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2019年6月24日付
プラスチックごみによる海の汚染が問題になり、汚れてリサイクルが難しい廃プラスチック(廃プラ)の輸出入が2021年から世界中で規制されます。リサイクルできる「資源」として廃プラを輸出してきた日本も国内できちんとした処理を真剣に考えなければなりません。
ジャン 廃プラについて教えて。
杉本崇記者 廃プラは、リサイクルできる資源として主に先進国から輸出されてきた。ただしその中に、たばこの吸いがらの入ったペットボトルや、食べもので汚れた廃プラが混じっていた。汚れた廃プラは、受け入れ先の途上国でリサイクルされずに置き去りにされ、海に流れ出すなど環境問題を招いている。
ケン 日本はなぜ廃プラを輸出していたの。
――日本で1年間に出る廃プラの量は約900万トンに上るが、そのすべてを安くリサイクルできるほどの施設が国内にない。そこでこれまでは中国や東南アジアに輸出していた。輸出量は1年間に100万トン以上で、日本はアメリカ(米国)やドイツなどとともに輸出大国の一つだ。
しかし、日本の主な輸出先だった中国は2017年末に「輸入ごみが環境を汚染している」として、廃プラの輸入を原則禁止した。それで廃プラは東南アジアに流れ始めたが、マレーシアやタイが輸入禁止や制限を始めている。マレーシアは今年5月、「日米など少なくとも7か国から違法に持ちこまれた廃プラ450トンが見つかった」として、輸出した国に送り返すと言っているよ。
ケン 対策はないの。
――5月にスイスのジュネーブであった「バーゼル条約」の国際会議で、汚れた廃プラを条約の規制対象にすることを決めた。ノルウェーが初めに提案し、賛同した日本が共同提案に回り、議論の末に各国で合意したんだ。
バーゼル条約は、有害な廃棄物の国境をこえた移動を規制する国際条約だ。日本もふくめ180以上の国や地域が批准している。今回の改正で、汚れた廃プラを輸出する際に相手国の同意が必要になるが、同意を得ることは非常に難しく、汚れた廃プラの輸出が困難になる。まず、私たちの暮らしから出る廃プラは自分の国できちんと処理できる施設を増やさなくてはいけない。
ジャン 日本はどうすればいいの。
――アジア諸国が輸入禁止を始めると、日本では処理しきれない廃プラが増えて、処理施設の敷地に積み上がるようになってきた。そこで、日本の環境省は緊急策として、お店や会社から出る廃プラを家庭ごみの焼却場で処理してほしいと、自治体に求めている。本来は別々のルートで回収、処分するもので、異例だ。
そもそも、処理できないほどのプラスチックを使っていることが問題だ。環境省は来年の東京オリンピックの前に、レジ袋の有料化を法令で義務づける考えを明らかにしているが、それで減らせるプラスチックの量はわずかだ。私たちの暮らしを広く見直す必要がある。
近年、心配されているのがプラスチックごみによる海洋汚染だ。海に流れこんだプラスチックごみは、紫外線で劣化し、波の力などでくだけて5ミリ以下のつぶ「マイクロプラスチック」=写真1=になり、南極海でも検出されているよ。
2016年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、少なくとも世界で年800万トン以上のプラスチックが海に流出しているとの報告書が示された。報告書は「毎分、ごみ収集車1台分のプラスチックごみを海に捨てているに等しい」と指摘。50年までに海中のプラスチックが「世界中の魚の総重量をこえる」と警告しているよ。
■解説
杉本崇記者
朝日新聞科学医療部
ピンクは大事な言葉だよ
記事の一部は朝日新聞社の提供です。