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もともと区別はなかったんだ
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男も女も「あなにやしえ(なんとすばらしい)」
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男女の差がなくなり、中性化しつつあるとされる言葉づかい。そもそも男の人と女の人が使う言葉はいつごろから分けられ、使われるようになったのでしょうか。なぜ、最近は差がなくなってきているのでしょうか。話し言葉の変化をたどってみましょう。
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| イラスト・たなかさゆり |
話し言葉はこうして変化した
鎌倉時代から「男は男らしく」
室町時代「女房詞」はぼかしの方法
明治時代になって婦人語「わたくし」
戦後、男女平等とともに差がなくなる
これからもおもしろい現象がみられそうだよ
「最近、若い女性の間では、『〜だわ』などといういい方はほぼなくなりつつあります。男女とも『〜だね』と使う方が圧倒的に多いでしょう」。こう話すのは、男の人と女の人の言葉づかいの歴史を長年研究している文教大学文学部(日本語教育)の元教授、遠藤織枝さん。「しかし、おどろくことではありません。実は、男の人が使う言葉と女の人が使う言葉という区別はもともとはなかったのです」
その証拠の一つとして、遠藤さんは、奈良時代に書かれた日本最古の書物「古事記」をあげます。その中で、男の神様、伊耶那岐命を見た女の神様、伊耶那美命が「あなにやしえをとこを(なんとすばらしい男性だろう)」といい、伊耶那美命を見た伊耶那岐命が「あなにやしえをとめを(なんとすばらしい女性だろう)」という場面があります。この言葉づかいには性差がまったく見られず、異なる部分は相手の性を指す「をとこ」「をとめ」だけです。
では、いつごろから区別されるようになったのでしょう。遠藤さんによると、区別がはっきりしてきたのは鎌倉時代から。鎌倉時代に男性である武士が中心の社会が確立し、「男は男らしく」「女は女らしく」という考え方が言葉づかいにもおよんできたのだそうです。女性には「優しく、直接的にいわずぼかして話すこと」が求められ、女性の言葉づかいが変化していきました。
室町時代の初めには、以後の女性の言葉の手本とされる「女房詞」が生まれます。天皇をはじめ宮中の人の世話をする女房と呼ばれる女性たちは、日常の言葉を直接表現することは、はしたないとされたので、さまざまなぼかしの方法を使いました。例えば、「〜もじ」という省略方法がありました。「はずかしい」とはいわずに、最初のはの字を取って「はもじ」、「髪の毛」とはいわずに、「かもじ」などです。野菜も野菜、とはいわずに野菜の色を取って「青物」と呼んでいました。
ただ、まだこうした言葉づかいは広まっておらず、庶民の言葉づかいには男女差はありませんでした。室町時代の終わりごろ、宮中にいた女房たちが公家や武士らと結婚して町中で暮らすようになり、それに合わせて一般の人々にも広がっていったのです。
明治時代になると「婦人語」と呼ばれる女性の言葉づかいも生まれます。「わたくし」「ございます」などのいい方が広まりました。教育制度が整い、みんなが学校に行くようになったこともあって、一般の男性と女性の言葉づかいのちがいがはっきりと表れるようになりました。
しかし、戦後、憲法で男女平等が保障されるようになってから、次第に言葉づかいの性差がなくなっているのだそうです。「男女の言葉づかいのちがいは、もともとあったものではなく、社会制度や教育の中で作られたもの。男女平等の世の中になると、当然、言葉づかいも中性化していきます。特に最近の教育では、『男の子だから……』『女の子だから……』といわなくなったので、言葉づかいの性差もなくなっているのです」と遠藤さん。
「『カレーライス、うまいね』と女の人が話すことは、本来の日本語の言葉づかいへの復帰ということ。男女の区別が強調されなかった時代の言葉づかいに戻っているという現象なのです。話し言葉は変わるので、歴史的に見れば、正しい基準はありません。これからもおもしろい現象が見られるでしょう」
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