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2015年5月8日付
ジャン もうすぐ国会で「安全保障法制」が話し合われると聞いたよ。どういうことなの?
西山記者 日本の安全をどう守るかなどについて、細かく決めておく法律の集まりのことだよ。5月下旬から国会で議論されるんだ。大きく分けて「日本を守る」ための法律と、「自衛隊が日本の外で活動する」ための法律にわかれるよ。
ケン どんな内容なの。
――まず「日本を守る」から説明しようか。もともと日本が直接、ほかの国から攻撃された時、自衛隊が武力を使って相手に反撃できるんだ。これは「個別的自衛権」といって、今でも日本が使える権利だ。でも、新しい法律では「集団的自衛権」という考え方も取り入れるよ。
ポン なんだかむずかしいね。
――例えば、アメリカ(米国)のように日本と関係の深い国が、ある国から攻撃されたとするね。その時に日本の自衛隊も一緒に戦うんだ。
ジャン じゃあ、米国が攻撃されて戦争になったら、日本の自衛隊が必ず一緒に戦うの?
――そうじゃない。その時、日本にも大きな危険がおよび、国民の命や自由、幸せに生きようという権利が根っこから奪われてしまうような危険があって、武力を使うこと以外に方法がない時に限り、米国と一緒に戦うことができるんだ。こうした考えは「武力攻撃事態法」という法律の改正案に盛りこまれたよ。
ポン ほかには?
――日本が直接攻撃されるような戦争の状態にはなっていないけど、日本の周りで戦争が起き、このままだと日本の平和と安全に大きな影響が出るかもしれない時、日本を守るために活動している米国などの軍隊に、弾薬などを提供できるようにする。そのための「重要影響事態法案」も国会に出されるよ。大まかにはこの二つが「日本を守る」に当たるね。
ケン もう一つの「自衛隊が日本の外で活動する」は?
――「国際平和支援法案」といって、「世界の平和と安全」などの目的で戦争をしているほかの国の軍隊を、自衛隊がいつでも手伝えるようにする内容だよ。戦争の現場より後ろで、武力を使わずに他の国の軍隊に食料や燃料を運ぶ活動をする。戦争が終わった国の立ち直りを自衛隊が助けるための「PKO協力法改正案(国際平和協力法改正案)」もあるよ。
ジャン 自衛隊が日本の外で広く活動するようになるんだね。
――新しい法律案や法律の改正案は安倍晋三首相がいう「積極的平和主義」に沿ったものだ。日本が自衛隊をもっと海外に出すことなどで、世界の平和や安全を守ることに協力していこうという考え方だよ。
ケン いいことなんじゃないの?
――反対意見もあるんだ。
「集団的自衛権」について、政府は長い間、いまの憲法では使うことはできないとしてきたんだ。だけど、安倍首相は憲法をどのように読むかという「解釈」を変えて、使えるようにした。憲法をいくらでも都合良く解釈して、法律を作れるようになるという批判の声があるよ。
ポン ほかには?
――自衛隊の活動が広がると、それだけ戦争に関わる危険も高まるんだ。
例えば、海外で戦争する国に食料や燃料を運ぶだけだといっても、敵と見なされて攻撃されることも考えられるよね。
ジャン いろいろな意見がありそうだね。
――国会議員が賛成、反対の立場からさまざまな意見を出したり、問題点を指摘したりしてほしいね。
オバマ米大統領(右)と握手する安倍晋三首相。安全保障法制で、自衛隊と米軍の関係が強化されます=4月28日、米ワシントン
海上自衛隊のイージス艦「みょうこう」(手前)と「こんごう」。安保法制では、米国をねらった弾道ミサイルを日本のイージス艦がむかえうつミサイル防衛も想定しています=2012年撮影
解説
西山公隆記者
朝日新聞政治部
記事の一部は朝日新聞社の提供です。