朝日中高生新聞
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3年半ぶりに開かれた日韓首脳会談

2015年12月13日付

 しんぞう首相と韓国のパク槿大統領が11月2日にソウルのチョン(大統領府)で会談した。日韓首脳会談は3年半ぶり。安倍首相と朴大統領が就任してからは初めてだった。なぜこれほど長い間、会談が行われなかったのか考えてみたい。

旧日本軍の慰安婦問題が尾を引く

解決急ぐ朴大統領、慎重な安倍首相

 会談が開かれなかった最大の原因は旧日本軍のあん問題だった。慰安婦は戦争中に軍人らの性の相手をさせられた女性で、1990年代に入ってから取り上げられるようになった。
 日本政府は1965年に韓国と国交を正常化したときに結んだ協定で、慰安婦問題も解決したとの立場で、国家としてしょうすることはできないとの考えだった。それでも93年には「こう官房長官談話」を発表し、日本軍が関わっていたことを認め、おわびした。95年には政府が中心になって「アジア女性基金」をつくり、国民の募金をもとに元慰安婦に「つぐなきん」や、首相の「おわびの手紙」を送った。日本政府としてはできる限りのことをしたという思いが強い。
 韓国政府もアジア女性基金について最初は評価していた。ところが、元慰安婦を支援する団体が国家による補償ではないといった理由で反発。「償い金」などを受け取った人は一部にとどまり、最終的に解決につながらなかった。
 慰安婦だった女性の平均年齢は90歳近くになっている。朴大統領は2013年に就任してから、日韓関係では慰安婦問題を早く解決することを重視していた。安倍首相との首脳会談についても、きちんと成果を出すためには慰安婦問題が解決に向けて前進していなければならないとの考えをもっていた。
 これに対し、安倍首相は問題があるからこそ、話し合いが必要だとして、前提条件をつけた会談には応じないという立場だった。このため、隣の国のトップ同士が就任してから一度も正式に会談しないという異常な状態が続いていた。

話し合いを加速化することで一致

お互いの戦前・戦後の歴史に理解を

 こうした中で今回、首脳会談が行われたのは、日中韓首脳会談がきっかけだった。3カ国が順番に主催しており、今回は韓国が受け持った。日中韓首脳会談では日韓、日中、中韓の個別の会談も行われる。韓国が日本と中国の首脳を招待して、3カ国の協力について話し合うのに日本とだけ会談しないのは不自然だった。そこで、朴大統領はこの機会に安倍首相とも会談することを決めた。
 日韓首脳会談では慰安婦問題についても集中的に話し合った。その結果、できるだけ早く妥結するため、協議を加速化することで一致した。
 日韓には慰安婦問題だけではなく、過去の歴史に関する問題は他にもある。その多くは1910年から終戦の45年まで続いた日本による朝鮮半島の植民地支配が関係している。朝鮮半島の人々にとってみれば、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷つけられた。
 一方で、日本も戦後、過去を反省し、平和国家として歩んできたとの思いもある。歴史に対する考え方は違うだけに、まずはなぜ違うのかをお互いに理解することが大切だ。

【日韓関係の主な出来事】(肩書は当時)
1945年 朝鮮半島、日本の植民地支配から解放
48年 大韓民国(韓国)建国
50年 朝鮮戦争勃発(53年に休戦協定)
65年 日韓国交正常化
73年 野党指導者だった金大中氏が拉致される
79年 朴正熙大統領、側近に射殺される
82年 教科書検定で中国、韓国との外交問題に発展
88年 ソウル五輪
93年 日本、「河野談話」発表
   細川護熙首相が訪韓し植民地支配を謝罪
95年 日本、戦後50年で「村山談話」発表
98年 金大中大統領と小渕恵三首相が日韓共同宣言
2002年 サッカーW杯、日韓共催
04年 韓国ドラマ「冬のソナタ」、NHKで放送
05年 島根県議会が「竹島の日」制定
12年 李明博大統領、竹島に上陸
13年 朴槿恵大統領就任
   日本各地でヘイトスピーチが起きる
15年 日韓国交正常化50周年
   安倍首相が戦後70年談話発表

握手する両首相の写真
日韓首脳会談を前に握手する安倍晋三首相(左)と韓国の朴槿恵大統領=11月2日、韓国・ソウル、代表撮影

東岡徹さんの写真
解説者
ひがしおかとおる
朝日新聞ソウル支局

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