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2018年12月15日付
ジャン 安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が最近会談したよね。何について話し合ったの?
竹下記者 日本が長年返してくれるように求めている「北方領土」をめぐって、11月14日に会談したよ。1956年に結んだ「日ソ共同宣言」にもとづいて、日本とロシアの間の平和条約が結べるように、話し合いを加速していくことで意見がまとまった。
ケン これまでの話し合いとどう違うのかな?
竹下記者 日本政府は北方領土の4島をまとめて引き渡すように求めていたけれど、2島を先にすることを重点に交渉する方針に変えたんだ。
ポン 北方領土はどんなところ?
――北海道根室市の先にある歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の4島を指す。4島の合計面積は約5千平方キロあり、福岡県とほぼ同じ広さだ。日本はロシアより早く北方四島の存在を知り、日本人が住んでいたよ。
ところが、1945年8月、ソビエト連邦(ソ連、主に今のロシア)は日本が第2次世界大戦に敗れた後、北方四島を占領した。4島に住んでいた日本人約1万7千人は強制的に退去させられた。このため、日本政府は「不法占拠された」という立場をとってきた。
ケン 4島がどちらのものか対立しているね。
――そうなんだ。その後、両国は平和条約を結ぼうと交渉したが、国後と択捉の2島については意見がまとまらなかった。代わりに、戦争状態の終了や国交の回復などを定めた「日ソ共同宣言」に署名。宣言では、平和条約を結ぶための交渉は続け、歯舞と色丹の2島については、条約を結んだ後に日本に引き渡すことになった。
安倍さんとプーチンさんは、この宣言をもとに平和条約交渉に臨むことになるが、簡単ではない。
ジャン どうして?
――プーチンさんは合意した翌日の記者会見で、日ソ共同宣言について「2島が誰の主権下に残るかも述べられていない」と語った。仮に日本に歯舞と色丹の2島を引き渡したとしても、日本が統治する「主権」を認めるかどうかわからないということだ。
引き渡されても、日本が統治できなければ意味がない。菅義偉官房長官は11月16日の記者会見で「歯舞群島および色丹島が返還されれば当然、日本の主権も確認される」と反論した。
ケン ロシアと日本で考えが異なるね。
――課題は他にもある。日本はあくまで「4島」の返還を求めてきた経緯がある。実際、1993年に出した両国による「東京宣言」では、4島すべてについて、どちらの国の領土かを解決し、平和条約を結ぶ考えが記されている。
ジャン 国後、択捉の2島はどうなるのかな?
――安倍さんとプーチンさんが交渉の基礎にするとした日ソ共同宣言は、両国の議会が承認した法的な拘束力がある。宣言に書かれているのは歯舞と、色丹だけで、残り2島の返還を実現するのはさらに難しいというのが一般的な見方だ。
安倍政権は、まずは歯舞、色丹の2島の返還を確実にすることを軸に進めようとしている。
ケン 交渉はうまく進みそう?
――安倍さんは来年1月にロシアを訪問。6月にはプーチンさんが大阪で開かれる主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて来日することから、その際の会談で平和条約の締結について大筋合意をめざすとみられている。
1956年10月 日ソ共同宣言
平和条約締結後に
歯舞・色丹島を日本に引き渡す
1993年10月 東京宣言
四島を交渉対象に
1997年11月 クラスノヤルスク合意
2000年までに平和条約を締結するよう努力
2001年3月 イルクーツク声明
日ソ共同宣言が交渉の出発点と確認
2016年12月
北方四島での「共同経済活動」協議入りで合意
2018年11月
日ソ共同宣言を基礎に平和条約を結ぶ交渉をすすめることで合意
記事の一部は朝日新聞社の提供です。