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2018年1月13日付
ジャン アメリカ(米国)のトランプ大統領が中東に関しておどろくようなことを言ったんだって?
渡辺記者 どこに属するかで争いがある都市エルサレムを、イスラエルの「首都」と認めると宣言した。イスラエルと領土や宗教の問題で対立するパレスチナでは猛反発が起こり、国際社会でも米国の孤立が目立っているんだ。
ケン イスラエルとパレスチナはどうなるのかな。
渡辺記者 和平交渉の再開はいっそう困難になっている。
ポン エルサレムはどんなところなの?
――ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地だ。約1キロ四方の壁に囲まれた旧市街には、古代ユダヤ王国の神殿の壁の一部が残り、ユダヤ教徒が祈りをささげる「嘆きの壁」がある。ところが隣接する高台にはイスラム教の預言者ムハンマドが昇天したと伝えられる「岩のドーム」や「アルアクサ・モスク」があり、イスラム教にとっても第三の聖地。キリストの墓とされる場所に建てられた「聖墳墓教会」も街にある。街がどの国に属するかは宗教がからむ問題だ。
ジャン エルサレムをめぐる争いはいつから?
――19世紀末、ヨーロッパなどで迫害されたユダヤ人が祖先の地に祖国を建設しようとする運動を起こし、パレスチナに移住を始めた。元々暮らしていたパレスチナ人との衝突が始まった。
国連は1947年、パレスチナにユダヤ国家とアラブ国家を造る「パレスチナ分割決議」を採択。エルサレムは「国際管理都市」とされたが、イスラエルは48年の第1次中東戦争で西エルサレムを獲得した。67年の第3次中東戦争後には東エルサレムも支配し、エルサレム全域を「首都」と宣言した。
一方、パレスチナ人による組織「パレスチナ自治政府」は、東エルサレムを将来のパレスチナ国家の首都と位置づけている。
ケン 昔から戦争が起こっていたんだね。ほかの国はどう見ているの?
――国際社会はエルサレムをイスラエルの首都と認めていない。日本をふくむ各国は大使館を商業都市テルアビブに置いているよ。
ジャン それなのに、トランプさんが急に認めたのね。
――去年12月6日、「エルサレムをイスラエルの首都と公式に認める」と宣言し、大使館をテルアビブから移転するよう指示した。エルサレムがどこに属するかはイスラエルとパレスチナの和平交渉で決めるという、米国をふくむ国際社会のこれまでの立場をくつがえすものだった。
ポン パレスチナも世界の国も抗議したの?
――抗議行動は、パレスチナ自治政府が治めるパレスチナ自治区の各地に広がり、イスラエル治安当局との衝突が続いている。パレスチナの赤新月社(赤十字に相当)によると、これまでにパレスチナ人14人が死亡、5千人以上が負傷した。
国際社会ではトランプさんの宣言について、イスラエルのネタニヤフ首相が「和平への重要な一歩」と歓迎したが、国連安全保障理事会の緊急会合では、15理事国のうち米国を除く14理事国から批判や心配する声が相次いでいるよ。
ケン これからどうなりそうなんだろう。
――パレスチナ自治政府のアッバス議長は「米国はもはや公平な仲介者ではない」と猛反発し、米政府高官との面会も拒否する構えだ。米国をふくむ国際社会は、イスラエルと将来の独立したパレスチナの「2国家共存」による紛争解決をめざしてきたが、2014年に止まってしまった交渉の再開はトランプさんの宣言によってますます困難になり、見通しがつかなくなっている。
記事の一部は朝日新聞社の提供です。