大阪市の橋下徹市長（４２）のことがニュースで頻繁に取り上げられています。国のことを決める国会議員より存在感がありそうですが、どうして一市長にこれだけ注目が集まっているのでしょう。いったいどんな人なのでしょうか。

注目の大きい橋下徹大阪市長の会見には、たくさんの報道陣が集まります＝今年２月、大阪市役所で撮影©朝日新聞社

Ｑ　最近、国会見学に行った親類から、橋下さんをパッケージにしたお菓子をお土産にもらったよ。
Ａ　ああ、４月に発売されたクリームサンドだね。野田佳彦首相のお菓子の隣に置いてあるよ。お土産屋によると、国会議員以外をパッケージにしたお菓子を国会内で売るのは、初めてみたいだね。

Ｑ　全国に大勢市長はいるのに、なんで橋下さんだけ注目されるの？
Ａ　国が決めることに影響力を持ち始めているからだ。野田首相をはじめ政府の人たちは、橋下さんが何を言うか、とにかく気にしている。
　 大阪の市長だけど近畿地方を中心に人気があるんだ。大阪市議会議員や大阪府議会議員を中心とするグループ「大阪維新の会」は橋下さんが立ち上げ、次の衆院選で候補者を出す予定だ。３月には候補者養成の「維新政治塾」もつくった。朝日新聞が近畿２府４県を対象として行った世論調査では、維新の会に「国会に影響力を持つ議席を取ってほしい」と答えた人が55％もいたよ。

Ｑ　橋下さんのどういうところが人気なの？
Ａ　国や自治体の法律や制度を積極的に変えていこうとする姿勢が、期待感を生んでいるんじゃないかな。
　 若いし、話しっぷりも歯切れがよくてわかりやすい。また敵をつくり、公開の場で対決して支持を得るやり方を得意としている。
　 最近では関西電力の大飯原子力発電所（福井県おおい町）の再稼働に反対し、「民主党政権を倒すしかない」と言い切った。首相が短期間で代わり、参院では野党が多数を占める「ねじれ国会」で、国が物事を決定できない状態が続いている。その反動もあって橋下さんのリーダーシップへの期待が大きいんだ。

Ｑ　批判はないの？
Ａ　当然あるよ。過去には「政治に必要なのは独裁」と口にしたこともある。「ハシズム（橋下主義）」という言葉もできた。物事の決め方が強引だと批判するもので、ファシズム（独裁主義）とかけているんだね。
　 記者会見や70万人以上フォロワー（つぶやきを追いかけている人）がいるツイッターで、きつい言葉を使って容赦なく人を攻撃するから、「やりすぎだ」と眉をひそめる人も多い。

Ｑ　政治家になる前はどういう人だったの？
Ａ　まさに競争社会の申し子だ。北野高校（大阪市）時代はラグビーで全国大会に出場して高校日本代表候補にもなった。早稲田大学卒業後、すぐ司法試験に合格し弁護士になった。
　 「茶髪にサングラス」スタイルでタレントとしても成功、年収は３億円もあったそうだよ。また２００８年に38歳という若さで大阪府知事になり去年は市長選でも勝った。そういう経験から「自主・自立・努力」を重んじるんだ。

Ｑ　いつかは首相になるのかな。
Ａ　どうだろう。本人は国会議員にならないと言っている。ならなくても衆院選で維新の会が議席をたくさん取れば、国の政治への影響力はさらに大きくなる。
　 政治の世界は人気のある者になびいていくんだ。野党の自民党やみんなの党だけではなく、「倒す」と言われた民主党の偉い人たちも橋下さんと交流したがっている。知り合いになっておいたほうが後々得だと考えているんだね。

『週刊朝日』編集部 渡辺哲哉

　１９７３年生まれ。９９年から朝日新聞記者。 ２００４年に政治部。首相官邸や自民党、政権 交代後は民主党を担当。０７年〜０９年の大 阪社会部在籍時には、橋下徹府知事を取 材した。現在は『週刊朝日』の政治担当。

2012年5月13日