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2010年2月
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二十四節気で季節を感じてみて
地球の公転1年「+6時間」 暦とのずれ

 

強い意志と人の優しさ 悪路越えて春

 

 春がそこまで来ていますね。季節の移り変わりを示すため、1年を24等分してそれぞれ名前を付けたものを「二十四節気」といいます。「○日ごろ」とされ、毎年決まった日ではありません。二十四節気の日付はどうやって決まるのでしょうか。


国立天文台が毎年2月1日、官報(国からのお知らせ)の「暦要項」で、翌年の祝日などとともに二十四節気を発表し、これをもとにカレンダーがつくられます。国立天文台が発表するのは、「国民の祝日に関する法律」で、祝日の「春分の日」と「秋分の日」は「天文学的な春分(秋分)を含む日」と定められているからです。


春分と秋分は、地球と太陽の位置で決まります。実際には、地球が太陽の周りを回っていますが、地球から見ると、太陽のほうが1年かけて1周していると見なすことができます。太陽の通り道を「黄道」といいます。地球の赤道を含む「赤道面」と黄道は2点で交わり、その交点のうちの一方が春分、もう一方が秋分です。二十四節気は、黄道を春分を基準に24等分して、15度ごとの地点を通過する日です。


二十四節気が「○日ごろ」とされるのは、暦の上での1年が365日なのに対し、地球が1周するには365日と約6時間かかり、毎年約6時間ずつ遅くなるためです。日付がずれることもあり、たとえば、今年の春分の日は3月21日ですが、去年は同20日。4年に1度のうるう年(1年が366日の年)で、4年ごとにほぼ同じ時刻に戻ります。


国立天文台天文情報センター暦計算室の片山真人室長は「暦を決めるために天文学が発達してきた歴史があります。みなさんが使っているカレンダーも太陽の位置をもとに決まっているんですよ」と話しています。


次の二十四節気は「啓蟄」で、今年は3月6日。地中で冬ごもりをしていた虫たちが、春が来たと動きだす頃です。


(2010年2月27日)


ヒッチハイクで試験会場へ
感動、感謝、見事合格

 

強い意志と人の優しさ 悪路越えて春

 

 全国的に高校入試のシーズンまっただ中ですが、決してあきらめないという強い意志と、通りがかりの人の善意によって、見事に第一志望校合格の栄冠を勝ち取った受験生がいます。埼玉県川越市立野田中学校3年の川口瑠美子さんです。川口さんは、受験会場にたどり着くまでに自ら体験したことを、本番の入試で作文につづりました。合格が決まった今、「私がふれた人の優しさを、周りの人にも分けてあげたい」と話しています。
川口さんは、日本航空高校石川(石川県輪島市)の推薦入試を受けるため、試験前日の1月16日、母親とともに同校に向かいました。中1の時、テレビの特集番組で航空自衛隊のアクロバットチーム「ブルーインパルス」を見てあこがれ、中2の頃にパイロットになるという夢を心に描きました。学費が高い私立高校には行かせられないと反対する両親を、教育ローンを借り卒業したら自分で返すからと説得し、パイロット専攻がある同校を受験することを最終的に決めました。
同校へのおよそ600(キ ロ)の道のりを、新幹線から夜行列車、バスに乗り継ぐ予定で母親と出発。しかし、途中のJR長岡駅(新潟県)で、乗り換える予定だった夜行列車が大雪で運休。午後11時半、母娘はホームでぼうぜんとしました。
「もう間に合わない」と泣きだす川口さんに、母は「絶対あきらめない!」と励まします。2人はヒッチハイクで向かうことを決意。関越自動車道の長岡インターチェンジでトラックに乗せてもらうことができ、翌日午前2時ごろ同県上越市に。しかし、車はほとんど走っていませんでした。
車を探して吹雪の中を歩き続けること2時間半。ガソリンスタンドで給油する大型トラックを見つけ、川口さんが声をかけました。「いいよ!」。東北から神戸に向かっていた運転手は、途中の金沢までの約束で乗せてくれました。40代くらいの「クマさんみたいな」体の大きな男性だったそうです。
午前6時、金沢にさしかかると、運転手は「よし、輪島まで行っちゃる!」とハンドルを切ります。
同校に着いたのは試験開始のわずか10分前の午前9時。会場に向かう川口さんに、運転手は「がんばれよ!」と大きな声で励ましてくれました。何度も連絡先を聞きましたが、「自分にも中3の娘がいるんだ。気持ちはよくわかる」とだけ言い残して去ったそうです。
推薦入試の作文の題は、「私が感動したこと」。川口さんは迷わず、ついさっきまでの出来事を書き進めました。受験に反対しながら真夜中のホームで懸命に励ましてくれた母、大雪の悪路を遠回りしてわざわざ送ってくれた運転手。「人の優しさにふれることができ、感動、感謝」と、眠気と闘いながら、時間ぎりぎりまで鉛筆を動かしました。3日後、合格通知が届きました。
恩人の運転手は、高校が捜し当て、合格したことを伝えると、「あー、良かった」と喜んでくれたそうです。この春から石川県で寮生活を始め、夢への一歩を踏み出す川口さん。伝えられなかった感謝の気持ちを手紙に書いて送ることにしています。


(2010年2月21日)


 

ハイチ地震から1カ月
立ち直ろうとする現地に何かしたい

 カリブ海の島国ハイチを襲った1月12日の大地震から1カ月。社会基盤の弱さや政治の不安定などから、大きな被害をもたらし、死者は23万人を超え、被害額は国内総生産(GDP、約70億(ド ル)、日本円で約6280億円)の6割にも上ると伝えられています。
 こうした中、各国や国連機関、ボランティア団体などが支援活動を続けています。国際協力機構(JICA)が派遣した国際緊急援助隊の医療チームは、首都ポルトープランスから40(キ ロ)ほど離れたレオガンで、1月18日から25日まで被災者の救援活動にあたり、延べ534人を診察しました。
 メンバーの一人、看護師の中井隆陽さんは「首都が機能しておらず、他の地域から医療の応援にかけつけてもらうことも難しい状態だった」。地震の直後はけがの手当てを求める患者が中心でしたが、後半からは、ストレスなどから下痢を訴えるなど、脱水症状の子どもたちも目立ったそうです。
 その一方で、「立ち直ろうと一生懸命になっている現地の人たちもたくさんいました。なんとか現状を変えていこうという力強さも感じた。日本からもハイチのことを見守り続けてほしい」と話します。
 ユニセフ(国連児童基金)もポルトープランスや南部の港町ジャクメルなどの被災地で、子どもたちの命を守る活動を展開。数千人が住まいを失ったジャクメルでは、国連世界食糧計画(WFP)と協力し、被災した子どもと家族のためにトウモロコシと大豆で作られた栄養補助食を配給。また、避難所では病気が流行する恐れがあることから、はしかやジフテリアなどの予防接種もしています。
 遠く離れていても、ハイチの人たちの役に立ちたいと取り組む日本の中学生もいます。京都市北区の西賀茂中学校生徒会の役員13人が1月下旬、地元の商店街などで募金を呼びかけました。
 同中生徒会はこれまでも国際貢献につなげるためのバザーなどを開催。「つらい思いをしている同じ年代の人たちのことを考えると、みんなで何かをしたいという気持ちが強くなりました。これからも、地震が多い日本としてできることがあると思います」と副会長の原田真琴さん(2年)。商店街の5カ所に置いた募金箱などの分と合わせてユニセフに送ることにしています。
 陸上自衛隊も国連平和維持活動(PKO)として、がれきの撤去や道路の補修など復興支援活動を進めています。


(2010年2月14日)

 

 

ダチョウ倶楽部・竜ちゃん 中学生向け「世渡り術」本出版
格好わるい自分をわかれば楽かもよ

 お笑いトリオ・ダチョウ倶楽部の上島竜兵さん(竜ちゃん)が、中学生向けの本を出しました。その名も「人生他力本願 誰かに頼りながら生きる49の方法」(河出書房新社)。「14歳の世渡り術」シリーズの最新刊で、全国の小中高校の図書室にも多めに配本されそうです。
 出版社から本を出さないかという話を受けた竜ちゃんは、「えっ、オレでいいの?」。過去このシリーズには、橋下徹大阪府知事、作家のあさのあつこさん、ジャーナリストの池上彰さんらが名を連ねます。「この中に芸人がいてもいいけど……オレ?」。何度も聞き直したそうです。
 本の中で、竜ちゃんは年齢と同じ49のメッセージを発します。一番伝えたかったことを聞くと、「すべて完ぺきなヤツはいないだろうし、いたらイヤでしょ? みんな情けないし、みっともないし、バカだし。そういうところがあると思うんです。反抗期もあり、思春期で恋愛もして、格好つけたがる頃だから、そういう部分を認めたくなかったりするけど、わかって生きていったらもっと楽になるんじゃない?って」。
 巻末には、7人の中学生との座談会が載っています。竜ちゃん自らが希望した企画です。最初はみんなおとなしかったのですが、「夢とか嫌な大人とか、親兄弟の話とかしてるうちにくだけてきて。ケータイやネットがあるとか文化の違いはあっても、根っこの部分に世代の差なんて感じませんでしたね」。ただ、「言いづらいことはメールで済ましちゃうとか、メールのほうが気持ちを伝えやすいとか、メールっていうのは便利なようであんまりよくないよね。だからネットいじめみたいなことが増えるんだと思う」とも。
 「メールより電話、電話より直接会って話すほうがいい。声色や顔色で、おんなじこと言ってても、コイツは敵意持ってるなとか、この人はオレのこと好きなんだなとかがわかる。大人になって商談ひとつ成立させるのも、メール1本電話1本じゃできない。子どものうちはなるべく使わずに人と接して、自然にそういうことを覚えていったほうがいい」
 恋愛の話にはあまり乗ってこなかった中学生ですが、いじめの話に一番「食いついた」そうです。竜ちゃん自身は中学生の時、「いじめがなかったかというとあったんだろうけど、最近聞くような陰湿なものはなかった。助けるやつもいたし、イヤならイヤで言うしかなかったんだよね」。
 「(座談会に)立ち会ってる先生の前で『こびへつらえ』とか『力のあるやつにくっついていけ』とか、そんな生き方教えてていいのかってのは、気になりましたね(笑)。でも、オレが言いたいのはそうじゃない。きれいごとばかりじゃなく、軽くこういう生き方もあっていいんじゃない?ってこと。決して恥ずかしいことじゃない。もっと恥ずかしいことと言ったら、人を裏切るとか、すごく傷つける嘘をつくとか、気持ちが汚れるってことだと思うんだよね」


(2010年2月7日)
 
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