新政権の目玉、国家戦略室と行政刷新会議
脱官僚依存　中央官庁との調整が必要

　民主党を中心とする鳩山政権が徐々に動き出しています。先の総選挙で民主党は「官僚主導から政治主導へ」と訴え、大勝しました。この公約を実現するため、新政権が新しく設けた目玉組織が「国家戦略室（局）」と「行政刷新会議」です。
　国家戦略室は首相直属。予算の骨格を決め、外交政策など今後の国のあり方を考えるのが役割です。これまで予算編成は財務省の官僚を中心に、下からの積み上げをもとにつくられてきました。このプロセスの中で、特定の省庁と結びついた「族議員」と呼ばれる国会議員が影響力を発揮してきました。国家戦略室はこのプロセスをひっくり返し、優先すべき政策を決めて下へおろすのが狙いです。担当大臣は副総理も兼ねる菅直人さんです。
　もう一方の行政刷新会議は、役所の無駄や不正を洗い出し、財源をひねり出すのが役割。中央官庁を辞めた後に公益法人などへ再就職する「天下り」の実態も明らかにします。担当大臣は仙谷由人さんです。
　ただ、現状では問題が山積状態です。権限が明確でなく、職員の陣容すら固まっていません。予算編成については、これまで担当していた財務省との間で綱引きがすでに始まっています。国家戦略室を国家戦略局に格上げし、権限やスタッフなどを定める法律は、１０月に召集が想定される臨時国会で提出される見込み。行政刷新会議の事務局について仙谷・行政刷新担当大臣は「（官僚と民間人は）半々ぐらい。志ある方に入ってもらうことも考えている」と民間人の登用を明らかにしています。
　そのほか新政権は、週２回ほど開かれていた「事務次官会議」を廃止しました。首相や大臣が出席する閣議の前日に開かれ、法案や人事を調整してきました。１２０年以上の歴史を持ち、民主党は「政治主導の意思決定を阻む元凶」とみていました。
　「脱官僚依存」を掲げる「鳩山官邸」はまさに建設途上。「試行錯誤の中で失敗することもあろうかと思う。ぜひ国民のみなさんにもご寛容願いたい」と鳩山首相は理解を求めています。

(2009年9月27日)

　首相以下１８人の閣僚が決まり、鳩山内閣が船出しました。平均年齢は６０．７歳と麻生内閣よりやや高く、親族から選挙地盤を引き継ぐ「世襲議員」は５分の１に減って赤松農水相、中井国家公安委員長の２人です。工学部卒の鳩山首相をはじめ、理系出身が目立つのも特徴です。

(2009年9月20日)

新型インフルに勝つ！
規則正しい生活で抵抗力を保つ

　新学期を迎え、広がり続ける新型の豚インフルエンザ。手洗いなどの予防に加えて、「かかってしまった時、軽い症状ですむようにする対策も大切」と専門家はいいます。規則正しい生活をし、「かかったかな？」と思ったら早めに医師に診てもらうことがポイントです。
　季節性インフルエンザでは毎年、１千万人前後の患者が出ているとみられます。今回の新型は、ほとんどの人が初めてかかる病気なので、迎え撃つ体の備え（免疫）がありません。このため、季節性インフル以上の大きな流行になると専門家は心配しています。
　手洗い、うがいをし、人ごみにはなるべく行かないようにします。空気が乾燥してウイルスが活動しやすい季節になるので、部屋を加湿することも大切。加湿器などで６０％以上の湿度を保ちます。濡らした厚手のタオルをつるす方法もあります。また、１〜２時間おきに窓を開け、空気を入れかえます。
　こうして予防を心がけても「絶対かからないようにするのは難しい。かかってしまうかも、と考えて準備しておくことも大切です」と東京都健康安全研究センターの研究員で医師の増田和貴さんはいいます。「体の抵抗力が強ければ、軽めの症状ですむことがあります。抵抗力を保つには、規則正しい生活リズムを守ることが大切です」
　まず、十分な睡眠。必要な睡眠時間には個人差がありますが、養護の先生によると「翌朝すっきり目がさめ、午後に眠くならない長さ」で眠るといいそうです。食事は肉・魚、野菜などバランスよく。適度に体を動かすことも、抵抗力を保つのに役立ちます。「受験生は勉強で無理をしないで。夜遅くまで勉強して疲れがたまると、抵抗力が落ちます」と増田さん。

早めの受診で症状軽く

　喉の痛み、せき、急な発熱など「かかったかな？」の時は早めに医師に診てもらいます。けいゆう病院（横浜市）小児科の菅谷憲夫さんは今回の新型インフルについて、肺炎を起こしやすい、健康な人でも重症になるケースが多くみられるなどの特徴をあげ、「重症化を防ぐために、できるだけ早く抗インフル薬で治療することが大切」といいます。
　かかりつけの医師にまず電話で連絡し、診てもらえるかどうかや、何時に行けばいいかなどを教わります。行く時は必ずマスクをして、ほかの人にうつさないようにします。
　「ぜんそくや内臓の病気など持病のある人は、ふだん病院でもらっている薬をきちんと飲むなど、持病のコントロールをしっかりしておくこともインフルの重症化を防ぐうえで大切です」と増田さん。持病のある人は、新型インフルにかかったときどうしたらいいかなどをあらかじめ、かかりつけの医師と相談しておきましょう。

(2009年9月13日)

民主　大勝―総選挙
初の第１党　単独で３０８議席

第４５回総選挙（８月３０日投開票）で、民主党が単独過半数を大きく上回る３０８議席を獲得して、政権交代を決めました。
　第９３代首相に指名される民主党・鳩山由紀夫代表は「国民が勇気を持って政権交代を選んだ。国民が主役となる政治をつくりあげなければならない」「官僚主導から政治主導に変える」と話しました。
　自民党は、選挙前の３００議席から半数以上減らし１１９議席に。１９５５年の結党以来、経験したことのない惨敗で、守り続けた第１党の座から初めて転落しました。海部俊樹元首相（愛知９区）、中川昭一元財務兼金融相（北海道１１区）、久間章生元防衛相（長崎２区）ら大物議員が相次いで落選。麻生太郎首相は党総裁辞任を表明しました。「鳩山首相」が決まる特別国会（１６日召集）の後の２８日に総裁選を行い、後継総裁を決めます。
　自民と連立政権を組んでいた公明党も、小選挙区で全敗。２１議席と、過去最低の議席数になりました。太田昭宏代表（東京１２区）や北側一雄幹事長（大阪１６区）も落選し、辞任を表明しました。
　民主党を中心とする連立政権に参加する見通しの社民党は９議席を維持。同じく国民新党は綿貫民輔代表（比例区）が落選し、亀井静香さんが新代表になりました。

　期日前投票（１９〜２９日）は、国政選挙で過去最多の１３９８万４５１１人が利用。有権者の１３．４％、全投票者の１９．４２％を占めます。
　投票率は６９．２８％（小選挙区）と、今の制度になってから最高を記録。「政権選択」への高い関心を反映しました。

　総選挙の結果を英ＢＢＣ放送は、「去年の米国のオバマ現象に匹敵する、日本にとって歴史的な瞬間だ」と報じました。米ニューヨーク・タイムズ紙（電子版）は「野党の信認というより、現政権への明確な否定」と分析し、ワシントン・ポスト紙（電子版）も「世界一の高齢化社会への不安、多額の財政赤字、高い失業率と経済不況。こうした失敗について、有権者は自民党と麻生首相を罰した」と指摘しました。
　中国や韓国のメディアは、鳩山代表が歴史問題を含めアジアを重視するとみて注目しています。

(2009年9月6日)