- 毎日発行/8ページ
- 月ぎめ1,769円(税込み)
←2020年3月16日以前からクレジット決済で現在も購読中の方のログインはこちら
2015年7月4日付
ジャン 6月20日の「世界難民の日」に東京・渋谷で外国の人たちがデモ行進していたよ。
五十嵐記者 デモをしていたのは、東南アジアのミャンマーからやってきて、日本に暮らすロヒンギャ族の人たちだ。
ケン 何をうったえていたの?
――ミャンマーを船で出た後、周りのタイやマレーシア、インドネシアなどにおおぜい漂着しているので、助けてほしいと呼びかけていた。
正式な手続きをとらずに、外国に入ろうとする密航が最近増えていて、国際問題になっている。
ポン ロヒンギャってどんな人たちなの。
――ミャンマーに約130万人いるといわれるイスラム教徒だ。ミャンマーは約5千万の人口の大半が仏教徒だから、少数派だね。
住んでいるのはラカイン州というところだ。イスラム教徒が多い隣国のバングラデシュと接している。バングラデシュで話されるベンガル語の方言を話すよ。
ケン いつからミャンマーに住んでいるの?
――ロヒンギャの人たちは先祖が大昔から住んでいたと主張している。でも、多くは19世紀以降、ミャンマーがバングラデシュと同じくイギリスの植民地になってから移り住んだと考えられている。
ポン なぜミャンマーから出て行こうとするの?
――差別されているからだ。ミャンマー政府や多くの国民はロヒンギャを自分の国の民族と認めず、バングラデシュからの移民と見なして外国人あつかいしている。
国内旅行に役所への届け出が必要だったり、土地を持てなかったりもする。
差別がひどくて暮らしにくいと感じれば、外国に行きたくもなるよね。日本にも、群馬県館林市に約200人いる。
ジャン 最近になって増えているのはどうして。
――ラカイン州では2012年に仏教徒とロヒンギャ族の間で多くの死者を出す争いが起き、約14万人が家を追われた。その大半がロヒンギャ族で、今もミャンマー国内の避難民キャンプで暮らす。再び争いが起きないようにと、ロヒンギャ族はキャンプから出ることをゆるされず、仕事もできない状態が続いている。だから、不満がたまっているんだ。
ケン どうやって密航するの?
――ブローカーと呼ばれる人たちが「外国で仕事を見つけてやる」とさそう。目的地はイスラム教徒が多くて経済発展も進むマレーシアだ。船でタイ南部まで連れていき、そのとき、お金を払えば、マレーシアにこっそり入国させることが多い。船には、外国で仕事をしたいバングラデシュ人も乗っている。
ジャン これまで何人くらいが海を渡ったの?
――この3年間で推計16万人、今年は3月までで2万5千人。バングラデシュ人とロヒンギャが半々くらいのようだ。
ケン 周りの国々は受け入れているの?
――マレーシアには約10万人がいるとされる。だが、5月中旬に1千人以上が漂着したときはインドネシアとともに追い返そうとした。たくさん押し寄せるのを心配したんだ。国際社会に「それはひどい」と言われたので、両国とも1年間は受け入れることにした。
ジャン 1年後にどうするの?
――決まっていない。各国はブローカーとつながる組織の取りしまりを始めたが、ロヒンギャの人たちへの差別がなくならない限り、問題の解決とはいえないんだ。
ミャンマーから避難し、インドネシアの一時滞在施設で配給を受け取るロヒンギャ族=5月21日
「なかまを助けて」とデモ行進するロヒンギャ族ら=6月20日、東京都渋谷区
どれも(C)朝日新聞社
解説
五十嵐誠記者
朝日新聞ヤンゴン支局
記事の一部は朝日新聞社の提供です。