- 毎日発行/8ページ
- 月ぎめ1,769円(税込み)
←2020年3月16日以前からクレジット決済で現在も購読中の方のログインはこちら
2016年4月9日付
ケン ミャンマーで新しい大統領が誕生したんだってね。有名なスーチーさんでしょ?
五十嵐記者 いや、スーチーさんと一緒に民主化運動をしてきたティンチョーさんなんだ。軍が長く政治を支配してきたミャンマーで、軍出身ではない大統領が誕生したのは約50年ぶりだよ。
ジャン 民主的な国になるのね。
五十嵐記者 そのためには、取り組まなければいけない問題がたくさんあるんだ。
ポン ミャンマーってどんな国?
――ミャンマーは1948年にイギリスの植民地から民主主義国として独立した。でも政治が混乱し、62年にクーデターで軍が実権を握る社会主義政権ができた。88年に民主化を求めるデモが盛り上がったけど弾圧され、軍事政権が始まった。
言論の自由はなく、出版物は政府が検閲でチェックし、許可がないと出せなかった。政権に反対する人たちは政治犯としてとらえられた。一方、軍の幹部や軍とつながる企業家は経済的な利益や権利を独り占めにした。独立直後は東南アジアで最も豊かだと言われたのに、最貧国になった。
ジャン スーチーさんはなにをしてきたの?
――独立の英雄アウンサン将軍の長女のスーチーさんは国民民主連盟(NLD)の党首。軍政に反対し続け計15年間、自宅にとじこめられた。91年にノーベル平和賞を受賞。国民の尊敬を集め、国際社会も軍政に経済制裁などで圧力をかけた。
ケン 変化はあった?
――軍政は2011年にテインセイン大統領に権力をゆずった。テインセインさんは検閲をやめ、政治犯を釈放した。しかし、もともと軍政の幹部だった人。国会の4分の1の議席を軍に割り当て、副大統領や国防など3大臣も軍が決めるといった、軍が政治に関わる仕組みは変えなかった。
ポン みんながまんしてたのかな。
――去年11月の総選挙で、軍の支配にうんざりしていた国民の支持を受けてNLDが大勝した。スーチーさんは夫(故人)と息子がイギリス国籍のため、軍政のもとで定められた憲法の決まりで大統領になれないので、代わりにティンチョーさんが大統領になった。スーチーさんは新しい「国家顧問」について、実質的に政権を引っ張る。
ケン 民主的な国になるのはむずかしいの?
――NLDはいまの憲法を改正して民主化をさらに進める方針だけど、立ちはだかるのが軍だ。改正には軍の同意が必要な決まりになっているけど、軍が自分たちに有利な仕組みをそう簡単に手放しそうにない。
また、政府によると大小135の民族がいるとされ、少数民族が自治を求める争いも続いている。近年は多数派の仏教徒とイスラム教徒が衝突し、死傷者も出ている。民族や宗教の問題のかじ取りも難しい。経済を立て直し、貧しい人の生活をよくすることも必要だ。
ジャン 私たちはお手伝いできないのかな。
――日本企業は民主化が進むミャンマーでビジネスができる、と期待している。日本としては、民主主義を根付かせるためにも、こうした課題の解決に向けて国も民間企業も支援していく必要がありそうだ。
大統領就任式のため議場に向かうティンチョー新大統領(左)とアウンサンスーチーさん=3月30日、ミャンマー・ネピドー
どちらも(C)朝日新聞社
大統領就任のための宣誓をするティンチョーさん(中央)と副大統領ら
解説
五十嵐誠記者
朝日新聞ヤンゴン支局長
記事の一部は朝日新聞社の提供です。