長なが崎さき出しゅっ身しん、イギリスの小しょう説せつ家か

　スウェーデン・アカデミーは5日、2017年のノーベル文ぶん学がく賞しょうを長なが崎さき出しゅっ身しんのイギリス（英えい国こく）の小しょう説せつ家か、カズオ・イシグロさん（62歳さい）に授じゅ与よすると発はっ表ぴょうしました。作さっ家かの原げん点てんは、9歳さいの時ときに夢む中ちゅうになった「シャーロック・ホームズ」シリーズ。40以い上じょうの言げん語ごに訳やくされる人にん気き作さっ家かで、作さく品ひんは日本でもドラマ化かされました。（前まえ田だ奈な津つ子こ、岩いわ本もと尚なお子こ、猪い野の元もと健たけし）

9歳さいでシャーロック・ホームズに夢む中ちゅう

　イシグロさんは記き憶おくや生せい命めいなど人にん間げんの存そん在ざいにかかわるテーマをえがき、ミステリーやＳエスＦエフを取とりこむなど作さく風ふうは一作さくごとに変かわります。「人ひとと世せ界かいのつながりという幻げん想そうの下もとに口くちを開あけた暗くらく深ふかいところを、感かん情じょう豊ゆたかにうったえる作さく品ひん群ぐんで暴あばいてきた」と評ひょう価かされました。
　イシグロさんは受じゅ賞しょうについて「不ふ安あん定ていなこの時じ代だいの、善ぜん意いや平へい和わの力ちからを勇ゆう気きづける小ちいさな方ほう法ほうになれば」と話はなしました。
　イシグロさんは1954年、長なが崎さき市し生うまれ。日本名めいは石いし黒ぐろ一かず雄お。5歳さいの時とき、海かい洋よう学がく者しゃの父ちちの仕し事ごとのため家か族ぞくで英えい国こくに移うつり住すみ、83年に英えい国こく籍せきを取とりました。日本語ごは片かた言ことしか話はなせませんが、「ものの見み方かたや世せ界かい観かんなどは日本の影えい響きょうを受うけている」と話はなします。
　82年の長ちょう編へんデビュー作さく「遠とおい山やまなみの光ひかり」で、英えい国こく王おう立りつ文ぶん学がく協きょう会かい賞しょうを受じゅ賞しょう。名なを世せ界かいに広ひろめたのは、英えい国こくで最もっとも権けん威いあるブッカー賞しょうを受うけた「日ひの名な残ごり」（89年）です。英えい国こくを代だい表ひょうする作さっ家かになりました。
　2005年の「わたしを離はなさないで」は、臓ぞう器き提てい供きょうのためにクローン技ぎ術じゅつで生うまれた若わか者ものを主しゅ人じん公こうにし、大おおきな反はん響きょうを呼よびました。英えい国こくで約やく120万まん部ぶ、日本では約やく50万まん部ぶの大だいヒットでテレビドラマなどになりました。
　原げん点てんは、母ははが日本語ごで読よんでくれたコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズです。10代だい後こう半はんに英えい国こくの作さっ家かブロンテの小しょう説せつ「ジェーン・エア」を読よみ、作さっ家かになる可か能のう性せいを感かんじたそうです。
　賞しょう金きんは900万まんスウェーデンクローナ（約やく1億おく2500万まん円えん）。授じゅ賞しょう式しきは12月10日にストックホルムであります。

やさしく心こころ配くばりできる人ひと

　イシグロさんの作さく品ひんの日本語ご版ばんを出しゅっ版ぱんしている早はや川かわ書しょ房ぼう（東とう京きょう都と千ち代よ田だ区く）の担たん当とう編へん集しゅう者しゃ、山やま口ぐち晶あきらさんはイシグロさんの作さく品ひんの魅み力りょくについて「深ふかいテーマを取とり上あげているのですが、物もの語がたりとしても興きょう味み深ぶかく心こころに残のこるところ」といいます。
　イシグロさんの人ひと柄がらは、やさしく、心こころ配くばりのできる人ひとといいます。取しゅ材ざいを受うける仕し事ごとが一いち日にち中じゅう続つづいても「つかれていない？」と声こえをかけてくれて、自じ分ぶんのことより周まわりを思おもいやるそうです。
　同どう社しゃ社しゃ長ちょうの早はや川かわ浩ひろしさんは、イシグロさんとは家か族ぞくぐるみの付つき合あい。イシグロさんには成せい人じんした娘むすめがいて、父ちち親おやと同おなじ作さっ家かを目め指ざしているといいます。「親おや子こで作さっ家かとして活かつ躍やくしてほしい」
　イシグロさんは、映えい画がも好すきで、黒くろ澤さわ明あきら監かん督とく作さく品ひんなどを楽たのしんでいるそうです。

読よむほどに考かんがえが深ふかまる　元もと朝あさ小しょう読どく者しゃ

　元もと朝あさ小しょう読どく者しゃの中ちゅう学がく1年ねん生せいは、小しょう学がく6年ねん生せいのときにドラマをきっかけに「わたしを離はなさないで」を読よみました。むずかしい部ぶ分ぶんはあったけれど、どんどん読よめたといいます。
　自じ分ぶんの命いのちが長ながくないと知しった若わか者ものたちが、「死しに向むかって進すすむのか」「生いきることを大だい事じにするのか」、それぞれの選せん択たくがえがかれます。
　「メッセージを受うけ取とろうとすればするほど、考かんがえが深ふかまったり学まなんだりできる。すごいな、と思おもいました」。部ぶ活かつなどでいそがしくなったからこそ、生いき方かたについて考かんがえるのが大だい事じだと感かんじています。「この機き会かいにもう一いち度ど、読よんでみます」