今週のトピック バックナンバー
2009年12月
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12月23日 天皇誕生日に秘められた暗号
GHQ 天皇の戦争責任 暗に追及?
12月23日は天皇誕生日。クリスマス前の祝日は、街にもウキウキした気分が漂いますね。でも実はこの日は、「A級戦犯」の7人が処刑された日でもあります。
A級戦犯とは、第2次世界大戦後に開かれた極東国際軍事裁判(東京裁判)で、侵略戦争の計画者として「平和に対する罪」があるとされた人たちのこと。東条英機ら、軍人や政府首脳らを指します。1948年12月23日午前零時1分30秒に東条ら4人、残る3人に対しても零時20分に絞首刑が執り行われました。
天皇誕生日とA級戦犯の処刑日が同じ日なのは「単なる偶然ではない」というのが、作家・猪瀬直樹さん=写真=です。その理由として、今の天皇陛下の父・昭和天皇の誕生日である4月29日(現在は「昭和の日」)にA級戦犯が起訴されたこと(46年)、東京裁判が開廷した5月3日(46年)の翌年5月3日に新憲法「日本国憲法」が施行されたことなどを挙げます。「これらの日付の一致を暗号として読み解くべき」という猪瀬さんの読みは次のとおり。

GHQ(連合国軍最高指令官総司令部)のマッカーサーは、占領統治をスムーズにするため、(昭和)天皇の戦争責任を問わないことにした。天皇の罪を追及すると、武装蜂起する者などが現れ、占領のコスト(負担)が高くつく。そこで急いで1週間で、武装解除と天皇を象徴とすることを柱とした新憲法をつくった。A級戦犯の起訴日や処刑日を、天皇や皇太子(今の天皇)の誕生日にあえてぶつけたのは、「法律的には戦争責任は天皇にはありませんよ。でも実質的にありますよね。そこで実行責任者の東条らが、代わりに裁かれるんですよ」というメッセージが込められている……。

もっともマッカーサーや部下らはすでに亡くなっているので、真意は確かめようがありません。しかし「(日付や処刑時間という)結果を並べるだけでも必然性が見えてくる。状況証拠はそろった」と猪瀬さん。先月末に出版された『ジミーの誕生日』(文芸春秋)で、これらの謎を解明しています。ちなみにジミーとは、占領後、今の天皇陛下が学習院中等科1年のころ、アメリカ人英語教師につけられたニックネーム。同級生全員がアルファベット順にアダム、ビリー……とつけられました。
12月23日、4月29日、5月3日。クリスマス前の祝日やゴールデンウイークの連休に対し、私たちは単に「学校や会社が休みでラッキー」と思いがち。しかし、日常の中に、歴史を思い出すきっかけが染み込んでいます。
「『何で休みなんだろう』『何が起きたんだろう』と考えてみるだけでもいい。自分がどんな時代のどんな場所にいるのか、その座標軸を知ることにつながるのでは」と猪瀬さんは話しています。

(2009年12月20日)


プロテニス界を引退した杉山 愛さん
17年間ですべてやり尽くした
今年10月、プロテニス選手を引退した。「すべてやり尽くした。最高の17年間でした」と、さわやかだ。
4歳で初めてラケットを握った。ボールを追いかけるのが楽しくて、7歳で本格的に始めた。学校以外のほとんどの時間はテニスに費やした。
中学生の時は海外遠征で2週間近く学校に行けないこともあった。授業が受けられないことを心配したが、友人がいつも自分の分のノートを書き写し、助けてくれた。今もかけがえのない友人だ。
中学3年の時、18歳以下の選手が競う世界ジュニアランキングで日本人初の1位を手にした。高校2年生でプロになり、以来、相手を振り回す攻撃的なプレーで多くのファンを引きつけてきた。
いつも順調に見えたが、25歳の時、ボールの打ち方が分からなくなるほど進むべき方向が見えなくなった。強くなりたいという一心だけで突っ走ってきた自分とじっくりと向き合った時、「自分はプロだ。甘えていられない」と心底から思えた。精神的にも強くなり、28歳で世界大会(ダブルス)の頂点に。子どもの頃からの夢がかなった瞬間だった。
「今は少しテニスから離れたい」と言うが、今後、子どもたちにテニスを教えるのもやりたいことの一つだ。
「誰でもやりたいことはすぐには見つからないと思う。でも、必ず見つかる時期が来る。そのチャンスを絶対に逃さないように、いつもアンテナを張っていてほしい」とメッセージを送る。

(2009年12月13日)


感染症対策最前線で活躍
WHOメディカルオフィサー 進藤奈邦子さん
世界保健機関(WHO、本部スイス・ジュネーブ)のメディカルオフィサー(医師の資格を持つ医療専門職)として新型インフルエンザなど感染症の世界的な対策の最前線で活動している進藤奈邦子さんが11月下旬に一時帰国し、東京都内で講演しました。

進藤さんは都内の病院で医師として勤務した後、国立感染症研究所感染症情報センターを経て、2002年にWHOに派遣され、05年から正式な職員として感染症の世界的大流行(パンデミック)対策に取り組んでいます。
エジプトで今年4月、鳥インフルエンザの調査をしていた時に新型の豚インフル発生の知らせを受け、ジュネーブの本部に急きょ呼び戻されました。以来、感染が拡大しないよう、南半球の情報から北半球の対策を分析したり、各国が参考にする行動計画の策定にあたったりするなど多忙な日々を送っています。

講演の中で進藤さんは、「インフルは動物の間で広がって人間に感染するもの。本来なら、動物の健康管理にも取り組む必要があるが、WHOには力が及ばない。また、鳥や豚は食糧でもあるので、感染症の発生によって輸出できなくなることによる経済的な悪影響まで考えないといけない」などと、対策の難しさを指摘しました。
日本でも流行している新型インフルの予防については、今年5月に神戸市内で感染者が出たのを受けて、直後に同市内と大阪の学校計約5千校が臨時休校の措置を取る一方、神戸最大の祭典といわれる「神戸まつり」をいったん中止した対応などを例に挙げ、「やりすぎだという人もいましたが、そうではありません」。
進藤さんによると、6月上旬までに近畿地方で390人が感染しましたが、入院したり亡くなったりした人はいませんでした。同時期に同じような人口規模の米国ユタ州では、特に対策を取らなかったため、489人が感染して35人が入院、2人が死亡しています。
「夏の時期に多くの国では第1波の流行が起こりましたが、日本は神戸と大阪の素早い対応のおかげで下火でした。先進国の中では、日本くらいでした」
日本での公衆衛生に対する関心の高さは、@マスクをすることに抵抗がないA花粉を防げるような高機能のマスクがコンビニで簡単に手に入るBご飯の前に手を洗うことは当たり前−−などといったところにも表れているといいます。その上で進藤さんは、「感染症はウイルスが広がる前の対策が大切だということを、普段から知ってもらうことが大切です」と改めて強調しました。

(2009年12月5日)

 
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