朝日小学生新聞 毎日発行 月ぎめ1,720円 ブランケット版(8ページ) 朝日小学生新聞

ニュースでジャンケンポン

  

予知難しい南海トラフ地震 どう備える?

 

 

1週間分の水や食料の備蓄が必要


黒沢大陸記者 (朝日新聞編集委員)

 

ケン 南海トラフの巨大地震は予知が難しいと聞いたよ。

 

黒沢記者 そもそも、もうすぐ地震が起きると予告するのは、今の科学技術ではきわめて難しいことなんだ。「地震は予知できない」と思って備える必要があるよ。

 

ポン 天気予報はできるのに、地震予知はなぜ難しいの。

 

 

 

1人あたりに必要な1週間分の食料、飲料水の例。水は500ミリリットルペットボトル42本、21リットル。食料は21食と栄養補助食品。このほかにカセットコンロや携帯用トイレなども必要©朝日新聞社

 

【南海トラフ巨大地震】駿河湾から九州東方沖にのびる海底のくぼみ(トラフ)で起きるおそれがある地震。政府は最悪のマグニチュード9.1の地震が起きると、21府県で震度6強以上の強いゆれ、8都県を20メートル以上の津波がおそうと想定している。

 

 

 

 ――天気は気象衛星や世界中の観測データを使ってコンピューターで計算して予報している。でも、地震が起きる地下の観測はほとんどできていなくて、予知するための技術もまだまだ未熟なんだ。いくつかの観測機器で東海地震の予知をめざす気象庁も「必ず予知できるわけではない」といっているよ。
最近、国は「南海トラフで巨大地震が起きる可能性は30年以内に60〜70%」と発表したけれど、具体的に「いつ起きる」という時期は示しておらず、「予知」ではなく「予測」と呼ばれている。


ジャン 予告もなく起きる大地震や大津波に、どう備えればいいの?


――どんな地震でも同じだけど、建物を地震に強くすること、家具が倒れないように固定すること、地震が起きたときに火事が起きないようにすること、海岸沿いではすぐに津波から避難することだ。これらを徹底するだけでも被害を大きく減らせるんだ。
阪神・淡路大震災では、多くの人が建物や家具の下敷きになって亡くなり、関東大震災では強風で火災が広がった。東日本大震災では大津波が広い範囲をおそった。この教訓を忘れてはいけない。


ケン 食料を1週間分、準備しておく必要があると聞いたよ。


――大規模な災害だと、道路や鉄道がこわれ、被災者も多いから、救援物資が届くまでに時間がかかる。南海トラフ巨大地震では、最悪で死者32万3千人、避難者数は950万人、被害額220兆円と想定されている。しばらくは地域で助け合って生きぬかなければならないことも考えられる。だから、備蓄の目安は3日分ともいわれるなか、南海トラフ対策では1週間分の水や食料などの備蓄が必要だと指摘されたんだ。

 

家族や先生と話し合っておこう

 

ポン いろんな心配があるんだね。


――大地震の時は、火事が同時にいくつも起き、道路も通りにくくなるから、いつものように消防車がすぐに来て消火してくれるわけではない。火災がどんどん広まることを考えて、自宅近くの避難場所やどうやって行くのかを確認しておこう。
家族と連絡が取れなくなることも多い。学校や通学途中では何が危ないのか、外出先で地震が起きたらどう避難するのか、家族や先生と話し合っておくことも大切だよ。エレベーターに閉じこめられたり、自動販売機が倒れてきたりするかもしれないからね。
学校や塾が家から遠ければ、地震の時に無理に帰ろうとせず、交通機関の復旧を待つことも考えておいたほうがいいね。


ジャン 大変な地震なのね。


――南海トラフの想定は、考えられる最大の地震が、悪いタイミングで起きた場合のことだ。次の地震がこんな巨大地震とは限らないから、あきらめないことが大切だ。
災害は自然が相手だから、被害想定やハザードマップ(災害予測図)があっても、次の地震がその通りに起きるとは限らない。身の回りで何が起きるかを想像し、その時にどうするのか、どう備えるかを考えておこう。マニュアルにとらわれず、いつも何が最善かを考えて、「必ず生き残るんだ」という強い意志を持って行動しよう。

 

 

過去の記事↓

◆トルコでなぜデモが起きているの?(2013年6月22日)

◆アフリカ開発会議で何を話したの?(2013年6月14日)

◆予知難しい南海トラフ地震 どう備える?(2013年6月9日)

2013年6月9日付

実際の紙面ではすべての漢字に読みがながついています。

pageTOPへ