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W杯がのこしたもの?

社会編;市川 博正記者(編集部)

ポン

アンニョンハセヨ!

市川記者

おっー。韓国語で「こんにちは」か。だれに教えてもらったの?

ケン

ぼくさ! 校長先生が教えてくれて、いま学校ではやっているんだ。

市川記者

サッカーのワールドカップ(W杯)をいっしょに開催したことで、韓国に親しみがわいたのかな。

ジャン

韓国だけじゃないわ。世界のいろいろな国のことばや国旗もおぼえたのよ。

市川記者

世界の国々を身近に感じられることも、W杯のよさだね。そうだ、きょうは日韓共催のW杯が、どんな「おみやげ」をのこしてくれたか、おさらいしてみようか。

近くて遠い韓国が「近い国」になった
国立競技場の大型スクリーンで、韓国チームをいっしょに応援する韓国と日本のサポーター=25日、東京都新宿区の国立競技場で

ケン W杯がのこしたおみやげ?

 ―1番にあげるなら、「近くて遠い国」といわれていた韓国が、本当に「近い国」になったことかな。

 ポン どういうこと?

 ―日本は第二次世界大戦中、朝鮮半島を植民地にして、いまの韓国や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の人たちを支配していた。日本の文化やことばをおしつけ、たくさんの民間人を殺したり、傷つけたりもした。当時を知っているお年よりばかりではなく、韓国の若い人たちの中にも日本のことをよく思っていない人が少なくないんだ。

 ジャン 歴史の教科書のことや小泉首相の靖国神社へのお参りに対して、韓国の人たちがおこったのも、そういう歴史があるからなのね。

 【歴史教科書問題】「新しい歴史教科書をつくる会」がつくった中学生向け歴史教科書の中に、「歴史をゆがめる内容がある」として、中国や韓国が反発した問題。
 【靖国神社】東京・九段にある神社。第2次大戦後の国際的な裁判で、戦争を中心になって進め、重い責任があるとされた人たち(A級戦犯)がまつられているため、アジアの国々は日本の政治家が参拝することに強く反発している。

 ―そう。歴史教科書の問題と小泉さんの靖国神社参拝の影響で、去年の夏は日韓の交流行事が次々に中止になった。

 ケン そうだったね。

 ―でも、W杯の共同開催によって、市民レベルでは交流が活発になってきている。日本と韓国の草の根交流を後押ししている国際交流基金(東京都港区)によると、日韓の交流事業の数は2000年が328件、去年は720件、ことしは年末までの予定もふくめ876件と着実にふえているそうだ。
 中止された交流もW杯の友好的なムードで再開され始めている。韓国の堤川市と交流をつづけている山形県戸沢村では、この夏、「こども親善交流大使」がこれまで通り行われ、小学生がたがいに訪問する予定だ。佐賀県肥前町でも、金海市とのサッカー交流などの復活が決まったというよ。

 ポン よかったね。

 ―国土交通省は、W杯観戦に海外から日本にきた人は約40万人とみている。日本がどんな国か、知ってもらうきっかけにもなっただろう。
 景気がわるくて元気がなかった日本の社会も、ちょっと活気づいた。ある民間の調査機関によると、「W杯の経済効果は3兆円をこえた」というよ。

 ケン すごーい!

 ―でも、宿題ものこった。試合をよびこむために、それぞれの都市が、ものすごい税金をつぎこんでつくったスタジアムを、これからどう生かしていくのか。施設をたもち、管理していくために、これからかかるお金もたいへんだ。
 海外でチケットが大量に売れのこったことも問題だ。売る仕組みをきちんとして、4年後のドイツ大会では、そんなことが起きないようにしてほしいな。

 ポン いつかW杯に出たいな。

 ――静岡県竜洋町の七夕まつりでは、「サッカー選手になりたい」という短冊がふえたというよ。W杯の一番の「おみやげ」は、子どもたちに大きな夢をあたえたことかもしれないね。

(2002年6月29日)


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