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●後期高齢者医療制度って?●

山田史比古記者(朝日新聞生活グループ)

 ジャン 「コウキコウレイシャ」の制度がけしからん、と近くに住むおじいさんがおこっていたよ。

 山田記者  後期高齢者医療制度のことだね。

 ポン どうしておこっているの。

 山田記者  75歳以上の約1300万人が入る新しい医療保険制度で、4月から始まったんだ。「後期」という名前が、「人生の後期」と言われているみたい、とおこっているお年寄りは多い。でも評判が悪いのは、それだけが理由じゃないんだ。

 

 
お年寄り増える社会支えようと開始
 
高齢者の負担が増す新制度
名称や説明不足に批判の声
政府「見直すが制度続ける」
 
年金から保険料が引かれるようになり、区役所の窓口に相談におとずれるお年寄り=四月十五日、大阪市西淀川区で

 ――後期高齢者医療制度は医療保険の一つ。普段から保険料をはらっておいて、いざ病気のときに少しのお金で治療を受けられるようにするしくみが医療保険だ。

 ケン ぼくも入ってるの?

 ――そうだよ。パパやママが会社員なら、会社の健康保険組合か、政府が運営する健康保険に入っている。みんなは面倒をみられている「扶養家族」としてパパやママと同じ保険に入っている。

 ジャン 会社員じゃなければ?

 ――公務員は共済組合という保険。それ以外の自営業の人やお年寄りは、市町村ごとにつくる国民健康保険に入っているんだ。

 ケン 仕事によって医療保険が変わるわけだね。

 ――そう。でもうまくいかなくなってきた。少子高齢化といって、日本は若い人が減って、お年寄りのしめる割合が増えている。会社員や公務員を年をとってやめた人も、国民健康保険に入る。そうすると、どんどん国民健康保険の人が増える。お年寄りは若い人より病気になりやすいから、医療費も多くかかる。健康保険組合などからもお金をお年寄りの医療費に回してきたんだ。

 ケン それが、何でうまくいかなくなったの。

 ――健康保険組合などが負担するお金が増えて、「これ以上はらいきれない」という不満が高まってきていた。何とかお年寄りの医療費を減らそう、という意見が強くなったんだ。お金のやりとりが複雑で分かりにくい、という声もあった。

 ポン それで、後期高齢者の制度をつくったの?

 ――そう。最も医療費がかかる75歳以上の人だけを切り離して、独立した保険制度を新しくつくった。新制度では、国民健康保険に入っていたお年寄りばかりではなく、子どもの扶養家族として保険料をはらっていなかったお年寄りからも保険料を集める。この制度は都道府県ごとに、お年寄りの医療費のうち一割を75歳以上の人がはらう保険料でまかなうんだ。だから、入院期間が長いなどで医療費がかかっている都道府県ほど保険料も高くなる。平均すると保険料は一人年間約7万円だ。

 ケン 何だか難しいなあ。それで何が問題なの?

 ――まずは名前。「後期高齢者」という言葉に反感を持つお年寄りが多い。政府はあわてて「長寿医療制度」という名前を考え出したけど、広まってないね。
 それと、新制度になって負担が増える人が少なくない。特に、今まで扶養家族だった人は保険料をはらっていなかったからね。
 そして、保険料は原則として、年金から自動的に引かれる「天引き」。年金がもらえない「消えた年金」問題が解決しないのに、保険料だけはきちんと天引きします、というのだから反発が強かった。保険料の計算ミスも続々と起きた。
 知らないうちに突然、年金から保険料を天引きされ、おこった人もたくさんいたみたい。事前にきちんと説明して理解してもらっていれば、お年寄りの反感は少なかったかもしれない。説明不足だよね。

 ポン この制度、このまま続けていくのかな。

 ――政府は、収入が少ない人の保険料を減らすなどの見直しも考えている。ただ、制度自体をやめるつもりはないようだよ。

 

 
【きょうのポイント】
 ▽2008年4月から、75歳以上の人が入る後期高齢者医療制度が始まった。
 ▽医療保険制度とは、働く人が普段からお金を出し合って病院にかかった時の負担を支え合うしくみ。お年寄りの医療費も負担してきたが、高齢化で立ち行かなくなってきた。
 ▽75歳以上の人の負担が増えたことや、年金からの天引き、「後期」という名前などに批判の声が上がった。
 

(2008年5月10日)


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