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2020年5月29日付
北海道から東北の太平洋沖で巨大地震が起きると、北海道から千葉県までの広い範囲が津波におそわれ、その最大の高さは30メートル近くになる――。そんな被害想定を4月、国が公表しました。想定のもとになったのは、地層にねむっていた大昔の津波の堆積物です。
ポン また、大きい津波が来るかもしれないの?
藤波優記者 北海道から東北の太平洋沖でマグニチュード(M)9以上の地震が起きたときの、最大級の津波が想定された。岩手県宮古市では29.7メートル、北海道えりも町では、27.9メートルにもなるかもしれないんだ。震源によっては東日本大震災の倍の高さになる場所もあった。
ジャン どんな地震が想定されているの?
――東日本の太平洋沖では、海洋プレートと呼ばれる岩板が、年に10センチほどのペースで、日本列島が乗っている大陸プレートの下にしずみこんでいる。引きずりこまれる大陸プレートにはひずみがたまり、限界に達するとはね上がって地震が起きる=下の図を見てね。過去に地震がくり返され、今後も起きるとされている。
ケン 東日本大震災とは何がちがうの?
――東日本大震災では、宮城県沖の日本海溝が動いて、M9.0の大地震になった。ところが、岩手県より北の日本海溝はあまり動かず、北海道沖の千島海溝にもひずみがたまっているとみられている。だから今回は東日本大震災で動いた場所よりも北側が大きく動くと想定したんだ。
ジャン 心配だね。いつ起きるかはわからないの?
――この地域には大津波が300~400年おきに来たと考えられ、最後に来たのは1600年代だから、近く起きるかもしれない。国の地震調査委員会は2017年、千島海溝で30年以内にM8.8以上の地震が起きる確率を最大40%と見積もっているよ。
ケン 津波の高さはどうやって予測したの?
――北海道や東北地方には、慶長三陸地震(1611年)や貞観地震(869年)など、津波におそわれたあとが残っていた。今回、専門家たちは地層に残っていた堆積物を調べ、過去に実際に起きた最大級の津波がどれくらいだったか推定。その津波を起こすような地震を逆算して、各地の津波の高さを割り出したんだ。
ポン 堆積物って?
――津波が陸地をおそうと、引いた後に海の底にあった泥や砂が地層として残る。これを「津波堆積物」といって、この堆積物やその上下の地層を調べることで、津波がいつごろ来たのか、陸地のどれくらい奥まで水につかったのかがわかる。今回、6千年も前までさかのぼって調べた。
ジャン そんな昔のものが残っているなんて、すごい。
――北海道や宮城県は、広い平野が農地などとしてほり返されずに残っていて、調査がしやすかった。でも、福島県などの東北南部や関東地方は、開発によって津波堆積物を調べられる場所が少なく、あまり見つかっていない。国は「今後の課題」としているよ。
国は、想定をこえる巨大地震となった東日本大震災の教訓から、最大級の津波を想定し、備えるべきだと提言しています。被害想定を出して終わりではなく、想定をもとにどういう対策をしていくかが重要になります。
国は想定を出してすぐ、新たに、対策を考える専門家のグループを作りました。北海道や東北は、寒い地方特有の、流氷による被害や避難する道の凍結なども考えなければいけません。道や県、市町村も、津波から命を守るため、避難計画の見直しなどを進めていきます。
■解説者
藤波優記者
朝日新聞東京本社科学医療部
ピンクは大事な言葉だよ
記事の一部は朝日新聞社の提供です。