「臓器移植法改正案」衆院で可決
「脳死は人の死」 年齢制限なく臓器提供認める案
「臓器移植法改正案」の採決が18日に衆議院であり、賛成263、反対167でA案が可決。参議院に送られました。今の臓器移植法(1997年成立)の改正案が採決されたのは初めてです。衆議院での採決は、国会に提出された順に、A案→B案→C案→D案と行われる予定でした。しかし、A案への賛成が過半数を超えたため、残りの3案は廃案になりました。
A案が国会で成立するには、@参議院で可決するA参議院で否決されても衆議院で再可決するケースなどが考えられます。しかし、衆議院解散が近いといわれる中、参議院での採決を待たずに解散が決まれば、A案は廃案になります。
参議院での審議を控えた23日、子どもを含む脳死について検討する調査会、「子ども脳死臨調」の設置を求める案が、参議院に提出されました。この案には、見分けるのが難しいとされる子どもの脳死の判定基準などについて、1年かけて話し合うとあります。これからの参議院の審議で、A案が可決する見通しは立っていません。
【A案とは】
A案は「脳死は人の死」を前提とし、0歳児からの臓器提供を認めています。ただし、脳死は人の死ではないとする人らの考えも尊重し、本人、家族が脳死判定や臓器提供を拒否できるようにしています。臓器提供する意思を生前に示していたかどうかはっきりしない人からも、家族の同意があれば提供してもらえます。
今の臓器移植法は脳死について、本人が、「臓器提供意思表示カード」など、書面で意思表示している時だけ「人の死」としています。臓器提供には、家族の同意も必要で、15歳以上に限られています。今、国内では小さい子どもに合うサイズの心臓提供が難しく、海外に頼っている状況。海外渡航には、1億円前後かかります。
そのため、子どもからの臓器提供に道を開くA案は、国内で助かる子どもが増えると期待されています。その一方で、子どもの脳死判定の難しさや、「脳死を人の死」とみなすことにまだ国民の広い合意が得られていない、など慎重さを求める意見も根強いのです。
【臓器移植の国内状況】
国内の移植希望者約1万2千人
判断材料を与えるための教育を
今、国内で、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸の移植を希望している人は、約1万2000人います。今の臓器移植法がスタートしてから2009年6月まで、脳死した人からの臓器提供は81件にとどまっています。
この間、心臓の提供を待つ人は372人いましたが、120人が間に合わずに亡くなり、36人が海外に渡りました。一方で、心臓の移植手術を受けた64人中、62人が元気になりました。(データは日本臓器移植ネットワーク)
臓器提供を求める家族らを支援する日本移植支援協会(東京都渋谷区)の副理事長・高橋和子さんは、「法律が改正されたとしても、臓器移植への理解が得られなければ、現状は変わりません。提供する、しないにかかわらず、判断材料を提供するためにも、学校などへの教育活動に力を入れたい」。
【脳死】
大脳、小脳、脳幹など、脳のすべての機能が完全に止まり、回復できない状態です。人工呼吸器を使わないと呼吸ができず、いずれ心臓が止まってしまいます。脳幹の機能が残っていて、自分で呼吸できる場合も多い「植物状態」とは別です。
(2009年6月28日)
ワイヤレス電源
いずれ宇宙から送電〓無線化計画進行中
近い将来、家庭からコンセントや電源コードがなくなるかもしれません。
完全コードレス化実現への動きが活発です。総務省は7月にもとりまとめる電波政策懇談会の報告書で「ワイヤレス電源供給」に適した電波の周波数帯を割り当てる検討に入り、2015年までの実用化をめざす方針といいます。
携帯電話やパソコンの無線LANなど、情報通信のワイヤレス化は進んでいますが、まだ多くの家電はコードをコンセントにさす必要があります。
方法は3種類。@電磁誘導型 コイルに電流が流れると周りに磁力の働いている空間「磁界」ができ、近くの別のコイルが磁力を受け電流が発生します。ロスが少なく効率もいいのですが、コイル同士がかなり接近していなければなりません。コードレス電話の子機や電動ハブラシの充電器などにすでに使われていますA磁場共鳴型 コイルに電気を流すことで、磁界が発生している空間(磁場)をつくります。同じ周波数の特性をもつコイルが共鳴することで、電流が流れます。少し離しても使える方法ですB電波受信型 マイクロ波などの電波を送り、アンテナで受ける方法です。他の方法に比べ遠くまで送れますが、ロスが大きく効率が悪いのが難点です。
携帯電話やパソコンの無線充電、家電のコードレス化、体の外から人工心臓への充電、走っている電気自動車への充電、さらに進めば宇宙に太陽光発電衛星を打ち上げ、地上に電力を送る計画(SSPS)の足がかりになるかもしれません。
無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)技術本部の三原荘一郎部長は「規模や送電する距離などに差はありますが、SSPSもこの技術の延長にあり、前進に期待しています」。
東芝研究開発センターの庄木裕樹博士は「電磁誘導など中学でも習う単純な原理が応用されています。身の回りで、コードがないと便利なものを考えてみてください。使い道はいろいろあるはずです」。
(2009年6月21日)
月周回衛星「かぐや」仕事終了
月に落下成功 データから成り立ち解明へ
11日の午前3時25分、月周回衛星「かぐや」が約1年9カ月にわたる仕事を終えました。かぐやを運用してきた宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、相模原キャンパス(神奈川県)からかぐやのコンピューターに減速を指示。月面からの高度約80キロのところから落ちはじめ、減速を始めてから約50分後に落下しました。
JAXAは、今回のかぐやの落下で、人工衛星を予定通りの時間・場所に落とす「制御落下」の技術を確かめようとしていました。JAXAによると、今回の制御落下は成功。この技術は、今後の有人探査などに役立つそうです。
かぐやは2007年9月14日に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。月表面の鉱物、地形、表面近くの地下構造、重力の観測などを調べるためです。打ち上げから約1カ月半後には、月の地平から地球が姿を現す「地球の出」や、その逆の「地球の入り」の映像をハイビジョンカメラでとらえ、地球に送ってくるなどしました。
かぐやが送ってきた観測データは、まだこれから1、2年かけて解析され、月の成り立ちや進化を解き明かす手がかりになります。
(2009年6月14日)
子どもの権利条約20年
力強く安心して世の中に挑める大人に
1989年11月、国連総会が「子どもの権利条約」を満場一致で採択してから今年で20年です。条約は国際的な約束。国ごとに「批准」すると、国内でも適用されます。日本は94年に批准しました。締約国は5月現在で193カ国です。
条約は17歳までを子どもとしています。生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利の4本柱から成り、教育を受ける、休む、遊ぶ、虐待から守られる、自由に意見が言える――などの権利も含まれます。公民の教科書にも載っていますね。
5月、都内で開かれた条約20周年イベントで、10代のころ、子どもの権利にかかわる活動をした20〜30代の社会人が、当時と今の自分を語りました。
その一人、円谷雪絵さんは中学時代、街づくりを考える子どもたちの活動に、悩みも不満もなく参加。「話を聞いてくれる大人がいると知った。子どもたちにもそうしてあげたい」と、今も市の子ども会議をサポートします。
中学時代に、子どもだけで企画運営するフリーマーケットを始めた苗村みかささん。「学校と家以外に居場所がない」と、居場所づくりの活動もしました。今、障害者のために働きながら「権利って何?っていうあのころの疑問がきっかけ」と思うそうです。
94年に千葉県の高校各校で生徒会連盟を作った高橋亮平さんは今、市会議員。「楽しくてやってるところは(議員活動も)変わらない。子ども時代に、世の中変えられるんだなと思った経験がある大人は、壁にぶつかっても、子どもの時と同じように変えればいいと思うんじゃないかな」
98年着手の川崎市に始まり、全国で子どもの権利条例は29、関連条例を入れると50近くになります。早稲田大学の喜多明人教授(教育法学)は「この20年、国レベルの成果は虐待防止法の成立ぐらいですが、自治体や民間が努力した」と振り返りました。
(2009年6月7日)
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