股またのぞき　イグ・ノーベル賞しょう受じゅ賞しょう　東ひがし山やま篤あつ規きさん

目めの錯さっ覚かくは見みる姿し勢せいにある

　人ひと々びとを笑わらわせ、考かんがえさせた研けん究きゅうや業ぎょう績せきにおくられるのが、イグ・ノーベル賞しょうです。今こ年とし、知ち覚かく賞しょうを受じゅ賞しょうした立りつ命めい館かん大だい学がく（京きょう都と市し）教きょう授じゅの東ひがし山やま篤あつ規きさん（65歳さい）が9月29日、朝あさ小しょうのインタビューに答こたえました。前まえかがみになって股またの間あいだからものを逆さかさに見みる「股またのぞき」では、実じっ際さいより小ちいさく見みえるという研けん究きゅう成せい果かについてユーモアをまじえて解かい説せつしました。（中なか塚つか慧けい、寺てら村むら貴たか彰あき）

研けん究きゅうは楽たのしく／次つぎは宇う宙ちゅうで

　大おお阪さか大だい学がく教きょう授じゅの足あ立だち浩こう平へいさんと共きょう同どう受じゅ賞しょうしたのは、「股またのぞき効こう果か」の研けん究きゅうです。股またのぞきで見みると、遠とおくのものが実じっ際さいより小ちいさく手て前まえにあるように感かんじることを実じっ験けんで確たしかめ、2006年に論ろん文ぶんを発はっ表ぴょうしました。
　人にん間げんは目めの錯さっ覚かくで、同おなじ長ながさでも「たて」のものは「横よこ」のものよりも長ながく見みえます。「垂すい直ちょく水すい平へい錯さく視し」といいます。東ひがし山やまさんはこの錯さっ覚かくが、横よこたわる姿し勢せいだとなくなることに気きがつきました。「姿し勢せいによって見みえ方かたは変かわる」と考かんがえ、股またのぞきに注ちゅう目もくしました。
　なぜ、股またのぞきに？　日本三さん景けいの一つ、京きょう都と府ふの「天あまの橋はし立だて」では、股またのぞきをして景け色しきの変へん化かを楽たのしむ風ふう習しゅうがあります。「関かん西さいでは有ゆう名めいな話はなし。そこから自し然ぜんとアイデアがうかびました」
　学がく生せい計けい90人にんに、股またのぞきやふつうの姿し勢せいで、はなれた位い置ちに置おいた目め印じるし（三さん角かく形けいの板いた）の見みかけの大おおきさや距きょ離りを当あててもらう実じっ験けんをくり返かえしました。45メートルはなれた地ち点てんから股またのぞきで見みると、高たかさ162センチの板いたが平へい均きんで80センチほどに見みえる結けっ果かでした。ふつうの姿し勢せいではこうしたちがいはありません。体からだを曲まげ、視し野やの上じょう下げも逆さかさまになると姿し勢せいが大おおきく変かわるため、目めの錯さっ覚かくが起おきるようです。
　研けん究きゅうは、どう役やくに立たつのでしょう。「何なにかに役やく立だつと思おもって、研けん究きゅうはしていません。楽たのしんでやることが一いち番ばん」といいます。子こどもたちにも「楽たのしくサイエンス（科か学がく）を学まなんで。それが学まなびの本ほん質しつです」とメッセージを送おくります。
　東ひがし山やまさんがいま気きにかけているのは、重じゅう力りょくとの関かん係けいです。股またのぞきは体からだを曲まげるため、ふつうの姿し勢せいと重じゅう力りょくを感かんじる方ほう向こうが変かわります。「股またのぞき効こう果かと関かん係けいがある可か能のう性せいがある。いつか、無む重じゅう力りょくの宇う宙ちゅうで実じっ験けんしたい」
　受じゅ賞しょう後ご、ユーモアあふれる川せん柳りゅうをよみました。「イグ・ノーベル　ノーベルまでの　命いのちかな」。本ほん家け、ノーベル賞しょうの発はっ表ぴょうは3日から始はじまり、日本人じん受じゅ賞しょう者しゃが出でたら自じ分ぶんに対たいする注ちゅう目もくもなくなるという意い味みです。

日本人じん、10年ねん連れん続ぞくで受じゅ賞しょう

　イグ・ノーベル賞しょう　変かわった研けん究きゅうを紹しょう介かいする科か学がく雑ざっ誌しの編へん集しゅう者しゃが1991年につくりました。アメリカ・ハーバード大だい学がくで毎まい年とし秋あきに授じゅ賞しょう式しきが行おこなわれます。
　今こ年としは、東ひがし山やまさんのほかに「白はく馬ばがアブに刺さされにくい理り由ゆうとトンボが黒くろい墓はか石いしに引ひきつけられる理り由ゆう」（物ぶつ理り学がく賞しょう）、「右みぎ腕うでがかゆいとき、鏡かがみを見みながら左ひだり腕うでをかくと、脳のうがだまされてかゆみが止とまる方ほう法ほう」（医い学がく賞しょう）などが受じゅ賞しょうしました。
　日本人じんの受じゅ賞しょうは、今こ年としで10年ねん連れん続ぞくです。なぜ日本人じんがこんなに多おおいんでしょうか？　イギリスやフランスで指し導どう経けい験けんのある早わ稲せ田だ大だい学がく名めい誉よ教きょう授じゅの竜たつ田た邦くに明あきさん（75歳さい）は「同おなじ実じっ験けんを何なん度どもくり返かえせるねばり強づよさ、細こまかいところを見みのがさずに分ぶん析せきできる繊せん細さいさが、ユニークな発はっ想そうを生うみ出だしているのかもしれない」と話はなします。

イラスト・ふじわらのりこ

記者会見を開き、受賞報告をする東山篤規さん＝9月29日、京都市の立命館大学