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2009年11
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青いバラ(1本3千円)好評発売中
幸福感ある青 追究する日本の技術
 日本有数の酒類・飲料製造メーカーとして知られるサントリーがこのほど、青いバラを首都圏と京阪神地区、愛知県で売り出しました。商品名は「APPLAUSE」(英語で拍手喝采の意味)。1本3000円前後とかなり高めですが、予約注文で完売する花屋さんが出るなどなかなかの人気です。
 同社はこれまでも、青いカーネーションや青いキクなどいろいろな花を青く変える研究に取り組んできました。飲み物中心の会社がなぜ、花を青くする研究をするようになったのでしょうか。
 サントリーは以前から、ビールの麦やワインのブドウなど同社が扱う酒類の原料となる作物の品種改良をする研究をしていて、こうした技術を生かせる商品として花を作ることになったそうです。
 青い花作りの研究を始めたのは90年ごろから。「どこにもない商品を作れば、たくさん売れそうだからというのもありましたが、青は『青い鳥』(メーテルリンク作)に出てくる幸せの青い鳥など、幸福感があることなどが理由です」と、開発にたずさわってきた同社植物科学研究所長の田中良和さん。
 研究チームはまず、青い花を咲かせる植物の中から、青い花を咲かせることに関係する遺伝子を探しました。1つの植物で約3万種類の遺伝子を持っています。苦労の末、やっとその遺伝子を見つけましたが、それをバラに組みこみ、うまく青い花を咲かせるまで、さらに苦労が続きました。何度も失敗を重ねた結果、植物の中でもパンジーの遺伝子だけが適していることを突きとめました。
 ただ、遺伝子の組み換えによって、今まで生えていた植物を絶滅させるような植物が生まれる心配はないのでしょうか。
 花を楽しむために開発された多くの種(園芸種)は、人間が世話をしないと自然には増えにくい性質を持っているといいます。同社の場合、青いバラが自然界に影響を与えないか環境省と農林水産省の検査を受け、安全だと認められたため、商品として売り出せることになりました。
 花の色は、花粉を運ぶ鳥や虫がどんな色を好むかに関係しています。青いバラがこれまで自然界になかった理由について、田中さんは「青色でなくても花粉を運んでもらえたため、バラは青い花を作らなくなったのでは」と推測しています。
 田中さんらは現在、バラの花の色をもっと青に近づける研究を進める一方、青いユリの開発にも着手。「会社があきらめずに長年研究を許してくれたことがよかった。日本は資源がないので技術をみがいていかないといけない」と話しています。

(2009年11月29日)

契約って何?――お金のトラブル気をつけて
教材と生徒の実演、説明で分かりやすく
お金をだまし取られるなどのトラブルに巻き込まれることがないように、「契約」について学んでもらおうと、東京都が中学2年生向けの教材「契約って何だろう?」を作りました。この教材を使った初めての授業がこのほど、八王子市立四谷中学校の総合の時間に行われました。
「利用料金が支払われていません。すぐに振り込まないと訴えます」。都消費生活総合センターによると、覚えがないのにこんな言葉でお金を振り込ませようとする架空請求のメールやはがきが届くなどのトラブルが、中学生の間にも広がっています。
こうしたトラブルを少しでも減らそうと、都は教材を作成し、都内の中学校に教材を活用した授業を行うよう呼びかけたところ、今年度は新宿、世田谷、足立の各区と八王子市の公立の中学校が授業をすることを決めました。新学習指導要領でも消費についての教育が盛り込まれていることもあり、来年度以降はさらに増える予定で、都は「最終的には都内のすべての公立中学校で行いたい」としています。
四谷中学校では、生徒9人が先生役になって、体育館で全校生徒を前に授業をしました。9人は夏休みから準備をし、契約や悪質商法などについて学んできました。
「契約とは、商品を買いたい、売りたいという二つの思いがぴったり合うことで、法律上の責任が生じる関係のことを言います」。ステージに上がった生徒の1人が、教材に沿って説明します。悪徳商法については、さらに分かりやすくするために、担当の山下大輔先生が作った台本に基づき、さまざまなシーンを自分たちで演じ、ビデオに撮ったものを上映しながら説明しました。
ビデオでは、路上で声をかけられて店に連れて行かれ、高額な絵を買わされそうになるキャッチセールスのシーンや、使っていない有料サイトの利用料金を支払うよう脅される架空請求のシーンが次々に流れ、途中で生徒たちが説明を加えていきました。
聞いていた生徒たちからは「内容が分かりやすくて、どういうことが契約で、どういうものが悪質商法なのかがすんなりと頭に入った」と好評でした。
授業を行った杉本花歩さんは「セリフを覚えるなかで、契約や悪徳商法などについて初めて知ったことがたくさんあった。台本は先生が作ったが、自分たちでさらに分かりやすくなるようにアドリブも入れて工夫できたのがよかった」。
石原朋哉君は「だまされるケースにはどんなものがあるのかがよく分かった。自分がだまされそうになったら警察に連絡をし、友達がだまされそうになっていたら相談に乗ったり、一緒に大人に相談をしたりして気をつけたい」と話していました。
山下先生は「生徒が主体的に授業をしたので、聞いた生徒も理解しやすかったと思う。中学生もお金に関する知識をしっかりと身につけ、必要がないものは断ることが大切です。また、ブログなどで軽々しく自分の情報を出すと、その個人情報を使って架空請求をされるなどの問題に巻き込まれることもあるので、興味本位でやらないようにしてほしい」と注意を促しています。

(2009年11月22日)

イグ・ノーベル賞 パンダのふんでごみ減量
夢はシロアリとパンダの合わせ技
 ユニークで人々を考えさせてくれる研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」。ノーベル賞のパロディーで「愚かなノーベル賞」という意味もあり、日本人が数多く受賞しています。今年は生物学賞に北里大学名誉教授の田口文章先生(72)が選ばれました。田口先生で、日本人が関係する受賞は14件目となりました。
 田口先生は、パンダのふんからとった菌でごみの量を9割減らす研究が評価されました。今年はほかに、こんな研究が選ばれています。
 ▽2つのガスマスクになるブラジャーの開発(公衆衛生賞)
 ▽名前をつけられた牛のほうが、名前のない牛よりも乳の量が多いことを発見(獣医学賞)
 ▽ポーランド語の「運転免許(Prawo Jazdy)」を人名だと勘違いして、その名で50以上の交通違反切符を切ったアイルランド警察(文学賞)
 ちゃかしているとしか思えないものもありますが、田口先生の場合は微生物の専門家として研究し続けたものです。受賞理由は定かでないものの、「パンダのふんでごみを減量」という結びつきが、ユニークだったからとみられます。

シロアリの菌では水素発生

 受賞したパンダの菌の研究の前に、田口先生はシロアリが木を食べて水素を出すことから、シロアリのおなかにいる菌を使って水素を出す方法を研究していました。実験を重ね、シロアリの菌にごみを食べさせて水素をつくることに成功。しかしごみが4割ほど残ってしまいました。そこで考えたのが、そのごみを減量する方法というわけです。
 田口先生は「消化の悪いササを食べるパンダには、特別な菌がいるのでは?」と思いついたといいます。上野動物園(東京都)に頼み、バケツいっぱいのパンダのふんをもらって研究しました。パンダのふんは、何を食べたのかがすぐに分かるほど、食べたものの形がほぼそのまま出てくるそうです。「においはくさくなく、研究するには、ラッキーでした」。ふんからとった菌を使うと、キャベツの切れ端などの生ごみを9割以上分解できることが分かりました。シロアリの菌とパンダの菌、2つの研究を合わせて、「ごみから水素をとりながら廃棄物を処理すること」の実用化が、田口先生の夢だといいます。
 パンダの菌の研究について、論文にまとめたのが10年ほど前ですが、今年になってどういうわけか、イグ・ノーベル賞の事務局が注目し、連絡をとってきたのです。「あなたはイグ・ノーベル賞の候補に選ばれている。授賞式に出席するか?」という内容のメールが届きました。授賞式はアメリカ・ボストン近郊のハーバード大学で10月にありました。授賞式自体も、本家ノーベル賞受賞者がプレゼンターとして参加し、紙飛行機が舞ったり、オペラが始まったりとユニークなもの。オペラの内容はよく分からなかったという田口先生ですが、「陽気なエンターテインメントで、式の出席者と観客みんなが楽しんでいました。交通費は出ず自費でしたが、行って良かったと思います」と話しています。

(2009年11月15日)

天気図衣替え完了
冬は大陸側が広い 季節感じ、防災に一役
 多くの新聞の天気図が今月1日、「夏用」から「冬用」に「衣替え」しました。日本のほとんどの新聞社や放送局に毎日天気図や予報などの気象情報を配信している日本気象協会は、毎年11月1日と5月1日の前日、天気図を作るプログラムの設定を切り替えています。
 日本は中緯度に位置しているため、はっきりした四季があり、気圧配置などに特徴があります。夏用と冬用の2種類を使い分けているのは、季節により注目すべき場所が変わるからです。
 冬用は、日本の北西、中国やロシアのシベリアが位置する大陸側を広くとっています。大陸側の冷たい高気圧から、東の低気圧へ冷たい空気が流れ込む「西高東低の冬型の気圧配置」が多くなるので、寒さや雪の原因となる高気圧の動きを知るのに都合がいいのです。
 夏用は、日本の南側の太平洋を広くとっています。台風は暖かい南の海上で発生し、日本に近づくため、早くから台風などの情報を知るのに都合がいいからです。
 日本気象協会で新聞への配信システムを担当する気象予報士の高森泰人さんは「肌で感じる四季と、毎日の天気図を意識して見比べてください。そのうち、天気図を見るだけで天気の移り変わりがわかるようになります。天気図を身近に感じ、台風などの情報をいち早くキャッチして、防災意識も高めてもらえれば」と話しています。

(2009年11月8日)

囲碁・新名人誕生 井山裕太さん
負けたから今がある 失敗は生きる
 囲碁の世界に最年少の新名人が誕生し、注目を集めています。井山裕太さん(20)です。囲碁界の七大タイトル戦のひとつ、第34期名人戦七番勝負で張ウ名人(29)を倒し、旧名人戦を含め44年ぶりに最年少記録を更新。大阪府東大阪市に住み、関西の棋士が名人になるのは初めてです。
 去年の名人戦は3勝4敗で惜しくもタイトルを逃し、2度目の挑戦でした。「前回の負けは今までで一番といっていいほど、悔しい思いをしました。でも『絶対に勝負に負けない』という強い気持ちを押し出すことの大切さなど、学ぶ点が多かった。去年の負けがあってこそ、今の自分があり、ステップアップにつながった」
 5歳の時にお父さんが買ってきたゲームソフトで遊んだのをきっかけに囲碁を始め、アマチュアのおじいさんと楽しみながら続けてきました。小学2、3年生の時には少年少女囲碁の全国大会で2年連続で優勝。中学1年の4月にプロ棋士としてデビューしました。中学生時代は棋士生活の大きな転機となりました。
 「最初はプロとして通用するのか不安がありました。でも対局で結果が残せると、少しずつ自信がついてきた。家族や学校の友達や先生みんなが応援してくれていたので心強かった」と振り返ります。
 「せっかく自分の好きな囲碁ができるのだから、悔いのないようにしたい」と、高校には進学せず、棋士に専念。2005年の阿含・桐山杯全日本早碁オープン戦、07年の新人王戦などで優勝し、粘り強さや冷静さを武器に実績を積み上げてきました。
 1年生の時の朝日中学生ウイークリーの取材では「日本だけでなく、世界で通用する棋士になりたい」と答えていた井山新名人。この思いは今、さらに強くなっています。「自分は未熟なので、これからもまだ成長する可能性はあると思います。中国や韓国の棋士たちの『なにがなんでも勝つ』という貪欲さも見習いたいです」
 囲碁の世界に終わりはなく、碁盤と向かい合って研究する毎日が続きます。自分の実力を磨くとともに、囲碁のおもしろさをたくさんの人に伝える役割も担います。「名人みたいになりたいな、と子どもたちから目標にされる棋士を目指したい」
 これから進学や就職などさまざまな選択が求められる中学生たちに「自分のやりたいことや夢があるのなら、とことん追求してチャレンジしてください。もし失敗したとしても次に生かせるのなら、無駄にはなりません」とアドバイスします。
 長年見守ってきた師匠の石井邦生九段は「大きな舞台でものびのびと碁を打ち、自分の実力を発揮できるのが強み。中学生時代も熱心に囲碁の勉強を続けてきたのが印象に残っています」と話しています。

(2009年11月1日)

強力連載隊
英検3級合格への道
漢検卒業までに3級を 数検3級合格の定理

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