社会編;河原理子記者(朝日新聞日曜版編集部)
サッチーが逮捕されたんだって。知ってる?
だあれ?
タレントの野村沙知代さん。阪神タイガースの監督だった野村克也さんの奥さんでしょ。
なんで逮捕されたの。
2億円がどうとかって……。
「脱税」といってね。国にはらわれなければいけない税金をごまかして、約2億円はらわずにいたんじゃないか、といううたがいで、東京地方検察庁特捜部が逮捕したの。
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野村沙知代容疑者の家を捜索し、証拠となるものなどが入ったダンボール箱を運び出す捜査員=5日、東京都世田谷区玉川田園調布で
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ポン;2億円も、ごまかせるのかな。
―その前に国の税金のしくみから話そうか。
ポン;消費税なら知ってる。5パーセントだよ。
―そうね、消費税のように、買った人が負担する税金がある。消費税は子どもでもはらっているよね。
大人はほかに、はたらいて得たお金の中から、決められた割合の税金を国にはらっているの。個人の収入などにかかる税金を「所得税」。会社などのもうけにかかる税金を「法人税」というのよ。それぞれ、計算方法やはらい方が、法律で決まっているのよ。
ジャン;どうやってはらっているの。
―会社員だと、給料をもらうとき、税金の分があらかじめ引かれていて、会社がまとめてはらうことが多い。自分で会社やお店を経営している場合は、法人税の方ね。何にいくら使ったかを証明する領収証などをとっておいて、自分で税金の額を計算して税務署にはらうの。
ジャン;たくさん収入があると、税金も多くはらわないといけないんでしょ。
―そうともかぎらない。大事なのは「もうけ」なの。収入が多くても、「会社の経営にどうしても必要なお金がこんなにかかりました」といえば、もうけは少ないので税金も少なくてすむのよ。野村沙知代さんは、買っていない洋服代や、はらっていない会社の役員の給料を、はらったようにみせかけていたとうたがわれたの。
ポン;へえー。
―脱税の手口には、おどろくようなものもあるそうよ。収入を秘密にするために戸だなの奥にかくし部屋をつくってお金をかくしたり、カメに入れて庭にうめたり……。
ジャン;そんなことをゆるしたら、だれも税金をはらわなくなるじゃないの。
―そう。そういううたがいがあるときは、国税局などの専門家が調べ、悪質なケースは、「検察」という捜査機関が捜査して逮捕することもある。裁判で有罪判決だと、高額の罰金をはらう。
ジャン;どんな判決が、これまで出ているの?
―うーん、たとえばことし、約3億7千万円を脱税した産業廃棄物処理会社の社長には、罰金8千万円、懲役3年執行猶予5年の判決が出た。
ケン;チョウエキ3年? シッコウユウヨ5年?
―刑務所に3年間入れる刑をいいわたすけれど、刑を行うのを5年間待ちます、その間に罪を犯さなければ刑を受けなくていいというもの。
でも、手口がすごく悪質なときには、実刑といって、刑務所にすぐ入れられることもあるのよ。
ケン;脱税事件って、どのくらいあるのかな。
―昨年度、国税局が強制調査で見つけた脱税事件は205件。脱税総額は約271億円で、平均すると約1億6千万円だって。このうち7割の事件は検察が捜査している。
脱税の金額がもっとも多かったのは1988年(約714億円)で、景気のよくない最近は額が少なくなっている。けれど、コンピューターを使うなど、手口が複雑になっているそうよ。
(2001年12月15日)
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