- 毎日発行/8ページ
- 月ぎめ1,769円(税込み)
2020年2月2日付
イギリス(英国)が1月31日午後11時(日本時間2月1日午前8時)、ヨーロッパ連合(EU)から離脱しました。ジョンソン英首相は演説で「新時代の夜明け」を強調。離脱に賛成する人たちは祝福した一方、反対する人たちもいます。
「これは終わりではなく始まりだ」「夜が明け、私たちの偉大な国民ドラマの新たな幕が開く瞬間だ」。ジョンソンさんは離脱の1時間前に公開した録画演説で、英国の国民に向けて語りました。
離脱後は、移民の流入の制限や、独自の自由貿易協定、自国に合った法律や規則づくりなどができるようになるとし、「正しく、健康的で、民主的だ」と語りました。
31日夜には官庁街が国旗の色の赤、青、白でライトアップされました。地元メディアによると、ジョンソンさんは官邸内で、閣僚らと離脱を祝ったといいます。
ただ、離脱をめぐって英国の世論はまだ賛成と反対に分かれています。政府は大きなイベントはしませんでした。
英国は47年前の1973年にEUの前身のヨーロッパ共同体(EC)に加盟。フランス、ドイツとともに主要国の立場にありました。ただ、共通の通貨ユーロはとり入れないなど独自の立場をとりました。2016年の国民投票で離脱派が残留派をわずかな差で上回り、離脱の手続きを進めていました。
31日で離脱はしましたが、今年末までは「移行期間」とされ、英国は引き続きEUの貿易ルールや法律に従います。
イギリス(英国)の政治にくわしい成蹊大学法学部教授の高安健将さんに聞きました。
Q(質問) どのように受け止めていますか。
A(高安さんの答え) EUから初めて加盟国がぬけました。これは一つになろうとしてきたヨーロッパにとって大きなできごとです。
Q 英国はなぜぬけたかったのですか。
A 「自分たちの国のことは自分たちで決めたい」という思いがあったからです。EUからぬければ、税金のことなどを自分たちで決められるという期待があります。
ほかにも、EUに関わっていると移民がたくさん入ってくるという心配もありました。
EUから出ることで、人の移動もおさえられると期待する人たちもいます。しかし、うまくいくかどうかはわかりません。
Q 英国が今後やらなければならないことは。
A EUとの関係を整理しなければなりません。EUにいたときは人、モノ、サービスの移動が自由でした。これからは変わるでしょう。経済的には英国はEUと深く関わっていたほうが得だと思います。しかし、深く関わろうとすると、EUのルールや人の移動も受け入れなくてはなりません。どれくらいの深さで関わるかを決めることが一つです。
Q ジョンソン政権は長続きしそうですか。
A 4年から5年は続くと思います。しかし、例えば、英国を構成する地域の一つのスコットランドは、EUに残ることを希望する人が多く、英国からの独立をめざす人たちもいます。ジョンソンさんは、この人たちの意見をまったく無視するわけにはいかないと思います。
Q 子どもたちに考えてほしいことは?
A 「国民投票」という視点から考えてみてほしいと思います。国の大きな問題を決めるはずの国民投票の結果から、英国はもめ始めました。みんなが納得いくルールづくりはどうしたらできるのか考えるきっかけになればと思います。
(構成・前田奈津子)
記事の一部は朝日新聞社の提供です。