「集団的自衛権」取り入れる
安倍晋三内閣が1日、憲法解釈を変え、集団的自衛権を取り入れると閣議で決め、直接攻撃されなくても、他の国のために日本の自衛隊が武力を使えるようになりました。戦後、日本が保ち続けた国を守るためのしくみが大きく変わろうとしています。
安倍政権、憲法解釈変える
●なぜ取り入れたの?
集団的自衛権とは、仲がよい同盟国が他の国に攻撃された時、自分の国が攻撃を受けていなくても、いっしょに反撃できる権利のことです=イラスト参照。安倍政権がこの権利を取り入れるべきだと考えた理由の一つは「日本を守る力を高めるため」です。
北朝鮮の核・ミサイル開発や、中国による日本の空や海への侵入など、日本のまわりでは最近、おだやかでない動きがあります。こうした動きを、同盟を組むアメリカ(米国)とおさえこもうとしています。
集団的自衛権が認められれば、米軍が他国に攻撃された時に日本の自衛隊が助けることができます。そうなれば、米国が日本をより大事な仲間とみてくれて、他国が日本を攻撃しにくくなるはず、と考えています。
●使えるのは日本のまわりだけ?
集団的自衛権をたてに、自衛隊が日本から遠くはなれた地域に出かけることができます。これまでも国連平和維持活動(PKO)などで海外に派遣されていますが、武器を使う可能性が高い任務は許されていません。
それが例えば、貿易船が使う航路に爆弾がしかけられた場合、それを取りのぞく活動に参加できるように変わります。
●これからどうなる?
集団的自衛権に関する方針は変わりましたが、行動するにはいくつかの手続きが必要です。
自衛隊法やPKO協力法など、日本の防衛活動に関わる法律を変えなければなりません。日米安全保障条約にもとづき、日米が防衛で協力するためのルールも改定が必要です。国会で話し合われることになります。
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閣議決定の直前、首相官邸前に集まったデモ隊=1日、東京都千代田区、今井尚撮影
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国民の合意とらずルール変更
朝日新聞論説委員
国分高史さんの話
今回、安倍政権は国民投票が必要な憲法改正ではなく、憲法解釈の変更により集団的自衛権を取り入れました。国民の合意をとらずに、国のかたちを定める重要なルールを変えたことになります。
政府は、日本を守るためだけに集団的自衛権を使うと言っています。しかし、自衛隊が他の国を守るために海外に出ることが認められるようになれば、同盟国からもっといろいろなことをするよう求められる可能性があります。これまでは「憲法で認められていない」と断ることができましたが、ルールが変わった以上、そうもいきません。
こうやって、自衛隊の活動がどんどん広がっていく可能性があるのです。
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