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スポーツ界の体罰問題って?

 

 

指導の名で暴力…選手が声上げ調査へ


有田憲一記者 朝日新聞東京本社スポーツ部

 

ジャン 女子の柔道で体罰が問題になったね。どういうことなの?


有田記者 日本の「お家芸」ともいわれた柔道で、日本代表選手が監督やコーチになぐられたり、けられたりしていたことがわかったんだ。最近、大阪市のバスケットボールの強豪高校でも、体罰を受けた選手が自殺したばかり。スポーツ界全体の問題に広がっているね。

 

 

 

女子選手への暴力などを認め、謝罪する柔道女子代表の園田隆二前監督=1月31日、東京都文京区で©朝日新聞社

 

 

ケン 柔道での体罰って、具体的にはどういうものだったの?


――柔道の女子代表チームの監督が国際大会で「試合内容が悪い」などと怒りながら選手に平手打ちをくり返していた。胸をこづいたり、平手でほおを張ったり、けったり、棒でたたいたりもしていた。また「死ね」と暴言をはいたこともあったんだって。
そのことについて選手たち15人が去年12月、日本オリンピック委員会(JOC)に届け出たんだ。


ポン どうしてJOCに?


――もともと去年のロンドン・オリンピック(五輪)後に、監督の厳しい指導についておかしいという声が上がっていた。全日本柔道連盟(全柔連)もそんな声を聞いて事実も確認したんだけど、そのまま監督を続けさせることを決めたんだ。
「このままでは何も変わらない」と危機感を感じた選手たちが全柔連の上に立つ組織であるJOCにうったえ出たんだ。この中にはロンドン五輪のメダリストも入っているよ。


ジャン それでどうなったの?


――今年1月末にこれらのことが報道されたことを受け、監督やコーチが辞めた。全柔連は新たに調査委員会を立ち上げることを決めた。またJOCはうったえ出た選手たちに直接聞き取りをして、よりくわしい実態について調べる予定だ。
ただこれらはすべて、報道で世間の人が知ってから始めたこと。「対応がおそい」と批判がある。


ケン 柔道だけなのかな。


――大阪市立桜宮高校での体罰問題が明らかになった後、レスリングや野球の強豪校でも次々に体罰があったことがわかった。文部科学省は「指導の名の下に子どもを傷つけることをやめさせなければならない」と、しごきや、やり過ぎととられる反復練習などもふくめて、何が体罰になるかを、わかりやすく示すと宣言した。
今月、JOCがオリンピック競技の31の加盟団体に聞き取り調査をしたところ、すべてが「暴力などはなかった」と答えたというよ。


ジャン 2020年に東京で五輪を開こうとしているけど、何か影響はあるの?


――あるだろうね。国際オリンピック委員会(IOC)は暴力を一貫して否定している。国際柔道連盟も今回の件を批判したし、海外メディアは「20世紀初頭の軍隊的なやり方が残っている」と報道した。
文科省の幹部は「『日本のスポーツ界は暴力が横行している』と見られるのは非常にまずい」と話している。来月にはIOCの視察団も日本に来る。その直前の大きなマイナスイメージだ。


ケン でも暴力と厳しい指導って、区別が難しそうだね。


――「愛のムチ」などという言葉があるように、体罰はすでに日本の文化の一つに根付いてしまっている、という声がある。
でも、暴力で選手にいうことを聞かせるだけでは進歩がないよね。言葉でどうやって選手のやる気を起こさせ、努力させるか。指導者は考え、努力する必要があると思うよ。


 

過去の記事↓

◆北朝鮮の核実験ってどんなもの?(2013年2月23日)

◆スポーツ界の体罰問題って?(2013年2月16日)

◆税視聴率で番組人気をはかれるの?(2013年2月9日)

2013年2月16日付

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