中高生紙面サンプル2018
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勉強したのに…とモヤモヤ「解けると楽しい」で気づく思考して答え出すのは自分宮沢さんは小学生のころ、中学受験に臨みました。残念ながら第1志望校の合格を手にすることはできずに、併願した別の中高一貫校に進学しました。まわりの友人は「いいやつ」がそろい、授業もなかなかおもしろい。でも、入学してしばらく時間がたっても「第1志望の学校だったら」という思いが消えることはありませんでした。「自分の力が足りなかったから合格できなかったことは頭ではわかっている。それでもモヤモヤした気持ちが晴れなかった」。その学校を本命として入学した友人に対しても「すごく失礼な言い方に聞こえるかもしれないが、正直なところ、うらやましかった」といいます。勉強の成果として本人が望む結果を手にした友人と、手にできなかった自分。中学時代の宮沢さんは「勉強したのにこんな気持ちを抱えるなんて」と感じていました。「勉強に対して『結果がともなわなければ、意味がないんじゃないか』と、すごく狭い了見の時期もあった」とふり返ります。そんな宮沢さんの心が変化するきっかけが中3のころに訪れました。知り合いの家族の小学生が中学受験をめざしており、宮沢さんに「何かアドバイスをしてほしい」と求めてきたのです。宮沢さんが小学生のころに学んでいた進学塾に通う小学5年生の男の子で、軽い気持ちで引き受けました。男の子が苦手にしていたのは算数。中学を受験したとき、宮沢さんもいちばん力を入れて取り組んだ科目でした。具体的な勉強方法やその進学塾ならではの指導の特徴、算数を勉強するうえで注意したいポイント……。男の子は宮沢さんのアドバイスを真剣に受け止めました。宮沢さんが「勉強、つらくない?だいじょうぶ?」と問いかけると「わからなかった問題が解けるようになると楽しい」と答えたといいます。宮沢さんが男の子と直接、ことばを交わしたのは、このときかぎりでしたが、大学に入学したいまでも記憶に残っています。「恥ずかしいというか、気づかされたというか。結果だけに固執していた自分をふり返る機会になった」。もちろん、がらりと気持ちがかわったわけではありませんが、宮沢さんは勉強することに対して「楽しさ」をみつけてみようという気になりました。この春の入試を終えたみなさんが、受験や勉強との向き合い方をアドバイスするシリーズを掲載しています。今回は「勉強する意味」について取り上げます。今月から早稲田大学で学び始めた宮沢俊樹さんが、自身の経験をもとにふり返ります。読者のみなさんが考えるときのヒントにしてみてはどうでしょうか。(編集委員・大島淳一)宮沢さんに「勉強する意味って、どんなところにあると感じていますか」とたずねてみると、いくつかの例を挙げました。一つはメンタルの強さを身につけられること。たとえ好きではなくても、投げ出すことなく目標を実現するために取り組むことで、精神面が鍛えられると、宮沢さんは考えます。数学の証明問題などを解くときのように、結論からさかのぼって仮説を組み立て、それを実証していくような視点を持つことで、先を見通す力も高めることができるといいます。さらに、自分がモノを知らないということに気がつくことによって、自身の視野を広げることができる、進路や将来を思い描いたり、それを実現しようとエネルギーにかえたりすることで成長にもつながる……。中高生のみなさんにとって「勉強する意味がわからない」と悩むことは無縁ではありません。宮沢さんはこう考えます。「この問いにはおそらく正答はない。それぞれが折り合いをつけ、納得がいけば、それが正答だともいえる。自分なりの正答を導くために、あれこれと思考することが大事なのではないか」イラスト・川島星河やる気を高め、より深い学びに今の結果がすべてじゃない「楽しみながら勉強!」をガイド(第三種郵便物認可)先輩の受験体験から学ぶ⑤2018年(平成30年)4月29日13学習勉強したのに…とモヤモヤ「解けると楽しい」で気づく思考して答え出すのは自分宮沢さんは小学生のころ、中学受験に臨みました。残念ながら第1志望校の合格を手にすることはできずに、併願した別の中高一貫校に進学しました。まわりの友人は「いいやつ」がそろい、授業もなかなかおもしろい。でも、入学してしばらく時間がたっても「第1志望の学校だったら」という思いが消えることはありませんでした。「自分の力が足りなかったから合格できなかったことは頭ではわかっている。それでもモヤモヤした気持ちが晴れなかった」。その学校を本命として入学した友人に対しても「すごく失礼な言い方に聞こえるかもしれないが、正直なところ、うらやましかった」といいます。勉強の成果として本人が望む結果を手にした友人と、手にできなかった自分。中学時代の宮沢さんは「勉強したのにこんな気持ちを抱えるなんて」と感じていました。「勉強に対して『結果がともなわなければ、意味がないんじゃないか』と、すごく狭い了見の時期もあった」とふり返ります。そんな宮沢さんの心が変化するきっかけが中3のころに訪れました。知り合いの家族の小学生が中学受験をめざしており、宮沢さんに「何かアドバイスをしてほしい」と求めてきたのです。宮沢さんが小学生のころに学んでいた進学塾に通う小学5年生の男の子で、軽い気持ちで引き受けました。男の子が苦手にしていたのは算数。中学を受験したとき、宮沢さんもいちばん力を入れて取り組んだ科目でした。具体的な勉強方法やその進学塾ならではの指導の特徴、算数を勉強するうえで注意したいポイント……。男の子は宮沢さんのアドバイスを真剣に受け止めました。宮沢さんが「勉強、つらくない?だいじょうぶ?」と問いかけると「わからなかった問題が解けるようになると楽しい」と答えたといいます。宮沢さんが男の子と直接、ことばを交わしたのは、このときかぎりでしたが、大学に入学したいまでも記憶に残っています。「恥ずかしいというか、気づかされたというか。結果だけに固執していた自分をふり返る機会になった」。もちろん、がらりと気持ちがかわったわけではありませんが、宮沢さんは勉強することに対して「楽しさ」をみつけてみようという気になりました。この春の入試を終えたみなさんが、受験や勉強との向き合い方をアドバイスするシリーズを掲載しています。今回は「勉強する意味」について取り上げます。今月から早稲田大学で学び始めた宮沢俊樹さんが、自身の経験をもとにふり返ります。読者のみなさんが考えるときのヒントにしてみてはどうでしょうか。(編集委員・大島淳一)宮沢さんに「勉強する意味って、どんなところにあると感じていますか」とたずねてみると、いくつかの例を挙げました。一つはメンタルの強さを身につけられること。たとえ好きではなくても、投げ出すことなく目標を実現するために取り組むことで、精神面が鍛えられると、宮沢さんは考えます。数学の証明問題などを解くときのように、結論からさかのぼって仮説を組み立て、それを実証していくような視点を持つことで、先を見通す力も高めることができるといいます。さらに、自分がモノを知らないということに気がつくことによって、自身の視野を広げることができる、進路や将来を思い描いたり、それを実現しようとエネルギーにかえたりすることで成長にもつながる……。中高生のみなさんにとって「勉強する意味がわからない」と悩むことは無縁ではありません。宮沢さんはこう考えます。「この問いにはおそらく正答はない。それぞれが折り合いをつけ、納得がいけば、それが正答だともいえる。自分なりの正答を導くために、あれこれと思考することが大事なのではないか」イラスト・川島星河やる気を高め、より深い学びに今の結果がすべてじゃない「楽しみながら勉強!」をガイド(第三種郵便物認可)先輩の受験体験から学ぶ⑤2018年(平成30年)4月29日13学習

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