「ステージ」が問題冊子1ページごとにもりこまれています。
ステージ1は「くらし」に関係があることや、言葉から連想することを自由に記述。ステージ2では記述した内容に関連する情報を集めるための本を図書館でさがして、表にまとめます。ステージ3は「くらし」と照らしあわせて日ごろから感じている課題を書き出し、ステージ4でその中から特に関心があること、重要だと思うことをひとつにしぼり、さらに知りたいことを書き出します。こうしたプロセスをステージ6までふんでリポートにまとめます。
知識はもちろん、受験生のものの見方が解答に生かされるのが特徴。課題を解くために必要な情報(本)をとらえることができるか、集めた情報をもとに自分の考えをまとめて、わかりやすく伝えることができるかどうかが問われる入試といえそうです。
こうした「思考力型」「適性検査型」などと呼ばれる入試は、図や表、写真とともに長めの文章を読みこみ、自分の考えを記述するというタイプが主流。国語、算数、理科、社会といった教科の枠にとらわれない出題です。
ユニークさで目を引くのが東京・聖学院中の「思考力ものづくり入試」。ブロックの「レゴ」で自分の好きなことを作品として表現したうえで150字で記述させ、さらに世界がかかえる問題の解決法などを考えさせました。「表現力」「読解力」「ものづくり」「アイデア」などの観点から評価しました。
中学入試向けの模擬試験を実施する首都圏模試センター(東京都)によると、今春の入試でこうした試験を首都圏で実施した学校は120校。16年度は86校、15年度は53校でした。同センターの北一成さんは「以前は生徒の募集に苦しむ学校が『苦肉の策』で実施していたが、徐々にレベルの高い学校や人気校にも広がっている」。
もともとは公立中高一貫校をめざす子たちが「併願校」として選べるよう、私立中でも公立の適性検査に似た問題を出したのが始まりとされます。兵庫・親和中が今春からとり入れた適性検査による入試も、国立の神戸大学附属中等教育学校との併願を見こんだ面があるようです。
新しいタイプの入試を導入した理由として学校側が挙げるのは、グローバル化などの「世の中の変化」です。実際には、大学入試改革で、求められる力がかわることも背景にあるとみられます。
北さんは「塾通いをしていない子でもチャレンジできる入試が増えている。考えることが好きだったり、世の中の動きなどに関心があったりする子にも『受験』という選択肢が広がっている」と話しています。
「大学入試センター試験」が、いまの中学2年生が受ける2020年度から「大学入学希望者学力評価テスト」(仮の名前)にかわります。国語と数学で記述式が導入され、結果は1点刻みではなく段階別に示す見こみ。英語では「話す」「書く」能力を測るため、英検やTEAPなど外部の資格・検定試験を使う案が出ています。
▽大妻中野中(東京)「新思考力」
▽かえつ有明中(東京)「思考力」「アクティブラーニング 思考力特待」
▽カリタス女子中(神奈川)「新3科型」
▽光塩女子学院中等科(東京)「総合型」
▽香里ヌヴェール学院中(大阪)「思考力」
▽品川女子学院中等部(東京)「4科目・表現力総合型」
▽東洋大学京北中(東京)「『哲学教育』思考・表現力」
▽宝仙学園中理数インター(東京)「公立一貫対応」
記事の一部は朝日新聞社の提供です。