援助先から仲間へ、共に発展めざす
杉崎慎弥記者 朝日新聞国際報道部
ケン 神奈川県の横浜にアフリカのリーダーが集まって、話し合いをしていたね。
杉崎記者 1〜3日にアフリカ大陸の54か国のうち、51か国の首脳らがやって来た。
ポン なんで日本に来たの?
杉崎記者 日本が呼びかけて、国連や世界銀行などといっしょに開いたんだ。正式名称は「アフリカ開発会議」。英語の頭文字をつなぎ合わせて「TICAD」と呼ばれる。「T」はTOKYO(東京)のTだよ。
ジャン どんなことを話し合ったの?
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アフリカ開発会議の開会式を前に、エチオピアのハイレマリアム首相(前列左から3人目)と握手をかわす安倍晋三首相。日本とアフリカの国々とのかかわりなどを話し合いました=1日、神奈川県横浜市でどちらも©朝日新聞社 |
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好調な経済を反映して、タンザニアのダルエスサラームの中心部のあちこちで、高層ビルが建設されています |
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【サヘル地域】マリ、ニジェール、ナイジェリアなど、サハラ砂漠の南に帯状に広がる地域。農業や牧畜が行われていますが、砂漠化が進み、干ばつや飢えなどで苦しむ人がたくさんいます。 |
――1993年から5年ごとに開かれているから、今回で5回目だ。始まった時は、食べ物が足りなかったり、病気が広がっていたりしたため、アフリカを助けるためにどうしたらいいのかが中心テーマだった。
でも、アフリカが経済的にどんどん成長してきて、最近は日本との対等な関係が強調されている。援助先ではなく、一緒に仕事をする仲間として見なされるようになっているんだ。だから、会議のテーマも、貿易と投資を通じて、アフリカと日本がおたがいに利益になる形で成長しようという方向に変わってきた。
日本は今後5年間で3兆円以上出して、アフリカで仕事をする会社の支援や、会社が進出するためにインフラ(道路や水道、鉄道など)の基盤づくりなどを強化することになったよ。
ジャン 経済のことだけ話し合ったの?
――貿易と投資を増やすには、アフリカが平和で、政治的にも安定しなくてはならない。世界で平均年齢が最も低いアフリカで、若者が働けるようにすることや、女性が教育を受けられるようにすることも必要だ。
世界最大のサハラ砂漠の近くにある「サヘル」と呼ばれる地域は、働きたくても仕事がない若者がたくさんいる。不満を持った若者がテロリストの集団に入って治安を悪くしたり、外国人を攻撃したりしてしまう。
今年1月にはアルジェリアで、天然ガス施設がテロリストにおそわれて、日本人10人が殺される事件があった。アフリカで日本の会社が仕事をできるような環境づくりが必要なんだよ。
ケン アフリカの将来はどうなるのかな。
――現在約10億人いる人口は、2050年には20億人になると予想されている。石油やダイヤモンドなどが見つかっているけど、もっとたくさん取ろうと、世界中からお金が集まっている。でも、アフリカの成長は、天然資源にたよりすぎていて、近いうちに止まってしまうのでは、と心配する意見もある。
一部の国では、権力を持つ人が利益をひとり占めにする問題も起きていて、普通の人はその日の食べ物にもありつけない状況にある。サハラ砂漠より南の国に住む人たちの4分の1以上は栄養不良だといわれている。
ポン 次の18年も横浜で開くの?
――実はまだ決まっていない。「現地で会議をしたほうがいい」と、アフリカの首脳が考えているからだ。今後、話し合いになるだろうね。ただ、中国やほかの国も力をつけてきたアフリカと仲良くしたがっている。だから、簡単に断るとアフリカにそっぽを向かれてしまうかもしれない、と日本も気が気でないんだよ。
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