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2020年6月26日付
新型コロナウイルスの影響で、世界の経済が危機におちいっています。会社やお店が閉まり、給料が減ったり、仕事を失ったりした人も多くいます。その影響の大きさは、2008年に起きた「リーマン・ショック」と呼ばれる世界的な経済危機とよく比べられています。
ケン リーマン・ショックって何?
寺西和男記者 2008年9月にアメリカ(米国)の証券会社、リーマン・ブラザーズが倒産したのをきっかけに、世界に広がった経済危機のことだよ。世界の経済を分析する国際通貨基金(IMF)のデータによると、翌09年の世界経済の成長率はマイナス0.1%と、データが見られる過去40年で唯一、成長がマイナスになった1年なんだ。
日本でもたくさんの会社が倒産し、仕事を失う人も多かったよ。IMFの予想だと、新型コロナウイルスの影響で、今年の世界の成長率はマイナス4.9%と、その時を上回る落ちこみになる見こみで、いろんな面で比べられているよ。
ポン なぜリーマン・ブラザーズは倒産したの?
――問題が起きたのは、米国で収入が少ない人たちに貸した、家を買うための住宅ローンだ。米国の経済は好調だったので、銀行はどんどん貸した。でも経済が悪くなり始めると、ローンを返せない人が相次いだ。貸したお金を取りもどせなくなった銀行は多くの損を抱え、苦しくなった。リーマンもこうしたビジネスで損を抱えたんだ。
ジャン でも証券会社が倒産しただけで、なぜ世界の経済が危機になるの?
――他の大きな銀行も、リーマンのように問題を抱えて倒産するかもしれないと不安が広がった。銀行は、預金者などから集めたお金を、他の会社などに貸しているけれど、不安のある銀行には、だれもたくさんお金を置いておきたくないよね。そんな銀行は、他の会社に十分にお金を貸せなくなり、会社は仕事ができなくなったんだ。
危機の原因となった銀行は、お金をあつかう金融機関の一つだね。だからリーマン・ショックは「金融危機」とも説明されるよ。
ケン いま経済が悪くなっているのも金融危機?
――ちがうよ。新型コロナウイルスの感染が広がるのを防ぐため、政府が人の動きを止めたのが原因だよ。
日本では、政府が国民に外に出たり、お店を開いたりするのをやめてもらうようお願いした。海外では外出を禁止し、やぶったら罰金をとる国もある。お店を開けないとモノが売れないし、働いている人は給料をもらえない。倒産する会社も出て、仕事を失った人もいるよ。
ジャン 倒産した会社は、リーマンの時といまと、どちらの方が多いの?
――会社の倒産を調べる東京商工リサーチによると、今年1~5月の全国の倒産は約3200件。リーマン・ショックが起きた08年9月からの5か月間は約6800件だったから、それより少ないよ。金融危機だったリーマンの時は、金融機関や不動産会社などで、比較的大きな会社の倒産が目立った。今回は外出をする人が減った影響で、ホテルや旅館、飲食店などの倒産が多くなっているよ。
ポン これからどうなる?
――リーマンの時は、中国など一部の国は影響が小さく、中国政府がお金を出してビルや道路などをつくって、経済を支えた。でも今回は世界全体に感染が広がって、どの国も大きな影響を受けている。再び感染が広がるかもしれないし、この先どうなるかを予想するのは難しいよ。
世界では経済危機が何度も起きています。1930年代に「世界大恐慌」が起き、経済に苦しむ国々が増えました。不満の高まりが、その後の第2次世界大戦の一因になったと言われています。
1970年代には石油のもとになる原油の産地、中東で戦争が起き、石油の値段が上がりました。石油製品は車だけでなく、電気をつくる火力発電など幅広く使われています。経済に大きな影響をおよぼし、「オイルショック」と言われています。
1990年代には日本で不動産の価格が下がり、その後に経済が悪くなりました。「バブル崩壊」と呼ばれています。
■解説者
寺西和男記者
朝日新聞東京本社経済部
ピンクは大事な言葉だよ
記事の一部は朝日新聞社の提供です。