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2018年8月18日付
ジャン 家族で外で食事をする時などにたばこの煙が気になっていたんだけど、新しい法律ができたんだって?
黒田記者 他人のたばこの煙を吸いこむ「受動喫煙」の対策を強める改正健康増進法が成立したんだ。多くの人が使う施設や店は原則屋内禁煙となる。一方で、既にある小さな規模の飲食店では喫煙を認める例外規定も設けた。東京オリンピック(五輪)・パラリンピック前の2020年4月に全面施行するよ。
ジャン どんな内容?
――03年に施行された健康増進法では、施設内で受動喫煙の対策をするかは、施設管理者らの自主的な判断にゆだねられ、海外に比べて遅れが指摘されてきた。
改正法は、対策を罰則付きで義務づける。住宅やホテルの客室を除くすべての施設や公共交通機関が対象となる。学校や病院、行政機関などは敷地内は禁煙とし、屋外の決められた場所でしか喫煙できなくなる。その他の施設も原則屋内禁煙とするが、喫煙専用室を設けることができる。
ケン 例外はあるの?
――うん。飲食店では例外的に経過措置を設け、客席面積が100平方メートル以下で、個人または中小企業の既存店なら喫煙を認める。厚生労働省の試算では、禁煙の規制対象となる飲食店は全国で約45%。従業員をやとう店すべてを規制対象とした東京都の受動喫煙防止条例では約84%が規制対象とされ、「国の規制は効果にとぼしい」との指摘もある。
利用者が急増している「加熱式たばこ」も規制される。ただ、紙巻きたばこよりも規制はゆるく、加熱式たばこ専用の喫煙室では飲食ができる。
一方、喫煙できる店や部屋は、健康被害の影響が大きい20歳未満の立ち入りを禁じ、新規の飲食店は規模にかかわらず原則禁煙とする。長期的に一定の歯止めになると期待されている。
ポン いつ始まるの?
――準備期間をよく考えて、敷地内禁煙の学校や病院、行政機関は来年の夏ごろ、原則屋内禁煙の飲食店などは20年4月からと段階的に始まる。禁煙エリアに灰皿などを設置した施設管理者に50万円以下、禁煙エリアで喫煙した人に30万円以下の罰金が科される。
ジャン 受動喫煙の対策が急がれる背景は?
――健康被害の問題がある。受動喫煙による国内の推計死者数は年間約1万5千人。受動喫煙がある人はない人に比べ、肺がんや脳卒中になる危険性は約1.3倍になるとされる。
受動喫煙対策強化は世界の潮流だ。国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)は10年に「たばこのない五輪」の推進で合意した。ブラジルやイギリスなど近年の五輪開催国をふくむ55か国が16年時点で、飲食店など公共の場全てを屋内完全禁煙としている。
日本も例外なしの屋内禁煙をめざしたが、たばこ産業や飲食業界に気を使う自民党内から反発が強く、例外範囲を広げてきた。
日本の対策は現状、WHOの4段階の評価で最低レベルで、改正法の施行後も1ランクしか上がらない。がん患者らは「例外措置を早急に見直すべきだ」と指摘している。
記事の一部は朝日新聞社の提供です。