大量消費、大量廃棄→環境への意識高まる

出典:朝日小学生新聞 2018年10月2日付

 生活のなかで身近に行われているごみの分別やリサイクル。今では当たり前ですが、国民全体が取り組み始めたのは平成になってからです。大量に消費し、大量に捨てていた時代を終え、環境への意識が高まった平成をふりかえります。(浴野朝香)

ごみの分別やリサイクル 「エコレンジャー」がエコ活動
 「ペットボトルのキャップを捨てずに集めると、どんなことに役立つと思いますか」。体育館に集まった児童にそう問いかけるのは、神奈川県厚木市立戸田小学校の「エコレンジャー」のメンバーです。

 エコレンジャーとは、学校全体で楽しく環境活動に取り組もうと、子どもたちが考えて作った5色のキャラクターです。

 緑を大切にするエコグリーン、電気をむだにしないエコイエロー、給食の食べ残しを減らすエコパープル、水を大切に使うエコブルー、学校の花だんを花いっぱいにするエコピンク。環境問題への意識を高めてもらおうと、環境や図書などの委員会の委員長がキャラクターをつとめ、学校行事の時に劇やクイズなどを披露します。

 キャラクターの効果もあり、同校ではすべての子どもたちがごみの分別やペットボトルのキャップの回収などに取り組んでいます。キャラクターを作ったのは2012年度ですが、同校ではそれ以前から子どもたちが中心となってエコ活動を続けてきました。

環境団体から認証
 これらの活動は、世界最大規模の環境団体「国際環境教育基金」が定めた環境活動の基準を満たしていると認められ、12年度に同団体から「グリーンフラッグ」という認証をあたえられました。認証は日本の小学校として3番目で、2年に1度の審査を通過し続けています。

 児童会の委員長でエコレンジャーのメンバーでもある6年生は「学校全体だけでなく、地域にもエコ活動を広げていきたい」と意気ごみます。

災害ごみなど問題 まだ山積み
 子どもたちには生活の一部になっているごみの分別やリサイクルですが、「ごみを減らすという意識が国全体に出てきたのは平成のはじめです」。そう話すのは、ごみ問題にくわしい東京大学大学院工学系研究科教授の森口祐一さんです。

 きっかけとなったのは、1991(平成3)年の廃棄物処理法の改正です。増えすぎたごみをうめ立てて処分する場所が足りなくなったことに国が危機感を持ち、法律が改正されました。ごみの量を減らすことと、リサイクルや分別を進めることが明記されました。

 92(平成4)年にブラジル・リオデジャネイロで開かれた地球サミットで「持続可能な開発」がうたわれたこともきっかけとなりました。

 森口さんによると、環境の問題は平成までは特定の人や場所の問題だと考えられていました。しかし、平成以降、日本、世界、地球全体の問題に広がりました。「平成の半ばにかけて法律やきまりなどが整備され、以後一人ひとりの意識に定着していったと言えるでしょう」

 環境省によると、1人が1日に出すごみの量は2000(平成12)年の1185グラムをピークに減り続けています。16(平成28)年は925グラムまで減りました。

 平成は終わりに近づいていますが、ごみの問題はなかなか解決していません。最近は5ミリ以下の小さなプラスチックのつぶ「マイクロプラスチック」が海を汚していて国際的な課題になっています。国内では災害が相次ぎ、大量の災害ごみの処分が問題になっています。

 森口さんは「環境問題を解決すればいいという時代は終わり、これからは環境をふくめ、災害などいろいろな問題を同時に解決していかなければならなくなるでしょう」と話しています。


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